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告白、そして

「桐生さん、弁明は?」


「永継とのデートはとても楽しかったです」


 無事に旅館に戻って来れた僕と栞さんは、ちょうど帰って来た宇野さん達と合流した。


 今は近くの公園のベンチに座る僕と栞さんは宇野さんから詰問されている。


「顔真っ赤にしてた人が何言ってんの?」


「いい経験だったよ」


 栞さんが少し恥じらいながら言う。


 それを見た宇野さんが栞さんの頬をつねった。


「いふぁい」


「来る前に決めたよね? 抜け駆けはしないって」


「ふはほうよふれひょ」


 確かに僕達は宇野さん達に合流するつもりだったけど、迷子になったのは不可抗力だ。


「何言ってるのかわかんないけど、一番言いたいのは永継君どうしたってことなんだよ」


 宇野さんが栞さんをつねるのをやめて僕を見る。


 僕は普通だ。


 強いて言うなら、どう栞さんを喜ばせようか、宇野さんのしたいこととはなんなのかをずっと考えてはいる。


「永継は今、流歌ちゃんと私のことで頭がいっぱいなんだよ」


「ほんとに何してたの?」


「ちょっと話してただけだよ。この旅行についてとか、ホワイトデーについてとか」


「そういうね」


 宇野さんが納得するとため息をついた。


「別に永継君は気にしないでいいんだよ? 多分提案者の鏡莉は私の為って言ったの忘れてるから」


「それとは少し別なんだよね。純粋に宇野さんのことをもっと知りたいなって」


「私、この旅行で死ぬのかな?」


「そういうこと言うと永継が気にするからやめなさい」


 栞さんが立ち上がり、宇野さんの頭を優しく撫でながらそう言う。


「ちなみに流歌ちゃんはしたいこととかないの?」


「なっつんに夜這い」


 童心に帰ったように(鏡莉ちゃんと悠莉歌ちゃんは年相応ではあるが)公園で遊んでいた鏡莉ちゃんが話を聞いていたようで、いきなりそんなことを言い出した。


「鏡莉、帰ったらお説教」


「素直になればー」


 鏡莉ちゃんは逃げるようにみんなの元に帰って行った。


「なるほど夜這いね」


 栞さんがスマホを取り出して何かを打ち込み出した。


「メモせんでいい。そんなことしたら永継君とまた変な空気になるでしょ」


「ふむふむ、気持ち的にはしたいと」


 宇野さんがまた栞さんの頬をつねった。


「じゃあシンプルにデートじゃない?」


 今度は梨歌ちゃんがやってきた。


「梨歌、お説教されたい?」


「だって栞さんが帰ってきた時羨ましそうだったじゃん」


「梨歌、お説教」


 宇野さんにそう言われた梨歌ちゃんが「ほんとに素直じゃない」と呆れたように言って帰って行った。


「にゃるほろ。れーとは」


「だから何言ってんのって」


 宇野さんが呆れたように手を離す。


「お兄ちゃんと一緒に寝るのは?」


 そして今度は悠莉歌ちゃんがやってきた。


「言い方よ。一緒の布団で寝るだけね。それでも駄目だから」


「別に違う意味でもゆりか達は見て見ぬふりして、次の日は『おめでとう』ってお祝いするよ?」


「悠莉歌もお説教」


 宇野さんが悠莉歌ちゃんをジト目で睨むと「じゃあゆりかがお兄ちゃんと一緒に寝るね」と言って帰って行った。


「一緒に寝るもいいね。しかも断るなら文字通り寝盗られるなんて」


「だからメモるな。私は純粋に旅行を楽しめればそれでいいんだよ」


「流歌さんは私達と篠崎さんならどっちと一緒に居るのが楽しい?」


 最後は芽衣莉ちゃんがやってきた。


 今までのみんなとは少しだけ雰囲気が違う感じがする。


「そんなの全員で居る時だよ」


「つまり私達と篠崎さんは同じぐらいに好きってこと?」


「ま、まぁそういう言い方も出来るかな?」


 宇野さんが慌てた様子で答える。


「じゃあ篠崎さんのことは『弟』とか『お兄ちゃん』みたいに思って、あくまで『家族愛』ってことだよね?」


「どうしたの芽衣莉?」


「私が聞いてるんだよ? それにこれは大切なこと」


 芽衣莉ちゃんの眼差しは真剣そのもの。


 一切おふざけで言ってはいないのがわかる。


「確かに永継君のことははみんなと同じぐらい好きだよ。だから名前を付けたら『家族愛』なのかもね」


「認めちゃうんだ。……弱虫」


 最後はとても小さい声だったから僕にしか聞こえていない。


 だけど芽衣莉ちゃんの悲しそうな顔は宇野さんにも伝わった。


「めい──」


 宇野さんが芽衣莉ちゃんに手を伸ばそうとしたら芽衣莉ちゃんがそれを無視して僕の方に来た。


「篠崎さん、ううん()()()()、付き合って」


「どこに?」


「うーん、じゃあ未来?」


 芽衣莉ちゃんはそう言って僕の唇にキスをした。


 いきなりのことでどうしたらいいのかわからなくなった。


「ちょ、芽衣莉!」


「なに?」


「何してんの!?」


「告白?」


 驚く宇野さんに芽衣莉ちゃんが真顔で答える。


「流歌さんを応援するのやめようかなって。だから自分の気持ちを伝えてみた。何か悪いことしてる?」


「それは……」


 宇野さんの口が閉じられた。


 別に悪いことはしていない。


 気持ちを伝えることに悪いことなんてない。


 まぁ人目は無かったとはいえ、場所は考えた方が良かったとは思うけど。


「芽衣莉ちゃん、『なっくん』ってのは?」


「私となっくんっていわゆる幼なじみなんです。私が小学生になる少し前に近くの公園で遊んでて、その時の呼び方がなっくんです」


「まさかの昔からの仲」


 栞さんが薄く笑いながら言う。


 これは二人だけの秘密のはずだったけど、言うということは秘密にする必要がなくなったということなのか。


「だからなっくん、付き合って」


 またキスでもされそうな勢いで芽衣莉ちゃんが僕に顔を近づける。


「……」


「なっくん、無視は辛い」


「右と左、どっち?」


 僕は拳を作って芽衣莉ちゃんの前に差し出す。


「懐かしい、昔決めたやつ?」


「うん」


 昔芽衣莉ちゃんと決めたハンドサイン。


 真実な右手、嘘なら左手を差し出す。


 最近聞いた話では、ただの照れ隠しに使われていたらしい。


「こっち」


 芽衣莉ちゃんが僕の右手を触る。


「わかった、芽衣莉ちゃん……、めいちゃんと付き合う」


「え……」


 宇野さんが驚きの声を漏らす。


「なんか返事が納得出来ないからやり直し」


「じゃあね……」


 僕は立ち上がり、芽衣莉ちゃんの隣に膝まづく。


「僕はめいちゃんに一生を捧げることを誓います」


 僕は芽衣莉ちゃんの右手を手に取り、芽衣莉ちゃんの顔を見据えながらそう告げる。


「よく出来ました」


 芽衣莉ちゃんが僕の頭を優しく撫でる。


「ガチ告白?」


「やっとめいめいの長い想いが伝わったかな?」


「永継さんのこれたからに期待」


「お姉ちゃん達はどういう立ち位置になるの?」


「私はめいめいには頑張って欲しいけど、今まで通りかな?」


「私は隙を見て……まぁ今まで通り」


 なんだか不穏な会話が聞こえてくる。


「しおりお姉ちゃんは?」


「私も選ばれたかったけど、最悪は自分じゃなくてもいいって思ってたから変わらずかな? 静観が増えるかもだけど」


「ゆりかは二人の子供設定で甘える」


 みんなが今まで通りに接してくれるのなら良かった。


 ()()()()()()()()()


「姉妹で奪い合いとかちょっとあれだもんね」


「めいちゃんは渡さないよ?」


「そっちじゃないけど、なっくん好きー」


 芽衣莉ちゃんがあどけない笑顔で僕に抱きつく。


「そうだ、めいちゃんはホワイトデーのお返し何が欲しい?」


「なっくん」


「もうめいちゃんのものでは?」


「じゃあいっぱい愛して」


「それでいいの?」


 それなら今までもこれからも言われなくてもする。


 それとも今までのが足りなかったのか。


「独占するの」


「わかった」


「絶対無理なのはわかってるかそしたらお仕置きね」


 正直愛するのラインがわからないから、それは助かる。


 きっと僕は気づかないだけで、そう見られることをしているだろうから。


「毎日お仕置きだ」


「程々にね」


「されるの前提なんだもん」


 芽衣莉ちゃんがまたあどけない笑顔を向ける。


「甘ったるい」


「言うな、みんな思ってる」


「ゆりかはあの中に入るの? 糖分過多で糖尿病にならない?」


「なる時はみんな一緒だよ」


 なんだかみんなから呆れられたような視線が送られてくる。


 ただ一人、宇野さんを除いて。

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