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[Z-E-R-O]  作者: 村岡凡斎
覚醒編
17/125

2   [E]



――――  5  ――――




遺跡には、先日の戦いの後に誰かが足を踏み入れたような形跡は無かった。


ゴーレムの放ったレーザーによる焦げ跡が壁に痛々しく刻みつけられ、ミランだった物も、ゴーレムの残骸も、同じようにそのままの形で残っている。足下にはパンテオンの首が転がり、疑似体液を垂れ流した首なしの体も横たわっている。


ゼロは「白の団」の戦闘服を脱ぎ捨て、黒いボディースーツのみの恰好でカプセルがあった辺りまで歩を進める。

カプセル自体はほぼ粉々で、原型を留めていなかった。


――――この辺りだったか…。


ゼロはしゃがみ込み、地面に散らばっている破片やらを手ではらう。


――――…あった。


しばらくして、探していた物を見つけた。


四角く細長い親指大の蓋を開き、姿を表した丸く小さなスイッチを押す。

すると、スイッチの向こう側の地面に正方形の溝がくっきりと刻まれる。

そこから淡い光が漏れたかと思うと、ゼロの背丈ほどのロッカーらしき物が一気に飛び出してきた。


その戸をおもむろに開いてみる。


彼の目に飛び込んできたのは、裾が脛辺りまである真紅のロングコート。

腰にはベルトがあり、袖は無く、白い丸形のショルダーアーマーがついている。


それを取り出し、着てみる。


耐弾性、耐ショック性に優れた特殊素材で作られていながら耐ビームコーティングが施されているそれは、彼の身に安心感を与えるばかりではなく、逃れようのない事実を再び確認するきっかけにもなった。


『紅の破壊神』――――伝説の英雄「ゼロ」。二つ名にまでなった英雄のパーソナルカラーがその特別製コートを彩っている。

そしてそのコートは、まるであつらえたかのように、彼の体にフィットしていた。


「…やっぱり……俺は[ゼロ]…なんだな」


突きつけられた現実に彼は、怯えなのか高揚なのか自らにも良く分からない感覚を感じていた。







それからゼロは周りを見渡し、部屋の隅の壁に目を向ける。

瓦礫を乗り越えその壁に近付き、戦闘の被害が及んでいないことを確認してから、そこに隠されていたスイッチを探り当て、押す。

ロッカーの時と同様、スイッチの左側に溝が入り、正方形のシャッターが開いてキーボードとモニターが乗った台が飛び出た。

ゼロは自分のうなじに手をあて、接続端子付きのコードを取り出す。

それをモニター横の壁に隠されていたインターフェースに接続し、キーボードを叩いて目的のものにアクセスする。


掛けられていたロックに対し、自分のDNAデータを照合させて解く。


「DNAデータ」とは、「精神プログラム」の基盤となる設計図のようなもので、レプリロイドの性格的差別化を容易に可能とした発明であり、個体の識別もこれで可能となる。

そのため、この「DNAデータ」を鍵としたセキュリティプログラムは、百年前から変わらず一般的に使われている。


データベースへのアクセスは完了した。あとは自分に関する戦闘記録等を得るだけ。


自らがいったい何者なのか。それを掴むために、ゼロはわざわざこの場所まで出向いてきたのだ。


検索をかけると同時に、緊張が高まる。



数秒と経たず、モニターに表示されたモノは――――…









[ E R R O R ]



「なっ!?」


データが存在しないことを告げる「ERROR」の文字。


何度検索をかけても、何もヒットしない。


――――…削除されている……?


故意に?だとしたら、いったい誰が?


いや、元から無かったと言う可能性も捨てきれるわけではない。


ただ一つ確かなことは失われた記憶を取り戻す手掛かりは、闇に消えた。

もう、自分が本当は何者だったのか、どんな戦いをしてどんな出会いをしてきたのか…それを知る術はなくなってしまったようだ。



――――……そのハズなのに…。




      そのハズなのに。




何故だか自分でも分からない。


けれど





どこかでほっとしている自分がいた。







ゼロが感傷に浸りかけるのを遮るように、突然轟音が響き始めた。

何かが近づいてくる音が聞こえる。地鳴りを響かせながら。


――――…デカい……


ゴロゴロと大地を転がるような音。


――――近い!


「っ!」



ゴーレムが開けた穴から、その球体は文字通り、転がり込んできた。


次の瞬間、二メートル以上の大きさであるそれは、ゴーレムの残骸に当たって空中に跳ね上がった。


「のわっ!!」


自分めがけて落ちてきた球体をとっさに避ける。

球体が地に着くと、部屋中が大きく揺れた。下敷きになっていたら確実に潰されていただろう。


「…なんだ…コイツは…?」


ゼロが訝しんでいるのもつかの間、球体から突如手足が生えた。

そして、てっぺんからは鼻が長い、象らしき頭が飛び出てくる。


謎の球体の正体はレプリロイドだった。


――――こいつは…


先刻、データルームで確認していたものを思い出す。

ネオ・アルカディアに立ち向かうために、レジスタンスが集めた情報の一端。

そこに記されていたのは救世主エックスの元に集う、ネオ・アルカディア最強と誉れ高い「四天王」とその四軍団。そこに所属する特別なレプリロイド達。


「まろの名ぁは、マハ・ガネシャリフでぇおじゃる」


ネチっこく、鼻に付くような公家気取りのしゃべり方に、ゼロはイラッときた。


「…もしかして、ミュートスレプリロイドってヤツか…?」


「いかにも。まろは冥海軍団所属ぅの情報処理、分析担当のぉミュートスレプリロイドでぇおじゃる」


――――…冥海軍団。

四天王率いる四軍団の内の一つ。「妖将」――――「レヴィアタン」が率いる軍団である。

そして、ミュートスレプリロイドとは四天王の補佐として活躍するよう開発された特別製レプリロイド。

そのデザインは神獣がモチーフとなっており、他のレプリロイドとは別格の待遇を受けているとともに、それに見合っただけの能力を有している。


さて、そんな敵の幹部が何をしにこんな遺跡まで足を運んできたのか…。


「……俺様のデータを回収しに来たわけか…?」


ゼロはゼットセイバーを引き抜けるように、左腕を構える。


「ほーほーほーほー。なかなかぁに勘のいい男よのう」


笑い方も何だか気にくわない。


「残念だが、そいつは無理だぜ。全部ロストしちまってる。テメエは骨折り損さ、鉄団子」


「親切にぃどうも。しかしぃ…鉄団子とは聞き捨てならんのぉ。……まあ、よい。せっかくであるから、おぬしにいい話を聞かせてやろ」


「いい話…?」


その提案が気になり、耳を貸す。無論、警戒は少しも緩めずに。


「どんな話だい?」


「おぬしぃ…。まろたちの軍門にぃ下らんかえ?」


予想だにしない言葉に、ゼロは驚いた。


「…ってぇと…。『ネオ・アルカディアに来い』っつうことか…?」


「いかにも。エックス様も、おぬしが来ることを、とぉてぇも期待しておいででぇおじゃる。どうであろ?悪い話ぃではないであろ?」


救世主エックス――――シエルの話によれば、自分とともに肩を並べ戦場を駆け巡った無二の親友。その男が自分を呼んでいると言う。


「『断る』…と言ったら?」


ガネシャリフは再度、あのいやらしい笑い声をあげて、答えた。


「まろが、おぬしぃの小綺麗な顔をぺちゃんこぉにつぶしてくれよ」


「ほーほーほーほー…」と、低い声でまた笑い出す。ゼロにとっては不快以外のなにものでもない。


「実際、選ぶまででぇもないであろ?レジスタンスごとき、弱者の側ぁにおっても、おぬしに何の得があろ?救世主がぁ為に――――いや、親友がぁ為に尽くすが最も得ぞ。どうであろ?まろたちの下にぃ来んか?」


「確かに、そいつは素晴らしいお誘いだ」


ゼロはニヤリと笑って返した。

ガネシャリフの言う事は間違っていない。今の自分は身の振り方が選べる。わざわざ苦労を背負い込むことはない。


「であろ?」


「…けどな――――」

瞬間、ギロリと睨みつけ声を張り上げる。


「損得勘定で動くんなら、ハナっから[英雄]なんて言う損な役回りを引き受けやしないんだよ!」


「つぅまぁりぃ…。断ると…?」


「当然だぜ、鉄団子。救世主だとか名乗るお山の大将なんぞの下に誰がつくか」


「…まろのみならず、エックス様の事まで侮辱するとぉは…。まろもそぉろそろ我慢の限界であるがぁ…覚悟ぉはできているのかえ?」


「そりゃコッチのセリフだ長っ鼻。胸くそ悪い喋り方しやがって。だいたいなんなんだ?『まる』『まる』『まる』『まる』。テメエの体型がそんな気になってんなら、もうちょいスリムに改造してもらって来いってんだよ、糞玉野郎」


「ふーふーふーふーふー…。口も耳ぃも悪い男よ…」


堪忍袋の緒は盛大に音を立てて、切れた。


「どぉおやら本気ぃで潰されたいみたいよのう…金髪小僧ぅおぉおぉぉおおぉおぉぉぉ!!!!」


「…っ!」


強烈な張り手。ゼロは避けきれない。――――いや、避けなかった。


「バンッ」と大きな音を立て、弾き飛ばされ、壁にぶち当たる。


「ぐ…っ…」


しかし、受けることを想定とした防御の体勢と、なにより彼専用のコートがダメージを軽減した。コートの性能を試してみたのだ。


「…なかなかの…もんだな…」


敵の張り手も、自分のコートも。

並のレプリロイドなら粉々に砕けていただろう。


「ゲホッ」と一つ咳払い。


しかし、休む隙を与えてはくれない。


目の前にはすでに鉄球が迫っている。


「ちぃっ!!」


予想よりも、攻撃の展開が速い。

かろうじて避ける――――が、避けきれず、端にかすって弾かれる。

ゴーレムの腕にやられた時よりも、さらに大きく飛ばされる。


「ぐぁっ!」


地面にそのまま落ちるが、痛みほど体にダメージはきていない。


――――こりゃ、スゴい…な。


コートの性能に感心。

ガネシャリフの戦闘力は間違いなくゴーレムよりも高いが、生身でゴーレムとやり合った時よりも幾分気が楽に感じる。


しかしそうこうしている内に、鉄球はまたも潰そうとゼロに迫る。


「ええい!うざったいんだよぉ!」


両手を前に構え、敵をがっしりと抑える。

しかし、その回転は留まること無く、迫りくる球体は山のように重い。踏ん張る足はずるずると後ろに圧されてゆく。


「こんのぉ…」


瓦礫に踵が当たり、それ以上下がらなくなる。しかし、ガネシャリフの体はじわじわとゼロの上体を仰け反らせてゆく。

このままでは押し倒され、潰されてしまう。


「っでぇえい!」


声を張り上げるとともに全力で一気に押し返す。

わずかに敵を後退させ、体勢を直す。


そして横に素早く跳び退く。球はそのまま、瓦礫の角に当たり、真上に上がって、再びガネシャリフの姿に戻る。

着地するとともに、部屋が揺れる。ゼロは受け身をとって即座に起き上がる。

その重量から、ヤツが直ぐに動き出すことは不可能。すなわち反撃の刻。


ゼロは左腕からゼットセイバーを引き抜いた。


「綺麗に掻っ捌いてやるよ!」


横一文字に斬りつける。


「っ!?」


しかし、その体は伊達ではなかった。


「セイバーが弾かれた!?」


「ほーほーほーほーほー…」


再び轟く不愉快な笑い声。


「まろは[歩くデータサーバー]として、超高性能かつ超精密なコンピューターを内蔵しているのでぇおじゃる。そぉしてぇ、まろの体はそれを守るためにぃ、超重装甲でありながら、超上質の耐ビームコーティングが施されているのでぇおじゃる。つぅまぁりは、おぬしの貧弱なビームサーベルなぞ、痛くぅも痒くぅもないのでぇおじゃる」


なるほど確かに焦げ目すらつかない。


「…ご高説ありがとうよ、[歩く鉄塊]様」


焦りを見せるわけにはいかない。ゼロは挑発的な態度を変えない。

しかし、ガネシャリフは既に勝者の余裕を見せつけていた。


「ふーふーふーふーふー…。口の悪い小僧はぁ、しぃかぁとぉお仕置きせんとなあ……。…なあぁ!」


高速のつっぱり。その図体からは想像もつかないほどの勢いと速さ。


――――…どうする…!?


ゼロは防戦一方。手も足も出せない。


「なぁにぃを企んでぇもぉ…。無駄!無駄!!無駄ぁ!!!!」


トドメとも言える、力いっぱいの張り手をくらったゼロは、またも弾き飛ばされ壁に叩きつけられた。

今度は先ほどよりも強い力だったのか、体がめり込む。


「…ゲホッ…」


咳と共にそのままずり落ちる。


ガネシャリフは満足げな笑い声をあげる。


「[伝説の英雄]がぁ![紅の破壊神]がぁ!聞いて呆れるわぁ!!」


耳障りな高笑いはどんな雑言よりも、ゼロに屈辱を与える。


「しかし分からん。まろにぃは分からんのぉ」


急に首を傾げ出す。――――傾げる首など無いのだが。


「こんな貧弱ぅなレプリロイドを[英雄]などと祀り上げる者どもぉももちろんじゃがぁ……」


「…何が…言いたい?」


先をなかなか言わないガネシャリフに苛立が高まる。そんなゼロを「フフン」と嘲笑う。


「まろにぃは理解できんのでぇおじゃるぅ」


ネオ・アルカディアの救世主の親友ともなれば、それなりの待遇をもって迎え入れられるのは容易に想像がつく。それはネオ・アルカディア側の者たちだけでなく、当の本人自身も気づいていておかしくはない道理だ。

だがそういう選択肢を与えたというのに、それでもこの英雄はネオ・アルカディアに楯突く道を選んだ。途方もない困難な戦いの道を選んだのだ。


人間よりも合理的に物事を判断できるハズのレプリロイドが、なんの迷いも無く非合理的な選択をした。


「おぬしぃの思考は理解し難いものよ。――――英雄とは名ばかりの、愚か者ぉとしか思えんわぁ」


「当たり前だ…。てめぇ如きに…“英雄様”の思考がそうそう理解できる訳ないだろう…」


そう言いながらも、ゼロにもガネシャリフの言葉を完全に否定することが出来なかった。己の選んだ道が、決して正しいとは言い切れなかったのだ。

それは戦力的なものに限ったことだけが理由ではない。


ゼロはホールで見た集団を思い出す。


望まずとも、英雄に対する期待を背負う事は避けられない。この先、自分たちの力量すら見抜けない弱者たちの為に、圧倒的強者に立ち向かわなければならない。

おそらく、自分を英雄として迎える彼らに、戦いに赴く彼の心情を理解されることはないだろう。


「…エックス……」


親友と言われた彼の名を、静かに呟く。


記憶を取り出すことは出来ないが、その名は彼にとってどこか温もりのようなものを含んでいた。


そしてその名と共に、継ぎ接ぎだらけの映像が脳裏に浮かぶ。。

荒れ果てた街。幾体ものイレギュラーの残骸。同胞たちの亡骸の中、背中を合わせるもう一人の男。

顔だけはぼんやりと靄がかかって見えなかったが、そこには確かに背中を預けた相手がいた。


彼にとって一番の理解者。戦友にして親友。


そんな彼の元に行けば、失われた記憶のピース達を取り戻すことはできるだろう。

そして、今己が求めるものは全て手に入るのではないだろうか。


――――…なのに何故……


俺はその道を選ばない?

先程、なんの迷いも無くガネシャリフの提案を断ったのは、間違いなく嘘偽り無い答えだった。

けれど何故だ?


――――何故俺は…


迷うこと無くかつての友に


何よりも必要としている存在に剣を向けるというのか?












親友の背中を遮るように、少女の震える肩が瞼に映る。









「小娘…」


呟いた瞬間、思わず「ハハ」と笑いが漏れた。

状況に似つかわしくないその声に、ガネシャリフはまたも無い首を傾げる。


「気でも触れたかえ?」


「バーカ。…そんなんじゃないよ」


よろよろと立ち上がり、ゼットセイバーの切っ先を向ける。


「俺は許せない者を許さない。護りたい物を護り、救いたいモノを救う。――――どうしようも無くワガママなのさ」


そして、より一層声を張り上げる。部屋中に己の意志を響かせるように。


「幼気な少女一人泣かせてなんとも思わない下衆どもの仲間にも!その大将の親友なんてのも!こっちから願い下げなんだよ!」


「そぉれぇがおぬしの答えかえぇ?」


幼稚すぎる回答に、ガネシャリフは堪えきれずに笑い出した。だが、ゼロの言葉は真剣そのものであった。


「残念ながらそういうことだ。…どうだい?てめえの低能なコンピューターにも理解できる至極合理的な話だろう?鉄団子!!」


その挑発的な発言を聞いた瞬間、笑いがピタリと止む。同時に、ガネシャリフは鬼の形相でゼロを睨みつける。


「ふーふーふーふーふー…。またも侮辱しおったなぁ…小僧…」


どんなに威勢がよくても戦況は変わらない。そうそう動けないことは分かっている。

だと言うのに、目の前の旧式レプリロイドは己の勝利を信じ、疑っていない。そしてその余裕すら感じさせる舐め切った態度が、ガネシャリフの怒りを再び爆発させた。


「その高慢な鼻っ面!今度こそぶっ潰してくれるわぁあぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」



変形し、突っ込んでくる。その速度には容赦など微塵も無い。


対するゼロの後ろは壁。体は傷だらけ。



しかし、その目は勝機を見失っていなかった。



加速する鉄球。


ゼットセイバーを構えるゼロ。



『私は戦うと決めた。私なりの方法で』


脳裏に響く少女の言葉。


正直なところ、どうしてあの少女をここまで強く護りたいと思うのか、未だ自分自身にすら明確では無かった。

けれど――――


先日の戦い。

少女はミランと呼ばれた仲間の手を握り、約束を交わした。

未来を作る約束を。


悲しみに胸を焦がしながら


大粒の涙をこぼしながら


そして確かに思ったのだ――――





――――お前がその道を行くと言うのなら


茨の道を選び、歩んでゆくと言うのなら



右腕に強大なエネルギーが蓄積されてゆく。

その驚異的な量に「マズイ」と直感したガネシャリフだったが、加速のついた鉄球は容易に止まれない。


蓄積されたエネルギーが雷に変わってゆく。バチバチと音を立て、輝く。



――――どこまでも単純な想いだけれど


笑いたくなるほど幼稚な想いだけれど



「貫き通してやるよぉ!!」









 この剣に望みを懸けた


 その震える肩に


 応えたい











雷神、一閃



「…ぎぃやぁあぁああぁぁあぁぁぁぁぁあぁあああぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!!!!!!」


ガネシャリフのボディを、ゼットセイバーは叫びと共に一直線に貫いた。


「まぁあろぉおのぉぉおそぉおおうぅぅこぉおううぅがぁあぁああ!!!!!!」


稲妻が体中を駆け巡る。


「まぁあろぉおのぉぉおコぉおンんんんピュぅうタぁああがぁあぁああ!!!!!!」


回路はことごとく焼き切れてゆく。


「あぁあぁりぃいえぇえぇぇなぁあぁああいいぃい!!!!!!」


断末魔の叫び。


「有り得ないことを起こすのが英雄ってもんだろうが!テメエご自慢のコンピューターに叩き込んどけ!インテリ鉄団子!」



「ぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁ………っっっ!!!!!!!!」








命尽きた鉄塊は、そのまま転げ落ちた。


感電し、体中が焼け焦げてピクリとも動かない。


光の剣をしまい、その塊に紅の英雄は吐き捨てた。



「…焼き団子、一丁あがりだ」




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