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MMMとMHM

「なっ……つん!?」


「おはよう、鏡莉ちゃん」


 今日は初めてちゃんと寝れた気がした。


 だからなのかいつもよりも元気な気がする。


 朝出てくる前にお母さんと会って昨日の夜のことを話したら、何かを察して「ちゃんと話すから少し時間をちょうだい」と悲しそうに言われた。


 僕としてはあの人が約束を守ってくれたらそれでいいのだけど、お母さんが話すと言うなら待ってちゃんと聞く。


 今はそれより、僕を心配そうに見てくる鏡莉ちゃんの方が気になる。


「おはようなんだけど、ほっぺどうしたの?」


「ん? あぁ、ちょっと色々あって」


「私達絡み?」


「ちょっとだけ絡んでるけど、ほとんど関係ないよ。ただ、伝えたいことを伝えただけ」


 なんの関係もないと言ってもきっと鏡莉ちゃんを心配させる。


 だったら嘘偽りなく答えるのがいい。


 実際これは鏡莉ちゃん達はほとんど関係ないのだから。


 伝えることの大切さを教えてくれたのは芽衣莉ちゃんだからそこだけは関係あるかもだけど。


「鏡莉ちゃんは僕の言葉を信じてくれる?」


「ちょっとって言うのはどういう?」


「鏡莉ちゃん達の話は出したけど、違う話でこうなったってだけ」


「信じるけど、心配はするからね」


 鏡莉ちゃんは悲しい顔でそう言った。


「またさせちゃった……」


 みんなにはもう悲しい顔はさせないと決めたのに。


「私達を馬鹿にしないで。なっつんが私達を心配するのと同じで、私達もするんだよ。だからその分後で幸せにしてくれればいいの」


 鏡莉ちゃんに「わかった?」とまっすぐ目を見て言われた。


「そっか、優しいみんなが心配しない訳ないもんね。それで悲しい顔をさせるなら、それを忘れさせるだけ幸せにすればいいのか」


「うん。原因がなっつんじゃなかったとしても、自分を責める前にそんなの忘れさせればいいんだよ」


「それじゃあ今の鏡莉ちゃんを幸せにするには何したらいい?」


「ちょっと遅いけどおはようのキスして」


 鏡莉ちゃんが「ほっぺでいいから」とニマニマしながら頬を僕の方に差し出す。


 僕はその柔らかい頬にキスをした。


「これでいい?」


「……ぁぃ」


 声にもならない声で返事をされたけど、顔は真っ赤で、どことなく嬉しそうだから多分合ってた。


「幸せすぎてニヤケが止まらない」


「上がってもいい?」


 結局僕が靴を脱げたのは、それからしばらくして梨歌ちゃんがやって来た時だった。




「鏡莉がきもいんだけど」


「可愛いよ?」


「なっつんのしょうじきものー」


 鏡莉ちゃんが笑顔で僕の腕に抱きついた。


 鏡莉ちゃんはずっとこの調子でニコニコだ。


 悲しい気持ちが無くなったのなら良かった。


「篠崎さん」


 芽衣莉ちゃんが僕の服の袖をちょんちょんと引っ張った。


「なに?」


「私も悲しいから鏡莉と同じことをして幸せにして」


 芽衣莉ちゃんがそう言って悲しそうな顔を向ける。


「同じでいい?」


「そ、それは他の場所を要求してもいいって──」


「芽衣莉、調子に乗るな。心配なら心配って言いなさいよ。永継さんは誤魔化されるよりそっちの方がいいだろうし」


「これ? もうほとんど痛くないから大丈夫だよ」


 やっぱりみんなは優しいからどうしても気になってしまうようだ。


「ほとんどってことは少しは痛い?」


「少しだけね。でもほんとにだいじょ──」


 頬の痛みが和らいだ。


 正確には痛みを忘れることをされた。


 芽衣莉ちゃんが顔を赤くしながら僕の頬にキスをした。


「気休めにはなる?」


「痛いの感じない。嬉しさが上回ってるのかな?」


「う、嬉しい?」


「嬉しいよ。ありがと」


 芽衣莉ちゃんの顔が更に赤くなった。


「じゃあ私もやる!」


 そう言って鏡莉ちゃんも僕に顔を近づけてきたが、僕が芽衣莉ちゃんに抱き寄せられたので遠のく。


「鏡莉と関節キスになるから駄目。つまり今日は私しか篠崎さんの()()はしたら駄目なの」


「めいめいの初めては私なのに!」


「篠崎さんだから!」


「姉妹はノーカンなんて誰が決めたのさ!」


「つまり悠莉歌ちゃんとのやつもカウントするんだ」


「あれは未遂だし!」


 僕を挟んで姉妹喧嘩が始まった。


 内容が可愛いから止めずに聞いておく。


「あんたらって実はそういう関係なの?」


「昔の鏡莉は色々と病んでたから、それこそ治療の為に私と色んなことやったよ?」


「めいめいのほくろの場所だって知ってるよ。恥ずかしいところで言うとね……止めないとほんとに言うよ?」


「篠崎さんにはいずれバレることだし?」


 なんで僕が芽衣莉ちゃんのほくろの位置を知ることになるのかはわからないけど、なんだか二人の仲良し談を聞けるのは嬉しい。


「めいめいってそういうとこ強いよね。ほっぺにキスは照れるのに」


「実際にやると照れるよね。言うだけはタダだし」


「なっつんに似てきたな。元からか」


 なんだか芽衣莉ちゃんが喜んだ気がするけど、だんだん僕の意識が朧気になってきた。


「永継さん眠いの?」


「芽衣莉ちゃんの心音落ち着くの」


「おっぱい枕」


「言い方がやだ」


「じゃあMMMで」


「なんの略?」


「めいめいの 胸 枕。つまりドM」


「鏡莉嫌い」


 芽衣莉ちゃんはそう言いながら僕の頭を撫でる。


 そのせいでもっと眠くなる。


 眠る前に聞きたいことを聞いておく。


「ゆりかちゃんとしおりさんは?」


「栞さんが一回家に帰るって言ったら悠莉歌が『大きいお家見たい』って言ってついてった」


「そう、なんだ……」


 目が開かなくなってきた。


 昨日は久しぶり? 初めて? 夜にちゃんと寝れたのに。


「お眠の篠崎さんはやっぱり可愛い」


「めいりちゃんはだいじょうぶ?」


「うん! 今すっごい元気」


 昨日は泣いてしまうぐらいに元気がなかったけど、それなら良かった。


「寝て大丈夫だからね。ちゃんと膝枕するから」


「それだとMHM?」


「一応聞いてあげるけど、なんの略?」


「めいめいの エッチな 枕」


「篠崎さんはああいう子になったら駄目だよ」


 芽衣莉ちゃんはそう優しく僕に告げる。


 優しすぎて眠気に逆らえなくなってきた。


「めいめいがうざい母親みたいなこと言うからなっつんが寝そうだよ」


「普通に母性と言って。私は篠崎さんの母親にはなりたくないけど」


「ぼくのおかあさんになるのはやだよね」


 半分寝ながら会話に参加する。


「そ、そういう意味じゃなくてね。篠崎さんのお母さんになっちゃったら色々とまずいと言うか……でもそういう関係もなしではない?」


「親子でキス以上のことはさすがにアウトでしょ」


「口にはでしょ? まぁそれでもきついか。なら今だけお母さんやろ」


 そう言って芽衣莉ちゃんは抱きしめる力を少し強めた。


「お眠り、永継君」


「……おかあ、さん」


 僕は芽衣莉ちゃんの手に触れるのと同時に意識を落とした。


 半分寝ていたのもあり、本当に芽衣莉ちゃんがお母さんに思えた。


 実際はそんなことをして貰った記憶はないのに。

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