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[Z-E-R-O]  作者: 村岡凡斎
激闘編
67/125

12   [E]



――――  5  ――――



「目には目を、歯には歯を……裏切りには裏切りを…ってな」


ゼロは笑いながらそう呟く。


「いやはや……しかしあそこまでハンターさん達がやってくれるとは思わなかったぜ。おかげでパンテオン共に攻撃指令を出す手間が省けたな、ペロケ」


「私もあそこまでうまくいくとは思いませんでした」


そう言いながら、ペロケも自身の仕事ぶりに満足いったのか、通信機の向こう側で嬉しそうに笑う。


ペロケがネットサーフィンに興じ、政府のデータサーバーなどにハッキングを仕掛けて情報を暇つぶしに閲覧していた所、ある通信回線に対しここ数日――――白の団が解放議会軍からの要請を受ける前日まで――――暗号通信が頻繁に行われていた履歴を発見した。そして、その暗号はイレギュラーハンターが用いるものと同種でありながら、外部からのアクセスであることをペロケは不審に感じていたのだ。

慎重な調査の結果、暗号通信の主が解放議会軍であること、そしてゼロが議会軍の要請を受け出撃する同日に、イレギュラーハンターが何かしら特別な作戦を展開するところまでを解明することができた。そして、今回の企みを予想できたのである。


「まさか元老院のプライベート回線にあんな暗号通信をしているとは……。確かに、プライベート回線の閲覧が御法度中の御法度だと言え、ハッキリ言ってやることが杜撰だと思いますよ」


ペロケはあっさりと指摘してのける。


「流石、稀代のハッカー様。情報戦の雄として名高い解放議会軍を『杜撰』と言ってのけるとは。元情報局御用達の腕は伊達じゃないな」


「おかげで国を追い出されたんですけどね」


嫌味を込めて褒めちぎるゼロに、ペロケはバツが悪そうに苦笑いをする。

しかし、確かに切羽詰まった解放議会軍が杜撰な策を巡らしたとは言え、ハンターが用いる暗号通信からその発信源を突き止めたこと、そして何より、白の団との通信を利用しサイバーエルフによるクラッキングで解放議会軍コンピューターを操作し、レーダーの表示やパンテオン部隊の思考を改竄して且つ、その痕跡をほんの僅かも残さず消し去るその腕は賞賛に値した。


「しかし、シエルさんたちには教えたんですか?今回の、私たちの作戦……」


少し心配そうに尋ねるペロケに、ゼロは「いや、まだだ」と答える。


「あまり綺麗なやり方じゃないからな。小娘たちには成功するまで話さないでおこうと思ってたのさ」


「ということは……何も知らないで協力した形になっていたのですね……」


ペロケが特製のサイバーエルフを解放議会軍のメインサーバーに潜り込ませたのは、ゼロがシエルと通信を交わしたちょうどその時だった。マゴテスも白の団のお人好しさは理解していたため、その通信を許可し、その為に侵入を許してしまったのだ。

だが、ペロケは少し複雑な気分だった。まるで何も知らない純粋な少女を騙して利用していたことに、少なからず罪悪感を感じてしまう。それが分かったのか、ゼロは「お前が気にするなよ」と声をかける。


「指示したのは俺だぜ?……それに、ここで俺がくたばっていれば、そんなもんじゃ済まなかったんだからな。お前は大手柄さ」


「はい」と、ペロケはそれでも少し躊躇いながら、答えた。


「さぁて、さっさと帰って祝勝会だな!レルピィ、速度上げてくれ」


「ダーリン……あたし、今回の出番これだけ~?」


ライドチェイサーの先頭部にあるコアユニットから、項垂れたような声でレルピィが不満を漏らす。解放議会軍基地内で軽率な動きをさせないため、ゼロはレルピィにしばらく黙っているように指示していた。


「そう、不満気な声を出すなよ。こんなくたびれる作戦の後で俺を癒やせんのは、お前の運転操作くらいなんだからさ。仲良くツーリングと洒落込もうぜ?」


「もー!口ばっかりいい調子で!そんな事言われて嬉しくないわけ無いでしょーがー!」


怒っているのか喜んでいるのか、いまいち分からない反応のまま、レルピィはライドチェイサーの速度を上げた。














突然の爆音が空を割る。












「レルピィ!?」


咄嗟にライドチェイサーから飛び降りて、ゼロはその名を叫ぶ。

なんとか直撃は避けたが、乗り捨てられたライドチェイサーは岩にぶつかり損傷してしまう。――――が、幸いにもコアユニットは無事なようだ。


「ゼロさん!どうしましたか!?」


通信を介して聞こえてきた爆音に、慌ててペロケが安否を確認する。


「攻撃を受けたらしい……が…敵は――――……‥っ!?」


「流石だぜぇ……紅いイレギュラー……」


猛々しい笑いと共に、不意打ちの初撃を避けたゼロへ、その男は賛辞を贈る。


「あんな一撃でくたばってちゃぁ、闘い甲斐も無ぇからなぁ」


両腕に持つのは巨大な二本のランチャー。二回りほど大きなショルダーアーマーと、はだけた胸元の作りこまれた肉体が目に留まる。


「お前は……」


ゼロは、突然現れたその男に対し戦闘の構えを取る。その男については白の団のデータベースで既に眼を通していた。


「なあよぉ……紅いイレギュラー。この日が来るのを俺は楽しみにしてたんだぜぇ?……簡単におっ死んでくれんなよなぁ…」


ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、炎のように逆立つ髪がその激しい闘争本能を象徴していた。


「俺 様 と 闘 え ぇ ! 紅 い イ レ ギ ュ ラ ぁ あ あ ぁ !」


そう叫ぶと共に、現れた男――――闘将ファーブニルは、脇目もふらずにゼロへと襲いかかった。











NEXT STAGE




    闘将








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