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熱さの正体

「誰が永継君をいじめた?」


「めいめいアンドりっかペア」


「また芽衣莉……」


 芽衣莉ちゃんと梨歌ちゃんに服を脱がされてから鏡莉ちゃん達が来るまで色々とされてみんなと距離を取っている。


 正確に言うと、壁に背中を付けて体育座りをしている。


 服は返して貰えたけど、何かを失った気分だ。


「いじめてないよ? 篠崎さんにお仕置きしてただけ」


「なんでお仕置きなんてしたの?」


「篠崎さんが自己評価低いから?」


「自己評価もっと低い感じになってない?」


「女の子を教えただけだよ?」


 確かに教えられた。


 女の子は無闇に触ったら駄目だと。


「ゆりかも近づかせてくれなくなっちゃったんだよ?」


「なっつんは今第二次性徴の途中みたい。やっと私達を女の子として見てくれるよ?」


「でもそれは今までとは違って距離を置かれるってことでしょ?」


「それがあるから今までのままでもいいって思ってたんだよね」


 確かに今までと同じようには出来る気がしない。


「ちなみになっつんの今の心境を聞いても?」


「鬼か」


「よくこんなに可愛い子達に囲まれて普通にしてられたなって思う。しかも……」


 あんなに至近距離で一緒に生活していたなんて思い出すだけで顔が熱くなる。


「もっといじめたい」


「ほんとに鬼か。そっとしておいてあげなさいよ。これ以上やったら永継君が話してくれなくなるよ」


()()()()()ならいいな」


「絶対に字が違ったでしょ。今の状況がずっと続いていいのね?」


「わかってるよ。だからめいめいとりっかもそこまででやめたんだし」


 二人は確かにやりすぎないように加減はしていたように見えた。


 だけど途中からその加減が無くなったようにも見えて、鏡莉ちゃん達が来なかったらどうなっていたかわからない。


「永継君ごめんね、嫌な時はちゃんと言っていいからね、この子達は多分やめないけど」


「篠崎さんの全てが好きだから」


「あ、なっつん反応した」


 何故か『好き』という単語に身体が反応した。


「私も永継さんのこと好きだよ」


「私もなっつんだいすきー」


「ゆりかもー」


「あんたらね……」


 顔だけでなく耳まで熱くなってきた。


 でもこれは……。


「……みんなもこんな気持ちだった?」


 もしそうならと思うと、とても困ることをずっとやってきたということになる。


 その罪悪感から目元が熱くなってきた。


「永継のそれは嫌な気持ち?」


 栞さんが僕の真正面に座ってハンカチで涙を拭いてくれた。


「嫌ではないと思う。嬉しいけどなんだか身体が熱くなる」


「それはね、多分熱だよ」


「熱?」


 熱なんてしばらくなってなかったからどんな症状なのか忘れた。


 けど確かに頭が回ってる感じはしない。


「ちょっと失礼」


 栞さんはそう言って僕のおでこに自分のおでこを当てた。


(やっぱりこれが普通なんだよ)


 宇野さんには手を当てるのが普通と言われたけど、こっちが普通なんだ。


 だけど。


「顔、近いよ?」


「八……九いってるかな。そりゃいつもと違うよ」


「全身熱いや。頭も痛いしすごくだるい」


 熱だと言われてだんだん症状を感じるようになってきた。


 もう動きたくはない。


「とりあえず横になろ。布団は……言うまでもないか」


 既に宇野さんが布団を敷いていた。


「手伝う」


「ありがと」


 宇野さんと栞さんが僕を支えながら布団に運んでくれた。


「ごめんね」


「こちらこそね。色々考えさせすぎちゃったんだよ」


「永継永継、流歌ちゃんが毎日使ってる布団はど……」


 栞さんの腹部に宇野さんの手刀が入り、栞さんが言葉もなくうずくまった。


「宇野さんの匂いは落ち着くけど……」


「流歌ちゃんまさか、昨日の夜一人遊びでもして……」


 今度は栞さんの腹部に宇野さんの突きが入った。


「永継君言って。私は何もしてないことを証明して」


「……宇野さんの匂いは落ち着いて好きだなって思ったけど、『好き』は多分簡単には言ったら駄目なんだよね?」


 何でもかんでも思ったことを口に出すのは駄目だとさっき理解したから、これからは言葉を選んで使うことにする。


 それにはまず使われた時の気持ちを知らなければだけど。


「私は永継君とは素直な気持ちでお話したいな。そもそも駄目なんて言ってないよ? ただちょっと恥ずかしいってだけなの」


「恥ずかしい?」


「気分悪いだろうけどごめんね」


 宇野さんはそう言って僕のおでこに自分のおでこをくっつけた。


 そして宇野さんは何も言わずにじっと僕の目を見つめてきた。


「逸らしたね」


 なんだか宇野さんの目を見ていられなくなった。


「それが私達が永継君に『好き』って言われた時の感情。聞くの怖いけど、嫌だった?」


「ううん。なんか顔がもっと熱くなって、心臓もドキドキしてる」


 頭もクラクラしてきて、毎回こんな気分にさせてたのなら言うのを気をつけなければいけない。


「流歌ちゃん、悪化させてどうするの。二つの意味で」


「だって永継君に好きって言って欲しいじゃん……」


「そう素直に言えばいいの。回りくどいと永継は不覚考えちゃうから逆効果なの知ってるでしょ?」


「うん……。ということで永継君、我慢は駄目だよ?」


 宇野さんはそう言って優しい笑顔を向けながら僕の頭を撫でたを


「我慢しなくていいの?」


「うん。永継君は素直なままでいいんだよ」


「宇野さん大好き」


 僕はそう言って動きの鈍い身体を無理やり動かして、宇野さんの手に自分の手を重ねた。


「……桐生さん」


「素直にどうぞ」


「恥ずかしいけど、嬉しくて泣きそう」


「良かったね。でもそろそろ永継を寝かしてあげよ?」


 寝れるかはわからないけど、そろそろ話すのも辛くなってきた。


「とりあえず病院は一回寝てから考えよう。というかお医者さんの方を呼んだ方のがいいかな?」


「うちの子達は強すぎて病院に行く程の病気になったことがないからそういうのわかんないんだよね」


「流歌ちゃんは気力で治す派だろうしね」


「お金はかけられないしね。とりあえず永継君がうなされてるようなら病院かな?」


「そだね」


 僕も病院に行く程の病気なんてなったことがないからわからない。


 どっちにしろ病院に行く気はないけど。


「永継君、行きたくないって目をしても駄目。ほんとに駄目って判断したら連行するから」


「まぁ声も出せないって時点でやばいんだけどね」


 病院になんて行けない。


 これ以上お母さんに迷惑はかけられないのだから。


「お金なら私のお父さんに出して貰うよ。タダじゃないから安心してね」


「どうせ永継君の身体が目当てでしょ」


「流歌ちゃんがエッチなこと言ってる」


「永継君は桐生親子に相当気に入られたそうで」


 宇野さんが栞さんをスルーして僕の頭を優しく撫でた。


 大悟さんにお金を出させる訳にはいかないけど、ちゃんと返せるのならいざという時はお願いしたい。


 でもやっぱり迷惑はかけられないから宇野さんを見習って気力で治す。


「ごめんねうるさくして。いっぱい寝て早く元気になろうね」


 宇野さんの優しい声が耳を打つ。


 宇野さんは僕が眠りにつくまでずっと頭を優しく撫でてくれた。


 そのおかげか、一分もしないうちに眠りについていた。


 だけど、宇野さんの後ろで泣いていた芽衣莉ちゃんと梨歌ちゃんの顔は頭から離れなかった。

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