表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/150

変態で最低

「なっつん、大変な事実に気づいてしまったよ!」


「どうしたの?」


 冬休みの宿題を片付けていた鏡莉ちゃんが飽きたのか、鉛筆を置いて僕の方を見ながらそんなことを言う。


「明日から学校なんだよ!」


「うん。だから急いで宿題やってるんだよね?」


 今日は冬休み最終日。


 僕は栞さんの勉強を見ながら自分の宿題を終わらせたけど、鏡莉ちゃんは一気にやる人らしく、朝から宿題をやっている。


「そんなに量もないから急いでもないけど、早いよね」


「そうだね。今までの冬休みは早く終わって欲しいとしか思わなかったけど、終わるのが寂しいもん」


 学校が休みということは、家に居る時間が増えるもいうこと。


 家に居るのが嫌だった僕は毎日どこかに出かけていたけど、お店に入るお金もなかったからぶらぶらと散歩をするだけだった。


 だからとにかく寒くて冬休みは嫌いだった。


 ちなみに夏休みはもっと嫌いだ。


「なっつんと会える時間が減って、なんで有象無象と会う時間を増やされるのさ」


「会う時間が減っちゃうから今日はいっぱいお話したりしたかったけど、鏡莉ちゃんは忙しいんだよね?」


「後一時間で終わらすから」


 鏡莉ちゃんはそう言ってまた鉛筆を手に取った。


 そしてさっきまでとは別人のように高速で宿題を進めていく。


「永継さんはほんとに私達のやる気を出させるのが上手いよね」


 梨歌ちゃんが日課の柔軟をしながらそんなことを言う。


「そう?」


「無意識だもんね。ちなみに栞さんって宿題終わったの?」


「勉強見る次いでで一緒にやってたから終わってるよ」


「抜かりなしと」


 その栞さんは芽衣莉ちゃんを自分の部屋に招いて何かをしている。


 悠莉歌ちゃんはそれについて行った。


「そういえば前に好き嫌いの話で、永継さん食べれるけど嫌いなものあるって言ってたけど何が嫌いなの?」


「お豆の食感は苦手」


「味で苦手なのは?」


「うーん……」


 そもそもの話で、僕はそんなに色んな食べ物を食べたことがある訳でもないから出会っていない嫌いなものもあるかもしれない。


 出会った中で言うのなら……。


「チョコかな?」


「……それはなぜ?」


「甘いのと苦いのが苦手なの。過度じゃなければ平気なんだけど、チョコってどっちかに偏ってない?」


 いつだったかチョコを食べたことがあるけど、どうも甘いか苦いで苦手な印象がある。


 それと口に残る感じがどうしても苦手だ。


「食べれないって程じゃないけどね」


「でも美味しいとは思わないんだよね?」


「思うよ? ただ後から違和感があるだけ」


 最初は美味しいと思って食べるけど、途中から甘さや苦味が強くなってくるのが苦手だ。


 食べる量を調節すればいいのだろうけど、残すのが嫌いだからそれが出来ない。


「なるほどね。じゃあ少しなら美味しいって思いながら食べれるんだ」


「そうだね。もう数年は食べてないから食べれるようになってるかもだけど」


「この前のチョコあるけど食べる?」


「あれは封印されたんじゃないの?」


 甘酒と一緒に栞さんが持ってきたチョコ。


 あれはアルコール入りのようで、宇野さんと芽衣莉ちゃんが食べると大変なことになると言って封印された。


 とは言っても宇野さんと芽衣莉ちゃん以外の人は食べれるからたまに食べてるらしいけど。


「なっつんも危ないから駄目だって言われてるでしょ」


「永継さんは寝ちゃうだけだし平気かなって」


「わかんないでしょ。もしかしたらるか姉とめいめいみたいに……」


 鏡莉ちゃんの手がまた止まった。


「私が言っといてあれだけど、やめとこ。絶対に姉さんが怒るから」


「大丈夫、ここには私とりっかしかいない」


「その大丈夫の意味は?」


「なっつんに襲われても本望でしょ?」


「……わ、私達の意識が無くなった後に永継さんが何するかわからないでしょ」


「いいかもって思ったら同罪だから」


 鏡莉ちゃんはそう言うと立ち上がりキッチンに向かった。


 梨歌ちゃんは止めようとしたのか腰を上げたが、途中でやめた。


「べ、別にいいかもって思った訳じゃないからね。後何個かだったから私が全部食べれば事件は起こらないって思っただけだから」


「言い訳はいいから。ほんとに後二個しかないし」


 あのチョコは最初に宇野さんと芽衣莉ちゃんと梨歌ちゃんの三人が食べて事件が起きたらしく、十数個入ってるやつだからほとんど毎日誰かが食べている減り方だ。


「二個なら二人で食べれば?」


「なっつんが食べないと意味ないでしょ! なんなら私から口移しでもいいよ?」


「いいわけあるか。これって悠莉歌も食べてるの?」


「前に一緒に食べた。なんともなかったよ?」


「なんか悠莉歌だと納得できるんだよね……」


 確かに悠莉歌ちゃんは平気そうな感じはある。


 逆に宇野さんは駄目そうなイメージがある。


「それじゃあなっつん。あーんと口移しどっちがいい?」


「僕が取って食べるのは?」


「選択肢にないでしょ? それとも私じゃなくてりっかがいいって言うの……」


 鏡莉ちゃんが手を目元に当てて「およよ……」と言いながら泣いたようなフリをした。


「永継さん、あーん」


「ちょっ、抜け駆けするなし、あんたは止めてた側だろ!」


「駄目だなって思ったら私が口移しで貰うね」


「変態かよ。そんな変態からじゃなくて私のを食べて。ちなみに私も口移しで貰うから駄目なら言ってね」


「あんたも人のこと言えないじゃん」


 梨歌ちゃんと鏡莉ちゃんの二人にチョコを差し出された。


 僕がチョコを食べるのは確定事項らしい。


 早く食べないとチョコが溶けて二人の指を汚してしまう。


 だから僕は二つのチョコを両方食べさせて貰った。


 その際二人の指に唇が付いてしまった。


「ごめん、指ちょっと食べちゃった」


「……」


「……」


 梨歌ちゃんと鏡莉ちゃんが僕の唇が付いた指を眺めて固まる。


「鏡莉、駄目だからね」


「そのまま返すよ。これをしたらほんとの変態だからね。なっつんが絶対に引かないのはわかってても、人としてどうなのかって思うし」


 鏡莉ちゃんがその手を逆の手で必死に押さえながら言う。


「永継さんには悪いけど、手を洗おう。そうしないと私達はただの変態だから」


「くっ、致し方ない。なっつん、ちょっと待っててね」


「……うん」


 二人は洗面所へ向かって行った。


 洗面所の中で鏡莉ちゃんが「この裏切り者がぁぁぁぁぉ」と叫んでいるのが聞こえた。


「鏡莉うるさい」


「うるさいじゃない! 私を先に洗わせて自分はお楽しみってか!」


「ただ指に付いてたチョコを舐めただけ」


「付いてないだろが! てか舐めたのか!」


「実際はそんな度胸がないから指に唇付けただけ」


「……それならまだ許してやろう。りっかはチキンってことで」


「鳥頭がなんか言ってる」


 梨歌ちゃんと鏡莉ちゃんが言い合いをしながら戻って来た。


 そんな二人を見てたらなんだか頭がボーっとしてきた。


「やっぱ酔った?」


「甘酒で酔うんだから酔うよね」


「でもよくよく考えたら甘酒ってアルコール入ってないから雰囲気酔いだよね? アルコール入りのチョコだと甘酒と違ってほんとの酔い方するんじゃない?」


「……やばいかぁ、っと」


 頭がボーっとして意識が消えかかっているのがわかる。


 だから梨歌ちゃんを抱き寄せたのは無意識にだ。


 だんだん意識が消えて『カチッ』と何かが切り替わる音がした。




「……ん?」


 目が覚めると僕は布団で寝ていた。


 隣にはいつの間にか帰ってきていた芽衣莉ちゃんが座っていた。


「起きた? ごめんね、うちのおばかさんが迷惑かけて」


 芽衣莉ちゃんが冷たい視線を窓の方に向けたので僕もそちらを見た。


 そこには首に『私は変態で最低です』と書いてある紙を首から下げて正座している梨歌ちゃんと鏡莉ちゃんが居た。


「ちゃんとお説教しといたから許してくれる?」


「許すもなにも、僕は寝ちゃっただけ……だよね?」


 芽衣莉ちゃんに視線を送ると何故か逸らされた。


「僕もあれ付けるね……」


 何も覚えてないけど、多分僕は二人に何かをした。


 それならあれを付けるのは僕の方だ。


「篠崎さんはいいの。あの二人は悦んでたからああしてるんだから。どうせやるなら私の居るところでやればいいのに……」


 芽衣莉ちゃんが梨歌ちゃんと鏡莉ちゃんを睨む。


「いい情報くれたからあれで済ませたけど、次に抜け駆けしようとしたら流歌さんに言いつけるのと、私も本気出すからね」


 芽衣莉ちゃんがそう言うと梨歌ちゃんと鏡莉ちゃんが肩を震わせた。


 よくわからないけど、全部丸く収まったのなら良かった。


 だけど宇野さんが帰ってきてすぐに悠莉歌ちゃんが全てを話して二人は怒られた。


 悠莉歌ちゃん曰く「ゆりかは喋らないなんて約束してないから」と拗ねたように言っていた。


 それを見た栞さんが「羨ましかったんだね」と悠莉歌ちゃんの頭を撫でていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ