兄妹
お兄ちゃんはきっと特別な存在なんだろうね。
柴犬ララには産まれた日は違うが、血の繋がった兄がいる。名前はカミュ、洒落た名前の兄だ。近くに住んでいる事もあって時々会いに行った。
「何だか、安心する匂い」
ララは甘えて体を寄せる。カミュも挨拶代わりにララのお尻の匂いを嗅いだ。ララは散歩中他の犬が自分のお尻の匂いを嗅ぐのを嫌う。もっと他の犬とフレンドリーになって欲しかったがこればかりは仕方ない。しかし兄のカミュが嗅いでも嫌がらなかった。兄とは仲良くしたかったのかもしれない。
一緒に遊んでいる姿を見ると微笑ましい。
しかし、ララがもっと好きなのはカミュの飼い主だ。会った時は嬉しさの余りオシッコが漏れてしまった。
嬉ションと言うやつだ。ララを産まれた生家から我が家に連れて来てくれた飼い主はララにとって、もっとも安心出来る親なのかもしれない。ララは別れる時とても悲しそうだった。ちょっと妬けてしまうくらいに、
暫くしてクネクネした道を通って牧場に出かけた。
「何か気持ち悪い、お腹もゴロゴロする」
車酔いしたララは、けぽっと吐いた。ママの膝の上でウンチもしてしまった。
「あらら、ララちゃん大丈夫?」
ママが心配している。
牧場に着いて、車から降りたララはケロッとして匂いを嗅ぎ始めた。
「何だ此処は!色んな匂いがするじゃないか」
大興奮のララはグングン進みだした。
色んな匂いに反応して尻尾もピーンとしている。きっと緊張しているのだろう。
水を飲ませようといつもとは違う容器に入れた。不安に思っているせいか飲もうとしなかった。ママは手のひらに水を入れて必死に飲ませた。
「ララちゃん、熱中症になっちゃうよ」
「ララちゃん」
急に兄のカミュが現れた。こんな所で偶然会うとは!よっぽど嬉しかったのか、くるくる回り出した。
息もハアハアしている。
「落ち着いて」
まだまだ幼いララちゃんは感情の起伏が激しい。すぐ興奮する。
しかし、疲れたのか帰りの車では寝てしまった。
「当分、遠出は無理だね」
「酔いやすいのかもね」
ママとパパの話す声がした。
朝と夕方の散歩のどちらかで大体ウンチが出る。几帳面なパパは出ないと心配らしい。ある日昼間出なくて夜中に行きたくなった事があった。夜中に残りご飯を食べるのも良くないと思ったパパは残したご飯をすぐ下げるようになった。
「夜の楽しみが減っちゃった」
「ちゃんと食べなきゃ」
「だけどウンチが出ないからって、1時間も歩き続けるのは疲れるよ!」
「パパだって、ウンチ出ない日もあるでしょ!」
思わず心の声が出た。