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[Z-E-R-O]  作者: 村岡凡斎
激闘編
108/125

20   [D]



――――  4 ――――



朝の日差しが二人を染める。

自己修復機能により、ある程度塞がった傷口を確かめると、レヴィアタンは立ち上がり、フロストジャベリンを握った。


「この地形を利用しましょう。ラドゥーンを地上に上げるわ」


辺りを囲む岩山を眺めながら、作戦を考える。


「奴が私を狙うというのなら、今度は私が囮になる」


「待て。傷の治りは……」


ゼロの言葉を、レヴィアタンの人差し指が遮る。

片目を瞑り、笑いながら「大丈夫よ」と答える。


「この程度の傷、問題ないわ。それよりアレを何とかしないことにはどうにもならないでしょ」


放っておけば、どんな被害をもたらすか分かったものではない。

増援を呼ぼうにも、犠牲が増えるだけならば、いっそ二人で仕留めてしまった方がいい。そう言う判断だ。


「これ以上、軍団の恥を晒すわけにもいかないし……。一つ協力してちょうだい、紅いイレギュラー」


「……上に立つ人間も、楽じゃないな」


これまでの失態を考えれば、他の軍団に協力を要請するわけにもいかない。無論、その失態のほとんどにゼロは関わっている。

また、妖将の立場として、今回ゼロと協力関係を築いているということも問題であるし、作戦に協力してくれた上に傷が癒えるまでそばに居てくれたゼロへの恩も無下にはできない。

レヴィアタンがそう言った複雑な事情と私情を抱えていることが分かるからこそ、ゼロもまた、この戦いから手を引く訳にはいかないのだ。


「ボレアスでも湖でも、借りが重なってるからな。必ず返してやる。だから、無茶だけはするなよ」


「フフフ……ありがと」


二人でエル・クラージュに跨る。そして、研究施設があった方面に向けて、ゼロはアクセルを回した。


登り始める朝日に、照らされる岩山。奇襲を警戒して、湖近くの道は通らぬようにした。

初めて乗ったエル・クラージュの速度に、レヴィアタンは振り落とされないよう、ゼロの身体にしがみつく。かと思うと急に、背中越しに笑い出した。

風の音を気にしたくなかったので、接触回線を通じて何事かと問いかける。


「どうした?」


「いえ…ね。思ったより男らしい背中で感心しただけよ」


「そりゃどういう意味だ」とゼロが顔をしかめる。レヴィアタンはそれに対し、またしても笑う。


「あなたこそ、こんなにグラマーな美女が後ろから抱きしめているのに、気にならないわけ?」


そう言って、わざとらしく強く抱きしめ、身体を押し当てる。だが、ゼロはさ程気にしないどころか、呆れたように溜息を漏らした。


「おふざけも、度が過ぎるとみっともないぜ?」


「ホント、思ったよりも真面目よね。……つまんない人」


レヴィアタンは不満気に口を尖らせる。

だが、その表情は何処か嬉しそうでもあった。無論、ゼロには見えなかった。

それからしばらく、背中越しにゼロの体温を感じながら、レヴィアタンは考える。そして不意に、先ほどまでとは打って変わった落ち着いた声で「ねえ」と呼びかける。


「……なんだか、こういうのいいわね」


「『こういうの』?」


「………恋人みたいじゃない?」


その問いに、ゼロは答えなかった。彼女が真剣に口にしていたということもあるが、きっと彼女の心の中には別の景色が浮かんでいるだろうと思ったから。

レヴィアタンもまた、答えを迫らなかった。理由は、言うまでもない。

そこからまた走り続ける内に、今度はおもむろにゼロが口を開く。


「考えてみたんだ」


「……何を?」


「どうして、ソイツが死んだのか」


“ソイツ”――――誰のことを指しているのか、レヴィアタンにはすぐに分かった。

昨日、ちょっとした気紛れから過去の話をしたことについて、レヴィアタンは少しだけ後悔し、うんざりしたような声を返す。


「……しつこいわよ。彼は身体が弱かったって……――――」


「ネオ・アルカディアの延命技術があれば、いくら身体が弱かろうが、願えばもう少し長生きができただろう」


あの“おじいさま”などは既に百数十という歳を重ねている。

オルジフも、治療を打ち切らなければ、もっと長く生きることができた筈だ。


「だが、ソイツは死を選んだ。“レベッカ”が傍にいるにも関わらず…だ」


「…………」


ゼロの指摘は間違いなく、正しい。

“レベッカ”の模造人形が傍にいたというのに、オルジフは生きることを選ばなかった。

過去も、記憶も、姿形も似せて作った完全な模造人形と共に生きる道を選ばなかった。


それは、何故か――――


「もしかして、ソイツは……――――」


言いかけた瞬間、ゼロの腰に回されたレヴィアタンの両腕が、言葉を遮るように強張ったのが分かった。

ゼロは言葉を飲み込む。明らかに、彼女は動揺している。まるで「聞きたくない」とでも言うように。

その様子に、ゼロは「まさか」と口を開く。


「……まさか、お前……――――……‥‥ッ!」


その刹那、二発のエネルギー弾が二人めがけて放たれた。

センサーが感じるまま、ゼロはハンドルを切り、なんとか躱しきる。彼自身の反応に対し、コンマ〇秒のズレもなく応えるエル・クラージュだからこそ避けられた。

レヴィアタンは咄嗟に弾の軌跡を追う。その先に敵の姿を確認した。


「どうやら……向こうから来てくれたようね」


一体の竜の化物が、獲物を睨むようにしてこちらを見ている。

どうやって感知したのか知れないが、ラドゥーンは陸に上がり、二人を見付け出したのだ。


「クソ……先手を取られるとはな」


「問題ないわ。岩陰に隠れて減速して。あくまでも作戦通り行くわよ」


冷静にそう言い放つ。ゼロはそれに従う。

ラドゥーンのエネルギー弾による射撃攻撃を掻い潜り、岩陰に隠れながら減速した。タイミングを見計らって、レヴィアタンが飛び降りる。受け身をとって立ち上がると、「よろしく頼むわよ」と声を掛け、岩山を軽い足取りで登った。

岩山の頂上にひらりと舞い立ち、ラドゥーンと顔を合わせる。憎悪のようなものが、ラドゥーンのコアから放たれているような感じがしてならない。

レヴィアタンは不敵な笑みを浮かべた。


「……あなたが、いったいどういうつもりなのかは知らないけど――――」


愛槍の切っ先をラドゥーンへと向け、大気中の水分を集める。昨日、ラドゥーンが大量の水を湖から外へまき散らしてくれたお陰で、調子は悪くない。


「――――簡単に負けてはあげないわ。……手加減は抜きよ!」


瞬間、氷結と共に放出。

凝縮された水分は氷の龍を形作り、ラドゥーンへ目掛けて一気に空中を駆け抜ける。

スピリット・オブ・ジ・オーシャン――――フロストジャベリンによる必殺攻撃。とは言え、水中や雨天時ほど大きさを確保出来なかった氷の龍は、ラドゥーンの硬質化した眉間に衝突すると共に、派手に砕け散った。

氷の破片に乱反射する朝日がラドゥーンの視覚を惑わす。それによりレヴィアタンの姿を見失った。かと思うと、四方からのビーム攻撃。スピリット・オブ・ジ・オーシャンを防ぐために硬質化した表面に直撃し、ラドゥーンは思わず怯む。

蝶が舞うように駆けまわるレヴィアタンを捉えようと、ラドゥーンのコアは周囲を見渡す。すると今度は、上空から無数の氷の塊が霰の如く降り注ぐ。ダメージになることはないが、目眩ましとしては十二分に効果を発揮した。


「残念ながら、私はあの“戦闘馬鹿”みたいな重たい一撃は持っていないのよね」


撹乱と一撃離脱。敵を惑わし、最後はその隙を突く。それこそが妖将レヴィアタンの戦闘スタイルである。

水分を再び集め、フロストジャベリンを一振り。今度は氷の輪を生成し、ラドゥーンへと投げ飛ばす。

これもまた圧倒的なダメージを与えられるような攻撃ではない。ラドゥーンのような相手に対しては尚更だ。しかし、それでも構わない。奴の注意が必要以上にこちらへ向いてくれるならば。

優先すべきは作戦の完遂なのだから。


砕け散る氷の破片に、再びレヴィアタンを見失う。

痺れを切らしたのか、ラドゥーンは身体を大きくうねらせ、周囲に尾を振り回す。硬質化した尾は囲んでいた岩山を砕き、破片を飛ばす。

岩の礫を躱しながら、レヴィアタンはラドゥーンの尾に対し、ビーム攻撃を絶えず浴びせた。その衝撃は、確実に内部の神経伝達用ナノマシンにダメージを与えてゆく。


しかし、そのようにして行動を制限することによって、ラドゥーンはレヴィアタンの姿を視界に捉える。そして牙を向け、猛烈な勢いで頭部から襲いかかった。

だが、それを見越していたのか、レヴィアタンが難なく躱してみせると、ラドゥーンの頭部は背後にあった岩に激しく突っ込んでいった。

巻き上がる砂埃の中、背後へ振り返る。すると、レヴィアタンはフロストジャベリンを天に向け、周囲にばら撒いていた水分を再び集めていた。今度は先程より遥かに巨大な水の塊が切っ先に出来上がりつつ有る。

初撃、氷の輪、そして氷塊を降らせる“マリンスノー”による攻撃は、全てこの一撃を即座に放つための布石だった。


「やっぱり本調子とは言えないけど………今はこれで十分。喰らいなさい!」


掛け声と共に、特大のスピリット・オブ・ジ・オーシャンが放たれる。そしてラドゥーンの頭部に直撃し、盛大な氷の破片を空中に撒き散らした。

刹那、視界を撹乱されたラドゥーンの隙を突き、紅い影が背後から飛びかかる。手にした刃は炎を纏っていた。


ゼロの剣技の一つ、断地炎。炎を纏った刃を下に向け、上空から敵を討つ。接地、接敵した瞬間に爆発を起こすことで追加ダメージを与えることが出来る。

硬質化した表面を弾けさせ、内部のコアへ刃を通す。ラドゥーンの性質を考えた末、ゼロはこの技こそが勝利の鍵となると判断した。


「これで終わりだ!」


言い放つと同時にゼットセイバーはラドゥーンの表面に直撃し、爆破。身体を形成していたゲルが見事に弾け飛ぶ。そして、微かだが、確かに露わになったコア部分へと、そのままゼットセイバーを突き刺した。――――筈だった。


「…… な っ !?」


ゼットセイバーの刃はそのまま元のゲル状に戻った身体に突き刺さる。コアとなっていたパンテオンヘッドは、流れるようにゲルの内部を移動し、ゼロの攻撃を躱したのだ。

爆発の衝撃により、後方からの敵を感知。追撃を予測し瞬発的に避けた。そもそも中枢となるコアが自在に動くという考えがなかったこと、事前情報以上の反応精度であったことが災いした。


「紅いイレギュラー!離れて!」


レヴィアタンの叫びが届くよりも早く。ラドゥーンはゲルを棘上に変形させ、ゼロの身体を突き刺す。咄嗟に躱すも、腹部を貫かれ、そのまま身体から弾き落とされた。

彼の身を案じ、レヴィアタンは駆け寄ろうと地を蹴る。が、ラドゥーンがそれを許さない。あくまでもターゲットはレヴィアタン一人らしい。襲いかかる牙を既の所で躱す。

すると、パンテオンヘッドのカメラ部分と目が合う。気がつくと、いつの間にか牙の中心部分まで移動していたのだ。まるで、目玉のようにギョロリと見つめている。


「気色悪いものを!」


奥歯を噛み締め、フロストジャベリンを振り回す。硬質化した牙に刃が防がれる。

その後直ぐに、コア部分が今度は頭部まで移動する。そして、巨体を一気に凝縮させ、巨大な球体を形成する。

直径十数メートルの巨大な球体から四肢が生え、パンテオンヘッドはそのまま頭頂部に移動した。陸上での戦闘を考慮し、巨大な竜は、球体の魔神へと姿を変えたのだ。


その右腕が、レヴィアタン目掛けて振り抜かれる。咄嗟に飛び退くと、後ろの岩山が破壊され、瓦礫が周囲に飛び散った。


「もう一度……!」


フロストジャベリンに水分を集めようとしたその瞬間、ラドゥーンは体内に蓄積していたエネルギーを雷に変換し、体全体から放出した。

直ぐ傍にいたレヴィアタンは、その攻撃を直接受けてしまう。体中を雷が駆け巡り、全身の回路を焼き切るかのような激痛が走る。堪えきれず悲鳴を上げた。

それから攻撃が止んだ後に、周囲を見て絶句する。撒き散らしていた水があらかた分解されてしまった。フロストジャベリンによる攻撃は、もうそこまでの威力を発揮できないだろう。


「……万事休す…ね」


踏ん張りが利かず、そのまま倒れこむ。なんとか上体を片腕で支え、前を見る。審判を下す執行人のように、ラドゥーンは重たい足取りで近づいて来た。


「……いや……ここまで…か」


昨日の傷も痛み出し、もう立ち上がる気力もない。レヴィアタンは敗北を悟った。

彼女を睨むラドゥーンのコア部分。そこから滲み出る憎悪。


「ホント……あなたの“それ”は何処から来たのかしらね」


体を引きずり、岩山にもたれかかる。

ラドゥーンが抱える憎悪の正体。それが一体何処から来たのかは分からない。

しかし、己の死が迫る中、レヴィアタンはその以上な執着心に、自分を重ねた。


――――過去……か…


予測の範疇だが、おそらくマザーからサルベージしたプログラムの中に、“バグ”とも呼べるものが残っていたのだろう。つまりは、今向けられているのは過去からの憎悪。

きっとラドゥーンの中にある“それ”もまた過去に縛られているのだ。そう感じ取った。

もう自分に抗う力はない。レヴィアタンは覚悟を決め、オルジフの顔を思い浮かべた。


「……やっと…あなたのところへ行けるわ」


思い出せぬ言葉も、自分自身の存在の意味も、過去への執着も……何もかもから解放される。

そう思えば、怖くはなかった。


振り上げる拳。それを見つめ、思い出す。


――――今、行くわ……オルジフ…


そっと瞼を閉じ、豪腕が空を切る音を聞く――――この世界に別れを告げる。






「………そっちに…逝ったところで……お前はソイツに……会えやしない」





衝突音と、頬に当たる礫に、レヴィアタンは瞼を再び開く。紅いコートの背中が見える。身の丈を遥かに超える豪腕をゼロは正面から受け止めていた。

地面にめり込む足。先ほどの傷口から血液が噴き出る。それだけではない。あの拳をもろに受けたのだ。そのダメージは想像を絶するだろう。

レヴィアタンはしばらく状況が飲み込めず、口を開けたまま見つめる。


「ちょっと……何を……」


「……お前のことを……ソイツは待ってなんかいない」


レヴィアタンの心に、ゼロの言葉が突き刺さる。しかし、今はそんな話をしている場合ではない。


「……そんなこと言ってる場合じゃ――――……‥‥」




「 諦 め る の が 早 過 ぎ る っ て ん だ よ ぉ !!」




怒鳴り声をあげ、受け止める両腕に力を込める。そして、両腕のジェネレータをフル稼働させ、エネルギーを爆発的な速度で蓄積させてゆく。


「ちょっと…!そんなことしたら!」


オーバーヒートを引き起こし、四肢が弾け飛ぶに違いない。それほどの高速性だ。関節が軋む音が聞こえるような気がした。

しかし、ラドゥーンはそれを見過ごすつもりはない。いや、むしろそれを利用しようと考えた。

球体状の身体は形を変え、ゼロの身体を包み込んだ。全身から溢れ出るエネルギーを吸収するために。


「やめなさい!紅いイレギュラー!!」


レヴィアタンの悲痛な叫び。だが、ゼロはジェネレータを稼働させ続ける。

既にアースクラッシュ数発分に匹敵する量のエネルギーを生産し、それでも尚、ラドゥーンが吸収する以上のエネルギーを増産し続けた。

体中を駆け巡る激痛の中、自身を奮い立たせるためか、勝利をもぎ取るためか。ラドゥーンの体内に包み込まれたゼロは、ジェネレーターの可動と共に雄叫びを上げ続けた。




………ぉ゛ お゛ お゛ お゛ お゛ お゛ お゛ お゛ お゛ ぉ゛ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ お゛ お゛ っ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ っ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ っ ぉ゛ お゛ ぉ゛ っ ぉ゛ お゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ お゛ ぉ゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ っ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ お゛ お゛ ぉ゛ お゛ ぉ゛ お゛ お゛ ぉ゛ お゛ っ ぉ゛ お゛ ぉ゛ っぉ゛ お゛ っ ぉ゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ っ ぉ゛ っ ぉ゛ っ ぉ゛ っ ぉ゛ お゛ お゛お゛ お゛ お゛ ぉ゛ っ ぉ゛ ぉ゛ お゛ お゛ っ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ お゛ お゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ っ っ ぉ゛ お゛ ぉ゛お゛ ぉ゛ お゛ お゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ お゛ ぉ゛ お゛ お゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ っ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ っぉ゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ っ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ お゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ っ ぉ゛ ぉ゛ っ っ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ ぉ゛ お゛ お゛ お゛――――――――っ!!!






突如、ラドゥーンのボディーに綻びが生じる。ゲルの欠片が破裂音と共に弾け飛び始めた。

一つ二つと、焼け焦げたように煙を上げながら。次々と、連続的に。その数は増えてゆく。


そして大地を揺るがすような爆発的な衝撃が、激しい閃光と共に内部で起こった。

瞬間、ラドゥーンの身体を形成していたゲルは粉々に砕け、その勢いのまま、光と共に上空へと撒き上げられた。まるで滝が勢いもそのまま、逆流してゆくかのように。

光りに包まれ、コアとなっていたパンテオンヘッドは消し飛んだ。その内に抱えた憎悪と、今尚忘れられぬ過去と共に。



それから、数秒後。空中に舞い上がった無数のゲルの破片がどしゃぶりの雨のように地面を叩き続けた。







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