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二人がかり

「篠崎さんに問題です」


「明日?」


「ほんとにそういうところは篠崎さんだよね」


 明日は芽衣莉ちゃんの誕生日だ。


 だからそのことかと思ったら案の定だったようだ。


「結局お泊まりは出来るの?」


「うん。芽衣莉ちゃんのお誕生日をお祝いして、新年も一緒に迎えられるね」


 今まではただ一年が変わるだけの日だった。


 だけど今年は楽しみでしかない。


「でも大晦日ってなにするの?」


「私達もよくわかってないよ?」


 年越しそばを食べるぐらいは知っているけど、大晦日に何をするのか知らない。


「ハロウィンとかクリスマスとかとは違うから、のんびりするのが正解なんじゃないの?」


 梨歌ちゃんが日課の柔軟をしながらそう言った。


「イベントマウント?」


「別にクリスマスの方がいいとか言ってないでしょ。大晦日は派手に何かするんじゃなくて、家族でのんびり過ごすものなんじゃないの? って話」


「つまりいつも通りだね」


 特別な感じはしないけど、それはそれで落ち着くからいい気がする。


「明日は栞さんも泊まるのかな?」


「隣なんだからそもそも泊まる理由ないでしょ」


 栞さんは昨日から隣に引っ越してきた。


 今日は鏡莉ちゃんと悠莉歌ちゃんと一緒に荷解きをしている。


「早かったよね」


「昨日から引っ越してたくせに、昨日はそれを黙って泊まったけどね」


「仲良しさんだもんね」


 僕も出来るのなら毎日泊まりたい。


 だけどお母さんに「毎日泊まったら永継君が何かされる可能性が……」と心配そうに言っていた。


 みんないい子だから僕に何かするなんて考えられないけど。


「栞さんが泊まると身の危険を感じるけど、永継さんなら安心なんだよね」


「逆に篠崎さんが心配。鏡莉に何されるか」


「あんたもでしょうが」


「お母さんも言ってたけど、何するの?」


 二人は顔を合わせ、僕に聞こえない程の小声で話し合っている。


「流歌さんには怒られるだろうけど、篠崎さんに悪いことを教えるね」


「永継さんはもうちょっと男の子した方がいいと思う。今のままでもいいけど、そろそろ焦れったいし」


 二人はそう言って僕に這い寄って来る。


(僕は何されるの?)


 そんなことを考えていると、芽衣莉ちゃんが僕の腕に()()()()()()()


(なんかいつもと違う?)


 いつもの抱きつく感じとは違う。


 もっと密着した感じだ。


「梨歌ちゃんも照れないでやるの。篠崎さんの為だよ」


「同時にやったら芽衣莉に持ってかれるでしょ。私は私のやり方でやるし」


 梨歌ちゃんはそう言って僕の右手に指を絡ませて、伸ばしていた僕の右足にまたがった。


 そして僕の胸に身体を落とした。


「梨歌ちゃんそこで一言」


「今日は一緒に居てくれないの?」


 梨歌ちゃんが僕を見上げながら悲しそうに言う。


「かわ、って私が反応したら駄目でしょ」


「ぎゅってしていい?」


「どうぞ」


 梨歌ちゃんはそう言うと、僕の手を離して笑顔になった。


 そんな梨歌ちゃんをぎゅっと抱きしめる。


「これって永継さんの愛情表現なのかね?」


「むぅ、純粋に負けた」


「芽衣莉のアシストがあったのもあるけど、絡みつくだけじゃ永継さんは違和感を覚えるだけでしょ」


「やっぱりセリフか。梨歌ちゃんそういうのに恥じらい無くなってきてるよね? まさに演技派」


 確かに梨歌ちゃんはみんなで色んな衣装を着た時もだけど、演技が上手になった気がする。


 元々上手だったのかもしれないけど、今日もそれを感じた。


「私が恥じらわなければ永継さんが恥じらってくれるかなって思ったらやるしかないでしょ」


「恋は女を変えるってやつ?」


「そうなのかもね。芽衣莉だって少し前ならそんなことしなかったでしょ?」


「しないね。篠崎さんじゃなかったらそもそも男の人に近づくことがなかったし」


「みんな永継さんに変えられたんだもんね」


 嬉しそうに二人は言うが、僕は何もしていない。


 みんなが変わったのはみんなが頑張ったからだ。


 それとも……。


「僕がみんなを悪い方に変えた?」


「へぇ、永継さんは私達が悪い子に見えるんだ」


「今の状況的には否定出来ないけど」


「芽衣莉は黙る」


 もちろん梨歌ちゃん達を悪い子だなんて思っていない。


 今の状況だって、僕の為にやってくれてることらしいから。


「梨歌ちゃんは前と今だとどっちがいいの?」


「今に決まってるでしょ? みんなそう答えるから」


「私も。篠崎さんが居なかったら自分をずっと殺して生きてたと思うんだ。でもそれだと梨歌ちゃん達と本当の家族にはなれないから、今の方がいい」


 梨歌ちゃんと芽衣莉ちゃんが笑顔でそう答える。


 僕はこの笑顔だけは疑わないと決めている。


「僕はみんなの役に立ててるんだね」


「前にも聞いた気がするから……芽衣莉」


「うん。お仕置きしなきゃ」


 梨歌ちゃんと芽衣莉ちゃんの笑顔が変わった。


 この笑顔は何かする時の笑顔だ。


「何する?」


「お勉強も兼ねてるから、もっと大胆にやる?」


「じゃあ脱ぐのは芽衣莉で脱がすのは私?」


「そうしよう」


 不穏な会話が終わると、おもむろに芽衣莉ちゃんが服を脱ぎ出した。


 そして梨歌ちゃんは僕の服を脱がそうとする。


「え?」


「永継さんに拒否権はないから抵抗しないでね」


「え?」


「篠崎さんが壊れた」


「仕方ないで、って全部は脱ぐな馬鹿」


 芽衣莉ちゃんが下着姿になろうとしたのを梨歌ちゃんが急いで止めた。


「大胆に脱ごうかと」


「それはまだ早い。いきなりは永継さんにも刺激が強いでしょ?」


「それもそっか」


 なんだかよくわからなくなってきて、僕はされるがままに服を脱がされた。


「肌着はいっか」


「篠崎さん、寒いからあっためて?」


「脱いだ服が……」


 あったはずだけど、梨歌ちゃんによって回収されていた。


「ちゃんとシワにならないようにたたんどくね」


「着れば寒くないよ?」


「だって梨歌ちゃんに盗られちゃったから。私、このままだと誕生日前日に風邪引いちゃうよ?」


 芽衣莉ちゃんはそう言って「へくちっ」と可愛いくしゃみをした。


「えっとこれは言うことを聞かないと芽衣莉ちゃんに服を返して貰えないの?」


「自分じゃなくて芽衣莉ってところが永継さんらしいけど、そうだよ」


「じゃあ」


 なんで服を脱いだのかはわからないけだど、結局いつもとやることは変わらない。


 芽衣莉ちゃんを温める為に包み込むように抱きしめた。


「……」


「離したらやだよ」


 何かいつもと違う感じがして、反射的に芽衣莉ちゃんを離そうとしたら芽衣莉ちゃんに腕を回されてしまった。


「どうしたの?」


「なんか変。ドキドキするし、顔が熱い」


 やってることはいつもと一緒なのに、何故か全然違う。


「これが本当に寒くて仕方なくなら何も感じなかっただろうけど、この意味のわからない状況では篠崎さんもわかっちゃうんだね」


「そこまでしてやっと女の子として見られたってことだけど」


「たまに同じ反応してくれたもん!」


 確かに今までもこんな感じになったことはある。


 だけど抱きしめる行為は今まで何回もしてきたし、服を着てる時なら何も感じなかった。


「芽衣莉ちゃん、離して」


「嫌だよ? これは篠崎さんへのお仕置きなんだから」


「芽衣莉ちゃんの意地悪……」


 僕はなんだか顔を上げたくなかったので、芽衣莉ちゃんの肩に顔を埋めた。


「……梨歌ちゃん」


「駄目だっての。それ以上は永継さんが理解してから」


「じゃあいいもん。今存分に楽しむから」


 芽衣莉ちゃんはそう言うと背中をさわさわしてきた。


「もっと色んなこと教えてあげるね♪」


「永継さんが可哀想に見えてきた。そういえば永継さんって二人がかりに弱いんだっけ」


 思い返してみれば、前にも芽衣莉ちゃんと鏡莉ちゃんの二人がかりでいじめられたことがあった。


 あの時のことを思い出すと、更に……。


「もっと恥ずかしくなった? かわいっ」


 芽衣莉ちゃんがそう耳元で囁く。


 この状況は栞さん達が荷解きを終わらせてこちらに来るまで続いた。


 一体何時間やっていたのかは覚えてはいない。

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