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[Z-E-R-O]  作者: 村岡凡斎
覚醒編
24/125

3   [F]



―――― 5 ――――




「作戦開始時刻まで、あと五分です」


オペレーターのルージュが冷静に知らせる。


ライドチェイサーに跨り、発進口の前で待機するゼロ。見送りにはシエル、アルエット、セルヴォの三人だけが現れた。


「ゼロ……無事を祈っているよ」


「そんな辛気臭い面で見送ってくれるなよ。……祈られなくても、無事に帰ってきてやるさ」


不安そうに言葉をかけるセルヴォに、自信満々に言って返す。すると、そこにシエルが言葉を付け足す。


「“絶対”よ。……約束して、ゼロ」


「おいおい小娘。……まだ“初出勤”だぜ?これから先、こんな重たい見送りを何度も繰り返すつもりかよ」


直前になって、セルヴォ以上に不安がるシエルの様子を見て、ゼロは呆れたように頭を掻く。


「でも……」


「約束するよ。絶対、無事に帰る。……そして、俺が着いた時に生き残っていたヤツらは、必ず生きたまま連れて帰る」


引き下がらないシエルの約束を渋々受け入れ、そこからまた、さらに自ら条件を付加した。

その条件に、シエルは思わず口を開く。それは、この作戦の難度を考えれば、シエルからは言いたくとも切り出せなかった要望と、ちょうど一致していたのだ。

他人の、それも大勢の命を守りながら戦うことは決して容易ではない。ともすればゼロの命も、想定以上の危険に晒されるだろう。しかし、ゼロはシエルという少女の考えをよく理解し、彼女の言い出せなかった願いにすら応えるつもりだった。――――「誰にも傷ついてほしくない」という幼稚で、儚い願い。


「いいだろ?それで。――――まあ残念ながら、既に死んでるヤツらはどうやっても助けられないけどな…」


苦笑と共にそう言うゼロに、シエルは申し訳なさそうに、けれど嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう、ゼロ。……でも、無理だけはしないで」


「“誰にも”傷ついてほしくない」――――それはもちろん、ゼロという存在に対しても当てはまった。


「任せな。約束は守る主義なのさ。その代わり――――」


そう言って小指を差し出す。


「帰ってきたら基地の設備を案内してもらうぜ。データでも見たが、一応、生で見ておきたいんだ」


「もちろん。約束するわ」


ゼロの小指に、自分の小指を合わせ、指切りをする。


「うそついたら、はり千本だからね」


アルエットが忠告する。「そいつは厳しいな」と笑って、ゼロはアルエットの頭を撫でた。


「時間です。作戦、スタート」


程なくして、作戦開始を告げるルージュの声と共に、ゼロはアクセルを絞る。走りだすライドチェイサー。


「行ってらっしゃい、ゼロ!」


小さな体が精一杯大きく手を振る。ゼロはそれに少しだけ視線をやり、片手で応えた。











―――― * * * ――――




「おい、あれ……」


監視カメラで周囲の警戒をしていたオペレーター達の目に、複数の人影が見えた。その人影はゆっくりとこちらに向かい、歩いている。

ネオ・アルカディアのレプリロイドであるならば、基地の所在が知られてしまった可能性がある。となれば、ここは間違いなく戦場となるだろう。この一大事をエルピスへ報告しなければと、一人のオペレーターが駆け出そうとした。


「待って!……違う」


別の一人がそれを引き止める。

そう、それらの人影はネオ・アルカディアの軍勢のものではなかった。


先頭を歩くのは見慣れた男。いや、先頭だけではない。よく見れば全員見知った連中ばかりではないか。


「マーク……チーム…!?」


ふらふらと覚束ない足取りで歩く者。肩を借りてようやく立っている者。背負ってもらっている者。

状態は様々ではあったが、二十名以上のメンバーが生きて帰ってきたのだ。


「至急、司令に報告!技術局長にも、負傷者搬入の準備を!」


指示が飛び、一気に慌しく動き出す。その場は驚きと、そして歓喜に包まれていた。













「ゼロさん、もうすぐです!本部に……本部に帰って来れましたよ!」


肩越しにコルボーが叫ぶ。「ん」と疲労困憊した顔を上げ、ゼロが前を見る。


結局、旧塵炎軍団基地へ辿り着くと同時に、コルボーはトムスを下ろし、マークの制止も振りきってゼロの下へと駆け戻った。その頃には、戦いは既に決着しており、辺りには擬似体液と残がいだけが荒れた大地を覆っていた。

中心で倒れ込んでいたゼロを見つけた時、「時既に遅かったか」と、コルボーは絶望と共に膝を付いた。しかし、ゼロの腕がピクリと動いたことを確認するやいなや、彼の名を叫び、脇目もふらずに駆け寄っていた。

心配してあとから追ってきたマーク達数名と、ゼロを担いで旧塵炎軍団基地まで戻り、意識が回復したことを確認した後、空間転移装置を使って、予定通りのポイントまで移動した。

幸い、ゼロの体に致命傷はなく、自己修復機能もつつが無く機能し、大事には至らなかった。


「……ありがとよ。…もう…結構だ……」


ゼロはコルボーの腕を払い、借りていた肩から離れる。しかし、その足取りは明らかにふらついていた。チーム全員が不安気に目をやる。


「これ以上無茶しないでください!」


引き止めようと手を出すコルボーを、ゼロは片手で制止する。そして、ニヤリと笑って答える。


「英雄が…庶民の肩を借りてご帰還するんじゃ……カッコがつかないだろ…?」


――――それに……



約束したのだ。



絶対、“無事に”帰ると






マークチームの生還を祝うように、入り口用のハッチが駆動音と共に開いた。












NEXT STAGE




    亡霊の影





お久しぶり、村岡凡斎です。

ようやく第三話の投稿が完了致しました。


いやぁ…長かった…。


結局、自分で予定していた以上に長くなり、文章の方も完全書下ろしとなりました。

予定では合計38ステージ(残り34ステージ)を構想しているのですが……このスピードだとどれだけかかるのやら…。

やはり文才のない自分には些か以上に厳しい戦いとなるでしょう。

が、連載を始めた以上(それも二度目ですので)今度こそ最後まで筆を折らずに(この場合はキーボードをたたき壊さずにかな?)頑張りたいと思います。


――――ので、愛想尽かさず応援し続けてくださると嬉しいです。


あと感想の方ですが、なろうユーザー以外からも受け付け可能にしていますので、ふらっと立ち寄ったついでに一言でも置いて行ってくださると励みになります。


…うん…まあ、マイナー作品の作者としては気持ち的に色々寂しかったりするわけですよ(苦笑)


それではでは...


次回を早めに上げられるよう頑張ります。


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