お買い物(おふざけ)
「まずはどこ行く?」
「時間かかりそうなところから行こ」
近所では一番広いショッピングモールに着いた僕達は鏡莉ちゃんと芽衣莉ちゃんの先導の元服屋さんを目指している。
くじの結果、今日は芽衣莉ちゃんと鏡莉ちゃんと栞さんが僕の準備の手伝いをしてくれることになった。
「軍資金は決まってるから考えながら買わないと」
買い物をする際のお金は僕のものではない。
栞さんが当たり前のように一万円札を出して「上限は五千円ね」と言った。
僕が断ろうとしたら「私が出す代わりに、私達に全部選ばせてね」と言われ、むしろ選んでくれる方が嬉しいからもっと断りたくなったけど、僕が何かを言う前にどんどん話が進んでいって今に至る。
「やっぱり僕が出すから」
「駄目。そもそもあのお金だって私が赤点取らなかったことが嬉しくてお父さんがお小遣いでくれたやつだから、永継に還元してるだけだし」
「それは栞さんが頑張ったからだよ」
「頑張らせてくれたのは永継でしょ? それともお父さんからもっとすごい何か貰う?」
「どういうこと?」
「お父さんが永継のおかげで私の赤点が回避されたことほんとに感謝してて、下手したら家をプレゼントするかもだよ?」
それはさすがにないとは思うけど、大悟さんも美乃莉さんも栞さんのことが大切だから、何かされてもおかしくはない。
「つまり、今回のお買い物をお礼にすればすごいものを貰わずに済むってこと?」
お礼をされるのが嫌な訳ではない。
お礼をされることではないとは思っているけど、本当に家を貰うくらいのことをされると申し訳なさでいっぱいになるから遠慮したい。
だけどせっかくの厚意を無下にも出来ないから、安く済む方にしたい。
「そうそう、だから永継は気にせずに私達とのデートを楽しめばいいの」
「嘘なら返すからね」
栞さんが嘘をつくとは思っていないけど、優しい栞さんは優しい嘘ならつく。
見て見ぬふりも出来るけど、それはなんだか嫌だ。
「永継がうちに来る約束をしてくれた」
「しなかったっけ?」
「したけど来る気配なかったから」
大悟さんと美乃莉さんの都合もあるだろうからとなかなか行く機会がなかった。
でも大悟さんに確認を取りに行かなければいけなくなったから近いうちには行く。
「今度大悟さんが暇な時に行くね」
「お母さんも居るといいんだけど」
「二人が居る時の方がいい?」
「それが一番だけど、多分二人が一緒に休みになるのは結構先だと思う。朝だけとかならあるけど……」
栞さんはそう言うと何かを考え出した。
「どうしたの?」
「お父さんとお母さんが基本的に絶対に居る時間があるなーって」
「いつ?」
「夜。お父さんは夜遅くまで仕事をしない人だし、お母さんも基本的に遠くに行っても日帰りを目指してる人だから」
確かに朝の忙しい時間に比べたら夜の方がお邪魔はしやすい。
「そのままうちにお泊まりすればいいし」
「いくない!」
栞さんと僕の間に鏡莉ちゃんが入ってきて栞さんを睨んだ。
反対側では芽衣莉ちゃんが僕の腕に抱きついた。
「なっつんがしおりんの家に行くのはいいよ、でもお泊まりは駄目」
「なんで?」
「だってなっつんうちにも泊まってくれないんだもん」
正確に言うなら泊まったことはある。
鏡莉ちゃんの部屋を抜いても、年越しとその前日は泊まった。
「だからみんなうちに泊まろうよ」
「流歌さんが『桐生さんが本当に両親の許しを得てるなら考える』って言ってましたよ?」
「得てるって。逆に来なくてお母さんいじけてるよ?」
なんだか想像が出来てしまった。
美乃莉さんがいじける姿はとても可愛いと思う。
「永継に人妻好きの疑いが」
「だってみーちゃん……は駄目なんだっけ。美乃莉さんは栞さんを幼くしたみたいで可愛いんだよ?」
栞さんは美乃莉さん似で、きっと栞さんの小さい頃はあんな感じなんだと思う。
「素直に喜んでいいのかわからなくて困るんだけど」
「合法ロリなの?」
「そうだね、アニメとかならデフォルメされやすいタイプかな?」
またわからない単語が出てきた。
要は可愛いってことなんだろうけど。
「リアル合法ロリって見てみたい」
「よし、みんなでパジャマパーティーをしよう。もちろん永継を含めて」
なんだかすごいことに巻き込まれたような気がする。
隣の芽衣莉ちゃんが「なっくんのパジャマ……可愛い」と小声で呟いたのが聞こえた。
「僕パジャマとか持ってないよ?」
「だから買いに来たんでしょ。パジャマと私服を買って、後は……」
「後は?」
「リュックとかそういうのさ、うちにある余ってるのでいいならあげようか?」
「買いに来た意味」
栞さんの提案に鏡莉ちゃんが呆れたような視線を送る。
「軍資金が決まってるんだよ? 増やしたら永継が受け取らなそうだし、だったら永継の服にお金かけたくない?」
「別になっつんならどんな服でも似合うよ。いっそ女だけの七人旅にする?」
「え、それ面白そう」
鏡莉ちゃんの提案に栞さんが乗っかってしまった。
要は僕が女装して旅行に行くということだ。
いいのだけど、絶対に変な目で見られる。
みんなが。
「まともなのは流歌ちゃん達に任せて、私達はそっち系でいく?」
「なっつんをうんと可愛くしよう」
どうやら僕の女装は決定したようだ。
「めいめいもいい?」
「私は篠崎さんのパジャマ選ぶ。だからそっちはそっちでやって」
芽衣莉ちゃんはそう言うと僕を服屋さんに連れ込んだ。
栞さんと鏡莉ちゃんは女の子向けの服屋さんに入って行った。
「ご愁傷さま、でもないのかな? 自業自得だし」
「何が?」
「なんでもない。それよりパジャマ選ぼ」
芽衣莉ちゃんはそう言って僕をパジャマが置いてある売り場に連れてきた。
「やっぱり可愛いってなると女物になっちゃうか。でもあれなら」
芽衣莉ちゃんが真剣な眼差しで何かを探している。
なんだか久しぶりに二人っきりになった気がする。
「何探してるのめいちゃん」
「なっくんにピッタリのかわい!?」
芽衣莉ちゃんが驚いたように目を見開いて僕を見た。
「どうしたの?」
「いや、あ、そっか二人っきりか。自然すぎて全然気づかなかった」
「芽衣莉ちゃんで良かった?」
「んー、篠崎さんなら二人が来たらわかるよね。それならめいちゃんでお願い」
「わかった」
芽衣莉ちゃんはそう言うと少し雰囲気が変わった。
「なっくんは私に着せるならどんなのが好き?」
「めいちゃんに? なんだろ、よくわかんないけど可愛いやつ?」
「もう! それじゃわかんないよ。ちなみにネグリジェとかは嫌い?」
「何それ?」
今日は初めての言葉ばかりだ。
僕が不思議そうにしていると「いつか見せてあげるね」と芽衣莉ちゃんが少し恥ずかしそうに言った。
「そうだ、聞いてなかったけど、なっくんは女装に反対しないの?」
「特に嫌とかはないから別にいいかなって。僕の顔って女の子みたいなんでしょ?」
僕はお母さん似なのもあって女の子顔らしい。
お父さんにそう言われた。
「肌も白くてまつ毛長くて二重で、女の子よりも女の子してる可愛いお顔だよ」
「それを言うならめいちゃんもじゃん」
芽衣莉ちゃんも肌は白いし、可愛い顔だ。
「正直私もよくわかってないんだけど、まつ毛が長いのと二重だと更にいいみたいだよ」
「そうなんだ」
僕は芽衣莉ちゃん達の『顔』は見てるけど、そういう『パーツ』はちゃんと見ていないからよくわからない。
「もしもめいちゃんのまつ毛が長くて二重ならもっと可愛いってこと?」
「理論上は? まぁもしも篠崎さんのまつ毛が短くて一重でも可愛いって思う自信はあるけど」
「結局めいちゃんはめいちゃんだもんね」
タラレバなんて話しても仕方ないことだ。
芽衣莉ちゃんも他のみんなも可愛い、それが全てなんだから。
「そうそう、だから可愛いめいちゃんのお願い。これがいいな」
芽衣莉ちゃんはそう言って一つのパジャマを手に取った。
きっと美乃莉さんが着たらとても似合うであろうパジャマだ。
「いや?」
「いいよ。これにしよ」
「なっくん大好き」
これで僕のパジャマは決まった。
明日も買うのだろうけど、とりあえずは決まって良かった。
そのパジャマを買い終わると、鏡莉ちゃんと栞さんがやって来て試着室に入れられて色んな服を着せられた。
そして本当にクリーム色のワンピースを買った。
次いでに何故か黒いタイツも。




