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[Z-E-R-O]  作者: 村岡凡斎
覚醒編
13/125

2nd STAGE [A]




―――― * * * ――――




鉄の塊は空を飛ぶ。


装備された「絶対迷彩機能」は、ネオ・アルカディアが設置した熱覚、視覚等各種センサーから身を隠す。


「白の団」が保有する虎の子、兵員輸送機「シルフィード」



「伝説の英雄」と、その封印を解いた少女を運び、「白の団」本拠地へと向かう。



「名前は[白]ってくせして…戦闘服は緑ぃんだな…」


「白の団」の戦闘服に身を包み、「伝説の英雄」は言った。


「[白の団]っていう名称はね、エルピスが付けたの」


明るい茶色を帯びた、かわいらしいポニーテールの少女が彼に応える。


「『私たちは自由の翼をもっています。真っ白な優しい世界へ羽ばたける真っ白な翼。例えこの身が泥にまみれようと、胸の中にはいつもその[白]を抱いていましょう』って」


「…くさ…」


苦笑いと共に返す。

少女もクスクスと笑う。


「まあ、自分では『私は皆さんのリーダーとして、このチームの象徴をまとわせていただきます』とか言って、白いコートを着てたけど」


「…んで、お前は[それ]か…」


少女の服は薄いピンクで、下は短めのスカート。

動き易そうではあるが、少々派手である。


「これもエルピスがくれたの。『せめて女の子らしい格好を』って。私、着るものとかあんまり気にしてなかったから」


「…あぁ…そう…」


どうも気にくわないらしい。


「大丈夫よ。彼は信頼できるわ」


「…だろうな」


「?」


「そんなバカを言うのはよほどの[良いヤツ]しかいねえってことさ」


少女の顔に疑問符が見える。

彼のイヤミが分からなかったらしい。


「そろそろです。シエルさん」


パイロットが少女――――シエルに告げる。


その言葉と共に、鉄の塊がゆっくりと高度を下げ始める。すると何も無いハズの砂漠が静かに揺れ始め、その場に突如として大きな入り口が出現した。


「…地下か…」


確かに、今や世界に一つとも呼べる国家に、愚かにも立ち向かおうとするテログループの本拠地が、堂々と砂漠のど真ん中にあるワケがないと分かってはいた。が、実際にその入り口を目にすると驚かずにはいられなかった。


「むちゃくちゃしやがる…」


「旧世紀の遺産よ。…まあ、説明はあとで詳しくするわ」


そう言うと、シエルは伝説の英雄――――ゼロを見つめ、微笑んだ。




「ようこそ、白の団へ」








2nd STAGE



星に願いを

    夜空に問いを







――――  1  ――――



N.A.暦124年

救世主エックスにより建てられた、人間のための国「ネオ・アルカディア」はレプリロイドにとっては地獄でしかなかった。

その地獄に立ち向かうため、レプリロイドたちはそれぞれ組織を作り、レジスタンス活動を始めた。


そして、その数あるレジスタンス組織の内の一つが、シエルも所属している、エルピス率いる「白の団」である。


「――――救世主[エックス]…か…」


ゼロは、シエルから聞いた事の次第を頭で整理しながら呟いた。


――――…親友…ね…


確かに、言われてみればどこか懐かしい名前ではある。


だが、もしそうだとするならば――――…





戦いの後、ゼロとシエルは遺跡内を探索し、警備隊の物と思われる戦闘用エアバイク「ライドチェイサー」を奪取してシルフィードとの合流地点まで移動した。

不気味なことに、遺跡を出るまで追っ手がほとんど現れなかったのだが、無事に帰路につけたことを喜ぶことにした。



シルフィードが着陸した格納庫から本拠地までは、数キロ離れており、車でそのまま地下を移動する。


「白の団」本拠地は、前世紀に使われていた旧レプリフォース地下基地を改造したもので、地下五階まである。

中央には各階を行き来できるエレベーターが五台ほど据えられ、ライドチェイサーの他、旧式ではあるが、機動兵器「ライドアーマー」用の格納施設も十分に整っていた。

実は、ネオ・アルカディアから抜ける前に、エルピスが独自調査し、秘密裏に整備していたのだ、ということもシエルはゼロに話した。

ちなみに、シルフィードも元々はレプリフォースの遺品だったらしい。



本拠地に到着したゼロ達を待っていたのは、話に聞いていた通りに白いコートを羽織ったレプリロイド――――エルピスだった。


「シエルさん。おかえりなさい」


「エルピス。ただいま」


二人は微笑みあう。

エルピスのすぐ後ろについていた少々老け顔のレプリロイドもまた、シエルに優しく声をかける。


「無事で何よりだよ…シエル」


「…心配かけてごめんなさい。セルヴォ」


エルピスが若々しく上品な雰囲気を持っているのに対し、セルヴォと呼ばれたレプリロイドはその顔立ちからか、非常に落ち着いた大人らしさを感じさせる。


シエルは彼らと一言二言会話を交わしてから、ゼロの方に向き直った。


「ゼロ。彼はセルヴォ。武器やみんなのメンテナンスをしてくれる技術局の局長よ。それで、こっちの彼が――――」


シエルの話を途中で制し、エルピスは自分から前に進み出てゼロに手を差し出した。


「お初にお目にかかれて光栄です。[伝説の英雄]さん。私はエルピス。元々はネオ・アルカディアで研究者として働いていましたが、正義のために立ち上がり、今はこの[白の団]のリーダーを務めさせていただいております」


握手を求める手。

しかし、ゼロはその手に応えず、言葉を返す。


「おしゃべりも馴れ合いも好きじゃないんだ。勘弁してくれよ[正義のリーダー]さん」


二人の間に微妙な雰囲気が漂う。

だが、ゼロの挑発的な態度をエルピスはまるで気にしてない風を装い、シエルに訪ねる。


「彼には、いったいどれくらいの事を?」


「うーんと…そうね。ある程度の事は話したと思うわ」


「敵はネオ・アルカディア。俺が斬るのは救世主エックス――――」


ゼロが割って入る。


「そんだけ分かれば十分だ。そうだろ?」


「…まあ、そういうことです。…では、早速――――」


「待ってくれ。エルピス」


ゼロをどこかへ連れだそうとするエルピスを、すかさずセルヴォが遮る。


「彼は戦闘をしてきたんだ。まずは、メンテナンスを――――」


「いらないよ」


ゼロは手をひらひらと振りながら、嫌そうな顔をしている。


「他人に体をいじくりまわされんのは好きじゃないんだ。――――それに、俺様は好調そのものだぜ?」


「――――しかし…」と心配するセルヴォを制しながらエルピスが言う。


「本人が大丈夫と言っているのです。信じましょう。――――さあ、ゼロさん」


「ん?」


「皆さんが待っています。急ぎましょう」


「…皆さん?」


エルピスの言葉に怪訝な顔をする。


「ええ。我々[白の団]のメンバーです。あなたにはとりあえず、今この基地内にいる全員の前で、挨拶と激励をしていただきたいと思っています。前線にいる部隊にも専用回線を通じてその光景は届けますが。まあ、早い話が――――」


挨拶と激励。…なるほど合点がいった。つまりは――――


「[演説]――――ってワケか…」


「――――ご名答」




ゼロはメンテナンスを拒否した自分を呪った。


もっとも、たとえ受けていたとしてもわずかな猶予が与えられただけだろうけれど。




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