表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[Z-E-R-O]  作者: 村岡凡斎
激闘編
62/125

11   [D]



――――   4   ――――



華やかな屋敷の裏に広がる草原に数十、数百といった数の石碑が並んでいた。どれも名が刻まれ、花が手向けられている。そこは、レプリロイドたちのための墓場だった。

その中央にそびえる、一際巨大な石碑へと一行は近づく。


「遺体を回収しきれなかった者たちは、この石碑で弔うことにしているんだよ」


イロンデルがアークに小声で教えてくれた。

「さあさ」とアンドリューに背を押され、アルエットが庭先で摘んだ花束をそこに手向ける。それを真似るようにして、今度は子ども達が、続いてセラが花束を手向けた。


「さて……それじゃあ、黙祷を捧げるかね…」


アンドリューの声に従い、皆、瞼を閉じ、多くの失われた命に黙祷を捧げた。僅かな時間だったが、それはとても永く感じられた。

どうか安らかに眠って欲しいと、アークとセラは仲間たちの顔を思い浮かべ、切に願った。




「私のせいです…ゼロさん」


ペロケが頭を下げる。しかし、それを見て、アークが「違う」と声を上げる。


「俺が悪かったんだ…。俺が馬鹿なことしたから……。俺のせいで……ロルフさんは……」


救えたはずの命が、救えなかった。それは皆の心に暗い影を落とした。

しかし、ゼロは少しも責めること無く、ただ二人の頭を優しく撫でた。


「ペロケも、アークも……誰が悪かったわけじゃない……」


ロルフの死を止めることはできたかもしれない。けれど、どちらにしろ止められなかったかもしれない。また、誰に責任があるかなどと言及したところで、彼が生き返るわけでも、彼の魂が救われるわけでもない。だから、誰が悪かったかなどというのを決めるのは虚しいことだ。


「それよりも……なあアーク、セラ」


二人の名を呼び、顔を見る。そして、目線を合わせるようにしゃがみ、二人の手を握る。


「ロルフが救ってくれたその命を、大切にしろ」


二人は強く頷いた。





『誰が悪かったわけじゃない』――――屋敷へと戻る途中、そんな自分の言葉に、ゼロは少し考える。

確かに、誰に責任があったわけじゃない。あの状況では、もう打つ手がなかった。しかし、考えてしまう。


――――本当にそうだったのか……?


可能性は何処にもなかったのか。ロルフの死は決まっていたのか。

もしかしたら他の“誰か”ならば、救うことができたのではないか。

自分ではない“誰か”だったならば――――……‥


そんな時、決まって“あいつ”のことを思い出す。


“あいつ”ならばどうにかする道を見つけたのではないかと思わずにはいられない。それどころか、あそこにいた全員を救う術を見出したかもしれない。



――――俺ではなく……“あいつ”だったなら……




くだらない妄想か、希望か、それとも未だ閉ざされたままの過去の記憶がそう思わせるのか。

理由はともかくとして、知らず知らずのうちに、握った拳に力が入っていた。













―――― * * * ――――



「バカな……。本気で仰っているのですか!?」


特別通信室で、モニターに向かってクラフトは一人、憤りのままに問い返す。

するとモニターの中に座る元老院議長団の八名、その中心に構える元老院最高議長――――ヴィルヘルムが「無論だ」と少しも躊躇うこと無く答える。


「これは元老院議会での決定であるぞ。クラフトよ、直ちに命令を遂行せよ」


嘲笑を浮かべながら、元老院議長第四席――――マクシムスが顎の肉を揺らしてそう告げる。

「ですが!」とクラフトは猛抗議をする。


「それは我々の……“誇り”に関わります!指令の撤回を!閣下!!」


尚も嘲笑を浮かべるマクシムスには目もくれず、ヴィルヘルムへと声を上げる。

するとヴィルヘルムは一度だけ鼻で笑い、それから険しい表情でクラフトを睨みつける。


「貴様……第十七精鋭部隊の隊長でありながら、人間である我々の決定に逆らうというのか?」


「ぐっ」とクラフトは言葉に詰まる。


「くだらん“誇り”などの為に我々、人間に逆らうと言うのであれば、それ相応の処置を取るが……覚悟はできておろうな、クラフト?」


その脅迫まがいの言葉に、とうとうクラフトは片膝をつく。そしてただ一言、震える声で「承知しました」と指令の了解を伝えた。


「よろしい、それでは作戦に備えよ。健闘を祈っておる」


ヴィルヘルムがそう告げると、映像通信は一方的に打ち切られた。

後に残されたクラフトは、しばらくの沈黙の後、声にならない叫びを上げ、拳で床を殴りつける。憤りと、怒りと、抗い切れない自分の非力さを悔やむ気持ちがそこには現れていた。

そして、強い信念を持って自らの使命を全うしようと突き進む、勇ましい彼女のことを思い浮かべる。


――――ネージュ……


君は俺を信じてくれた。だから俺も自分を信じられた。――――しかし、今の俺はどうだ?

誇りを自ら踏みにじるような命令に逆らえず、片膝をつき、屈している。――――こんな俺を、それでも君は信じてくれるのか?


「俺は……何を信じてゆけばいい…?」





ポツリと呟いたその問いに、答えてくれる者は誰もいなかった。











NEXT STAGE




    ウラギリ







7月中に二週間ほど入院をしました。

理由はウイルス性腸炎。

いやあ……痛かった…。食事制限もされて予想以上にしんどいものでした。二度と入院はしたくありません。


さて、10th STAGEの前書きにも書きましたがIllustrationsに四天王のデザインを公開しました。入院の影響でだいぶ作業が遅れてしまい、他のキャラが載せられなかったことが非常に悔しいのですが……

この話が公開される頃にはもうちょっと増えてるといいなあ(7/31現在)


そうそう

今回これだけのペースで話を上げていったのは、一重にお気に入り登録していただいた読者様のおかげです(笑)

最近になってどんどん登録件数が増えていき、ニヤニヤしてました。

気合入れている分、気に入ってくださった方々、継続して読んでくださっている方々がいるというのは、やっぱりなんだかんだで嬉しいものなのですよ。


そんなわけで(どんなわけ?)これからも[Z-E-R-O]をよろしくお願いします。

応援、感想、あるいは質問等あれば、お気軽に。


ではでは...

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ