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あけましておめでとうごさいます

「永継君、眠いなら寝ていいよ?」


「眠くないもん」


 時刻は十一時を回ったところだ。


 今日は元々お母さんに泊まることを伝えていたので、今日はこのままここに泊まる。


 だけど問題があり、普段ならもう寝ているせいか、とても眠い。


 多分目を瞑ったらすぐにでも寝れる。


「永継はきっと、いい生活習慣を送ってるんだろうね」


「今までは寝たくなくても寝かされてたから、それで身体が覚えちゃったのかな?」


「なんかごめん」


 何故か栞さんに謝られた。


「悠莉歌ちゃんは眠くない?」


「ゆりかは朝は弱いけど、その分夜は最強だから」


 悠莉歌ちゃんは未だに元気で、鏡莉ちゃんと夜通しボードゲーム大会をやるそうだ。


「悠莉歌と鏡莉は私達よりも遅くまで起きてるからね」


「朝起こすのがめんどくさいんだよね」


 宇野さんと梨歌ちゃんの苦悩が見える。


「若いからね」


「子供だからでしょ」


「若いと年寄りのやっかみがあってやだやだ」


 鏡莉ちゃんがそう言うと、梨歌ちゃんが静かに立ち上がりいつもの粛清をした。


「毎回ほんとに鈍い音だよね」


「梨歌は怒らせない方がいいよ」


「物理で怒ってくれるならまだいいじゃん。流歌ちゃんと永継の場合は精神的にくるから立ち直れないよ?」


「私、そんなに本気で怒ったことないよ?」


 宇野さんが怒ったところは見たことがある。


 少し怖かったけど、つまり宇野さんの本気の怒りは少しでは収まらないということになる。


「流歌ちゃんが本気で怒るとしたら、同級生の女子が永継をからかい目的で近づいてきたり、男子がちょっかいかけてきたり、普通にいじめられてたりしたら?」


「想像したら機嫌悪くなってきた。どれもないね?」


「あからさまなのはね。永継に聞くのが一番早いんだろうけど、永継はそういうの興味ないだろうから私以上に知らないんだろうね」


 宇野さんと栞さんが何かを言いたそうな目で僕を見てくる。


 僕はもちろんいじめなんかは受けていない。


 そもそも学校で僕の近くに居るのは宇野さんと栞さんしかいないから、気づいてないとかもないはずだ。


「永継君に何かしたら私の全権力を使って潰す」


「流歌ちゃん、気持ちはわかるけど怖いから。来年には生徒会長になって学校を支配とかしないでよ?」


「永継君の生活しやすい学校を目指します」


「生徒会選挙の時にそんなの言わないでよ? 永継にも迷惑かかるし、何より恥ずかしいから」


 宇野さんが生徒会長になったら、きっと学校がもっとよくなる。


 でも……。


「生徒会長になったら、もっと会う時間減る?」


「そんな生徒会を辞めたくなるようなこと言わないでよ。既に揺らいでるのに」


「実際さ、流歌ちゃんってもうそこまで頑張る必要ないんじゃないの?」


 確かに今までは宇野さんがみんなを養わなければいけないから頑張っていたけど、仁さんが出してくれるところはお金を出してくれてるから、今までよりかは楽になっているはずだ。


 鏡莉ちゃんの貯金も、母親に渡していた分を計算したらギリギリになるものらしく、そこも余裕が出たと言っていた。


「そうだよ。姉さんはもう私達の為に身を削る必要ないんだからね?」


「そうは言ってもさ……」


「るか姉が大学行くのかは知らないけどさ、行ってる間にはめいめいとりっかもバイトは出来るんだし、私の貯金もあるしでお金のことはそこまで気にする必要ないんだよ?」


「流歌さんにおんぶにだっこは嫌だよ。みんなで仲良く分け合いたいな」


 確かにいい仕事に就くことは大切だ。


 でもその理由が姉妹を養う為なのがみんなは嫌なのだ。


「宇野さん一人で抱え込まないでいいんだよ。僕も働くから」


「……ん? それはどういう?」


「宇野さん達を……ささ、えた……」


 どうやら限界を迎えたようだ。


 僕の意識がどんどん消えていく。




「おはよう……じゃなかった、あけましておめでとうございます」


「おめでとうございます?」


 目を覚ますと同じ布団に芽衣莉ちゃんが寝ていた。


()()()()と今年初めて話したの私だ」


 芽衣莉ちゃんが可愛い笑顔でそう言った。


「寝ちゃったの?」


「それはなっくんが? それとも私とってこと?」


「違いがわからないけど、僕がかな」


「なっくんは話してる途中で寝ちゃったよ。だからみんなで寝ようって話になって、誰がなっくんの隣で寝るかを決めるボードゲーム大会が開催されて見事私が優勝したの」


 芽衣莉ちゃんが「えっへん」と言って胸を張った。


「みんなはまだ寝てるの?」


「うん。なっくんならわかってるでしょ?」


「わかるけど、悠莉歌ちゃんは起きてない?」


 他のみんなからは可愛い寝息が聞こえるけど、悠莉歌ちゃんは小さく唸る声が聞こえる。


「悠莉歌ちゃんのなっくんセンサーすごいな。でも悠莉歌ちゃんは起きてても記憶には残らないみたいだし、多分すぐに寝ちゃうから大丈夫」


「わかった、じゃあ『めいちゃん』でいいね」


「久しぶりだ。なかなか二人っきりになれなかったもんね」


 僕達は二人の時だけ呼び方が変わる。


 芽衣莉ちゃんは性格も変わる。


 隠す必要があるのかはわからないけど、昔の僕達に戻って話すことにしている。


「めいちゃんはずっと起きてたの?」


「ううん。なっくんが起きる少し前に起きたの。愛の力かな?」


「そうなのかな?」


 よくわからないけど、芽衣莉ちゃんが嬉しそうなので良かった。


「ちょっと聞きにくいこと聞いていい?」


「先におちゃらけでいい?」


「ちゃんと聞くあたりいい子だよね」


 鏡莉ちゃんなら構わず言う。


「鏡莉とは違うからね。それでね、なっくんと再会してから日に日に胸が大きくなってサイズアップしてるから今はDだよ」


「……うん」


 なんだか恥ずかしくなって目を閉じてしまった。


「そこで胸を見ないところがなっくんだよね。でもなっくんなら見てもいいんだよ?」


 芽衣莉ちゃんが抱きついてきた。


 おそらく今目を開けると、とてもいじらしい顔の芽衣莉ちゃんが見られるのだろうけど、開けられない。


「そこは目を開けて私に『エッチ』って言われるところでしょ!」


「だっ……て」


 怒られてしまったから仕方なく目を開けると、目の前に芽衣莉ちゃんの顔があり驚いた。


 そして驚いた僕の顔を見た芽衣莉ちゃんがニマっとした。


「可愛いなぁ。思わずキスしたくなるよ」


 芽衣莉ちゃんはそう言って近い顔を更に近づけてきた。


 だから僕は思わず芽衣莉ちゃんを抱きしめて芽衣莉ちゃんの耳元に顔をもっていった。


「大胆」


「恥ずかしいからこのまま話すよ?」


「うん。私もこっちの方がいいや」


 さっきまでとは違って、芽衣莉ちゃんの声に元気がなくなった。


「初詣には行けるの?」


 今日はみんなで初詣に行く予定だ。


 だけど芽衣莉ちゃんは誰かに後をつけられたり、話しかけられたりして外出恐怖症になってしまった。


 宇野さんも芽衣莉ちゃんには外に出ないようにと言っていたから、今日はどうするのか聞いていなかった。


「そもそも行くのかな?」


「初詣の話は私の話を聞く前に出た話だもんね。流歌さんのことだから行かないって言うかもだけど、なっくんが一緒なら行けるかも」


 芽衣莉ちゃんはそう言って僕の手を握った。


「ずっと一緒に居てくれる?」


「もちろん。鏡莉ちゃんをあっためるって約束したけど、それは誰かに任せないと」


「鏡莉はなんだかんだ言ってもいい子だからわかってくれるんだよね」


「うん、みんないい子だもん」


 鏡莉ちゃんだけではない。


 宇野姉妹はみんながいい子だ。


 そしてお互いを大切に思っている。


「じゃあ今日は僕がめいちゃんを守るね」


「うん。お願い」


 芽衣莉ちゃんはそう言って僕をぎゅっと抱きしめた。


 そしてすぐに眠ってしまった。


 きっと初詣のことが不安だったのだと思う。


 外に出ることもだし、自分のせいで初詣に行かないことになるのが。


 だからその不安を消しされるように今日は芽衣莉ちゃんを守ってみせる。


 そう決意して、最後に芽衣莉ちゃんを強く抱きしめてから僕も眠りについた。

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