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着せ替え大会

「り……か?」


「絶句しないで笑っていいよ……」


 宇野さんが玄関を開けて「ただいま……」と元気無く言って少ししたら走ってやって来た。


 そして梨歌ちゃんを確認すると固まってしまった。


 嬉しいのはあるのだろうけど、嬉しさとかで固まっているのではない。


 梨歌ちゃんの格好が普段と違うからだ。


「梨歌ちゃんミニスカメイドバージョン。ちなみにツンデレメイドだよ♪」


「……ツッコミたいところがありすぎて私はどうしたらいいの?」


「とりあえず手洗いうがいして座る?」


 僕がそう言うと宇野さんが洗面所へ向かった。


 ちなみに梨歌ちゃんがメイド衣装を来ているのは、栞さんが何故か持ってきていたからだ。


 持ってきた理由は内緒らしい。


「やっぱり梨歌ちゃんはメイドが一番似合うね」


「最初にナースとネコミミを着させたのは私が放心状態だったからか」


「うん。今だと羞恥心が勝って着てくれなそうだから」


 梨歌ちゃんの着た衣装はメイドだけではない。


 宇野さんが帰って来るまでに、ナースやネコミミ、警察官の制服などを着ていた。


「他にも魔女とか魔法少女とかその他もろもろあるけど、また今度でいっか」


「着ないから!」


「いいの? 永継が可愛いって言ってくれるよ」


「一回も言われてないし」


「ごめん、可愛かったよ」


「言うなし!」


 梨歌ちゃんの元気がなかったからそっちが気になって言葉には出なかったけど、心の中では可愛いと思っていた。


「てか、魔女と魔法少女ってほとんど同じでしょ」


「梨歌ちゃん何言ってんの?」


 栞さんが真顔で言う。


「魔女っ子と魔法少女は似てるかもしれないけど、魔女と魔法少女は別物だからね? 魔女って言うのは存在が魔女だけど、魔法少女は普通の女の子が変身してなるものなんだよ。それで最終的に魔女になるのもあるけど、概念が違うから。それに魔女ものより魔法少女ものの方が実はグロいの多いんだよ」


「わ、わかったから」


 栞さんの力説に梨歌ちゃんが少し引いている。


 最後の方は僕もちょっと意味がわからなかったけど、魔女と魔法少女の違いはなんとなくわかった。


「魔法少女が成長すると魔女になるんだ」


「ならないのもあるけどね。大抵は魔女って最初から魔女だから」


「栞さんはどっちになりたいとかあるの?」


「私かぁ……、魔法少女かな。歳的にギリアウトな気はするけど、陰ながら世界を救うとかいいなとは思う。まぁ大抵は気づかれないから無能って言われた挙句に吊し上げられる場合もあるけど」


 魔法少女も大変なようだ。


「じゃあ栞さんが魔法少女の衣装を着て、梨歌ちゃんが魔女の衣装を着る?」


「え?」


「それは面白そう。でもせっかくならそこで隠れてる姉さんに着て貰おうよ」


 梨歌ちゃんが洗面所から顔だけ出している宇野さんを指さしながら言う。


「嫌です」


「てかもういっそ逃げた奴らにも着させなよ」


 芽衣莉ちゃんと鏡莉ちゃんと悠莉歌ちゃんは梨歌ちゃんが着替えてる間にロフトに上がってボードゲームを始めた。


「顔も出さないで私達は関係ないとかさせないから」


 梨歌ちゃんがロフトに笑顔を向ける。


「こ、これは梨歌ちゃんの罪滅ぼしと言うか、梨歌ちゃんの罪悪感を無くす為にやってたことで……」


「私はもうすっきりしてるから、と言うか栞さんは私を着せ替え人形にして遊んでただけでしょ?」


「じゃあこうしよう。今からコスプレ大会をして、永継さんに一番を決めて貰うの。一番になったら永継さんがなんでも言うことを聞いてくれるってことで」


「それは永継君の許可がないとね?」


「僕はいいよ?」


「言うと思ったよ……」


 梨歌ちゃんだけが色んな衣装を着て、栞さんに写真を撮られるのはそろそろ可哀想になってきていた。


 梨歌ちゃんの気持ちが晴れたのなら、せめて楽しんでいた栞さんと僕は梨歌ちゃんの言うことを聞く必要がある。


「つまりなっつんにコスプレを見せて可愛いって言わせたら勝ちな訳ね」


 一番にロフトに上がった鏡莉ちゃんが一番にロフトから下りてきていた。


「永継さんは可愛いってみんなに言うから、反応見て一番反応が良かった人が勝ち」


「誘惑は?」


「してもいいけど、永継さんに誘惑したら見てくれなくなるかもよ?」


「そうだよね。あくまで素材の良さを生かさなきゃか」


 鏡莉ちゃんはノリノリだけど、他のみんなは乗り気ではないようだ。


「私は晩ご飯の用意をしないと」


「ゆりかは合うサイズがないよ?」


「私もちょっと無理です」


「私は永継と審査員を──」


 僕の隣に来ようとした栞さんの腕を梨歌ちゃんが掴む。


「梨歌ちゃん、笑顔が怖いよ?」


「栞さんは強制参加だよ? 芽衣莉も晩ご飯の準備はもう済んでるでしょ? 悠莉歌は仕方ないとして、姉さんは……まぁいいよ」


「楽しんでた手前何も言えない……」


「梨歌ちゃんが強引」


「ゆりかはしんさいーん」


 栞さんと芽衣莉ちゃんが渋々納得して、悠莉歌ちゃんが僕の足の中に収まった。


「……ぼっちはやだ」


「じゃあ参加で」


 一人にされるのが嫌な宇野さんは自分から参加を申し出る。


 それがわかっていたから梨歌ちゃんはあえて宇野さんを省いた。


(さすが策士)


 宇野さんのことをよくわかっている。


「私はこれでいいから、着替えてきて」


「梨歌ちゃんは単純に私達に復讐したいだけでは?」


「そんなことないよ。永継さんにみんなの可愛いところを見て貰おうって思っただけ」


「絶対嘘だ」


 栞さんがジト目でそう言うと、梨歌ちゃんが舌をちろっと出して対抗した。


「可愛いなぁもう!」


 栞さんはそう言って洗面所へ向かった。


「行ってきまーす」


「ます……」


「対抗しなければ良かった……」


 楽しそうな鏡莉ちゃんと、元気のない芽衣莉ちゃんと宇野さんも洗面所へ向かう。


「僕の反応を見るって言ってたけど、どうやって判断するの?」


「ゆりかが独断と偏見でジャッジする」


「それがいいかな。じゃあ私から」


 梨歌ちゃんはそう言ってスカートの端っこを持って、足を交差させてお辞儀をした。


「りかお姉ちゃん。ツンデレメイドだから一言も」


「私、別に詳しい訳じゃないんだけど……、自分の世話ぐらい自分で出来ないの? ほんとに無能。そんな無能のあんたの世話が出来るのは私だけなんだからね!」


「おぉー」


 ツンデレと言うのがまだイマイチわかっていないが、なんだかとてもそれっぽく見えた。


「とっても良かったけど、相手はお兄ちゃんだから、無能は酷い」


「そういう設定か。じゃあ……、あんた他のメイド見てたでしょ? 男ってメイド好きだよねぇ。……私もメイドなんだけど? とかの方が良かった?」


「りかお姉ちゃんはツンデレのお勉強してるの?」


「栞さんの家でツンデレについて教え込まれた」


 どうりで言葉がスラスラと出てくる訳だ。


「で、判定は?」


「ゆりかのドキドキちぇーっく」


 悠莉歌ちゃんはそう言って僕の胸に耳を当てた。


「満点が十で、八点」


「普段が五?」


「普段がゼロ」


「結構高くてびっくり」


 演技の上手さもあってとても可愛かった。


 最初が少し怖かったのもあって、後の可愛さがより引き立った。


「あ、それがツンデレか」


「今までよくわからなかったのね。まぁいいや、後は楽しも」


 梨歌ちゃんはそう言って僕の隣に座った。


「なっつん」


 鏡莉ちゃんが洗面所から顔だけ出して僕を呼んだ。


「なに?」


「めいめいが一人はやだって言うから一緒にやっていい?」


「うん」


「お許しが出たから行くよ。大丈夫、可愛いから」


「そういうことじゃ、ちょっ、まだ心の準備がぁ」


 鏡莉ちゃんが芽衣莉ちゃんを無理やり引っ張って登場した。


「天使と悪魔?」


 芽衣莉ちゃんと鏡莉ちゃんの衣装は、芽衣莉ちゃんが天使っぽくて、鏡莉ちゃんが悪魔っぽい衣装だ。


「うん。正確には私のはサキュバスだけどね。めいめいにもサキュバスの衣装着て欲しかったけど、緩いやつじゃないと色々とわがままなめいめいは着ないから」


「これもギリギリなんだよぉ」


 芽衣莉ちゃんは顔を真っ赤にして今にも泣きそうになっている。


「だから魔女にすれば良かったじゃん。あれが一番緩かったんだから」


「鏡莉と似てる方が良かったから」


「お揃いとか、姉妹コーデとかの意味合いじゃなくて、私に合わせました感で恥ずかしさを消そうとしただけでしょ?」


 鏡莉ちゃんがジト目を向けると、芽衣莉ちゃんがそっぽを向いた。


「いいけど。これって一言いるの?」


「なくてもいいよ?」


「じゃあやろ。うーん……、あなたの全部を吸い取っちゃうぞ♪」


 鏡莉ちゃんがそう言ってウインクをした。


「判定は……、四点かな」


「低!」


「お兄ちゃんの気持ちを当てよう。寒そうって思ってるな?」


「うん」


 鏡莉ちゃんの衣装はほとんど布がない。


 さすがにこの季節であの格好は寒そうだ。


「間違えたな。めいめいはやる?」


「いい。これ以上恥の上塗りはしない」


「私泣いちゃうよ?」


「鏡莉は可愛かったよ」


 芽衣莉ちゃんはそう言って優しく鏡莉ちゃんの頭を撫でた。


「九点」


「何故に!?」


「天使っぽかったからかな」


 サキュバスにも優しい慈愛の天使。


 普通の芽衣莉ちゃんとも言える。


「なんかごめん」


「謝るな、虚しくなる」


 落ち込んだ鏡莉ちゃんとそれを励まそうとあわあわしている芽衣莉ちゃんが梨歌ちゃんの隣に座った。


「じゃあ次は私が──」


「マイナス十点」


「早くない!?」


 栞さんが出てきた瞬間に悠莉歌ちゃんが点数を発表した。


 栞さんが嫌いとかではない。


 だって栞さんの格好は……。


「それは私もないと思う。みんな真剣にやってるのに、持ってきた自分は着ぐるみて」


 そう、栞さんの衣装はうさぎの着ぐるみだ。


 あのリュックサックにどう入っていたのか謎だけど、とにかく着ぐるみだ。


「まじでそれにしたんだ。しおりん空気読んでよ」


「勘弁してください。中には着てるので」


「よし、めいめいやってしまえ」


「はい」


 鏡莉ちゃんに言われて栞さんの背後を取っていた芽衣莉ちゃんが着ぐるみのファスナーを下ろした。


 そして頭の被り物を退けると……。


「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「うるさい。でもいいね、うさぎの着ぐるみを脱ぐと中からバニーとは」


 栞さんの衣装は鏡莉ちゃん以上に布が少なく、正直目のやり場に困る。


「一言言います?」


「殺してください……」


「点数はマイナス十点を足してマイナス五点」


「私負けてんだけど?」


「お兄ちゃんの何かに刺さったんだろうね。どんぐりだけど」


 早く着ぐるみを着て欲しい。


「二度と人で遊ばないと誓います」


「どうせやるからずっとそれで」


「気まずっ」


 栞さんが着ぐるみを持って僕から一番離れたところに座った。


「多分最後の人は出て来ないから引っ張ってくるね」


 鏡莉ちゃんがそう言って洗面所へ向かった。


「るか姉行くよー。大丈夫、るか姉の前に大惨事した人がいるから。それと一言はこう言えば大丈夫だよ」


 鏡莉ちゃんはそう言って多分宇野さんに何かを告げた。


「大丈夫大丈夫。るか姉が言えばなっつんが惚れるから」


「……頑張る」


 そうして渋々宇野さんは鏡莉ちゃんに引っ張られて出てきた。


 その格好は……。


「あれが魔法少女?」


「そう。やっぱピンクだよね」


 宇野さんの衣装はピンク色の可愛らしい服装だ。


 ミニスカートで、手にはステッキのようなものを持っている。


「さぁさぁ、更に可愛く見える魔法をかけて」


「ほんとに言うの?」


「言ったら優勝だよ」


「しなくても良くない?」


「めいめいがなっつんにやばいお願いしてもいいの?」


「……わかった」


 芽衣莉ちゃんのお願いは別にそこまでやばくは……ないと思ったけど、初めてのキスは確か芽衣莉ちゃんからのお願いだった。


「ふぅ、言うよ。魔法少女ルカ、恋の魔法であなたのハートを貫くぞ♪」


 宇野さんが決めポーズと共にそう言うと、部屋に沈黙が流れた。


「私も明日から家出します。探さないでください」


 宇野さんがそう言って体育座りをして丸くなった。


「鏡莉、ちゃんと責任取って何か言いなさいよ」


「いや、想像以上に可愛かったから」


「本心を言いなさい」


「なんか悪いことをしたとは思ったよ」


 梨歌ちゃんと鏡莉ちゃんの話が聞こえたようで、宇野さんが立ち上がってフラフラと歩き出す。


「やばい、なっつん感想は?」


「可愛かった、今まで見たことない宇野さんで、ドキドキした」


 僕がそう言うと宇野さんが立ち止まった。


「慰めはいいよ」


「百点……」


「え?」


「十点とか通り越して、百点」


「そういうのはいいって」


 宇野さんはもう何も信じられなくなってしまったようだ。


「宇野さんは可愛いもん」


「なっつんが嘘言ったことないでしょ?」


「ないけど、空気は読める子だもん」


「でも、可愛いに関しては適当には言わないと思い……うけど」


「なんかまた私が居ない間に色々と話したよね? でもそうだよね。鏡莉達の言葉は信じられなくても、永継君だけは信じられるよね」


「失礼だけどその通りだから何も言えない」


 確かに嘘はつかないけど、鏡莉ちゃん達だって嘘はそんなにつかないはずだ。


「永継君は引いてない?」


「うん」


「ほんとに?」


「引かないよ。宇野さんの一生懸命なところは大好きだもん」


「はぅ」


 宇野さんがその場にしゃがんで丸くなってしまった。


「……わかった、信じる。後で鏡莉はお説教だけど」


「なっつんは喜んでくれたよ?」


「それで?」


「なんでもありません」


 どうやら宇野さんの家出は阻止出来たようだ。


 その後はみんな着替えないで晩ご飯を食べ、本当に栞さんは泊まって行ったようだ。

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