プレゼントは膝枕
「ねぇ宇野さん」
「なぁに永継君」
僕は今、何故か宇野さんに膝枕をしてもらっている。
それはいいのだけど、テストも終わり、一つ気になることがあった。
「栞さんのお誕生日って何あげるの?」
「それね。私達は『なんでも言うことを聞く券』だけど、桐生さんからは色々貰ってるし、なんか味気ないんだよね」
栞さんからは本当に色々と貰っている。
僕がではないけど、みんなの誕生日には毎回その人に向けたコスプレ衣装などをプレゼントしている。
「プレゼント自体は完全に趣味なんだろうけど、ちゃんと他に小物までくれてるし」
「宇野さんはシュシュ?」
「学校ではよく髪をまとめてるからかね?」
宇野さんの手には水色のシュシュがつけてある。
鏡莉ちゃんと梨歌ちゃんと芽衣莉ちゃんも何かしら貰っているらしい。
何を貰ったかは聞いていないが。
「しかも旅館にも話つけてくれたんでしょ?」
「うん、費用も出してくれるって言うし」
栞さんが大悟さんに言って泊まる旅館に話してくれて泊まる場所が決まっただけでも良かったのに、費用も全部出すと聞かなかった。
「絶対にお金は返すけど、色々してもらったからには誕生日ぐらいは何かしてあげたいよね」
「宇野さんの膝枕とかいいんじゃない?」
今されている僕がとても嬉しいのだから、栞さんだってやって貰ったら嬉しいはずだ。
「え、私の膝は永継君専用だから無理。永継君の膝も今は特定の誰かのものじゃないから駄目ね」
「よくわかんないけどわかった」
宇野さん達が難しい話をした時はとりあえず頷いておけば大体あってるからそうすることにした。
多分考えてもわからないから。
「なんか永継君に呆れられた気がするけど、気にしたら負けだからしない。それより他に桐生さんが喜ぶものって何かあるかね?」
「栞さんは何でも喜んじゃうから心から喜べるものだよね」
実際そこら辺の石でもいいと言われてしまったから悩ましい。
「宇野さんなら何を貰ったら嬉しい?」
「永継君から何でも、ってみんなが言うから悩むんだよね。正直思いつかないんだよ、くれるっていう気持ちが嬉しいから」
「そうなんだよね」
僕だってそこら辺の石を宇野さんから貰っても喜べる自信はある。
結局なにを貰うかじゃなくて、誰に貰うかなんだと思う。
僕のことを考えてくれたのならそれだけで嬉しいのだから。
「桐生さんはそういうの上手いよね」
「うん、何をあげても喜ばれるなら自分の好きな物をあげようってことだもんね」
それに保険なのか小物も添えて。
「栞さんって何が好きなんだろうね」
「ゲームって言っても私達じゃわからないし、鏡莉に聞く?」
「でもそれだと何か足りない気がするんだよね」
栞さんの好きそうなゲームを鏡莉ちゃんに聞いてプレゼントすれば喜ばれはするかもしれないけど、それこそ味気ない。
「もっと気持ちを伝えたい」
「だったら物じゃないかな。膝枕がそうなんだろうけど駄目だから、寄せ書きみたいな?」
「栞さんにお手紙のお返し? それもいいかも」
今まで四枚も手紙を貰ったのだから一枚ぐらいお返しはしたい。
「そういえば栞さんから貰った衣装って誰か着たりしてるの?」
芽衣莉ちゃんがコスプレ衣装を着てるのはたまに見るけど、それは元からあるやつだと思うから誕生日に貰ったやつを着てるのは見たことがないと思う。
「コスプレを喜んでするのは芽衣莉と永継君だけだよ」
宇野さんに真面目な顔で言われた。
「芽衣莉ちゃんのメイド服姿可愛いよね」
芽衣莉ちゃんは色んなコスプレをするけど、特にメイド服姿が可愛い。
芽衣莉ちゃんのあどけない表情とメイド服がマッチしている。
「永継君にそんな趣味が。ちなみに私にはどんなのが似合うと思う?」
「執事も良かったけど、やっぱり魔法少女かな」
執事姿の宇野さんもスラッとしててかっこよかったけど、やっぱり魔法少女姿の可愛さには勝てない。
「他の着て上書きするか? いやでも永継君のことだから一番が変わらないで他のを見せるだけになる可能性も……」
「宇野さんの警察官の姿とかみたいなー」
「誰だ、永継君にそんな誘惑の仕方を教えたのは」
それはもちろん栞さんだ。
宇野さんが悩んでいたら選択肢をあげるのがいいと。
「よし、話題を変えよう。永継君って結局プレゼントはくれなかったんだね」
「ごめんなさい」
「別に責めてないからね」
僕は結局宇野さんに誕生日プレゼントをあげなかった。
それには理由がある。
「宇野さんにはあげたかったけど、それだとやっぱり鏡莉ちゃん達にあげなかったのが差別みたいになるのが嫌だったの。だったら鏡莉ちゃん達にもあげればいいんだけど、それだと今度は悠莉歌ちゃんだけが貰ってないことになるのが嫌で……」
こんなのは言い訳だ。
あげると言っておいて結局あげなかったことに変わりはない。
「永継君はほんとに真面目さんなんだから。この膝枕でプレゼント代わりになってるよ」
「僕がされてるのに?」
「永継君は私のことを膝枕するのは嫌?」
「ううん、むしろしたい」
「それと一緒」
とても納得した。
「お互いが得しかないプレゼントだね」
「それが一番最高のプレゼントなんだけど、桐生さんは変なところで遠慮するか照れるから出来ないんだよね」
「じゃあ栞さんにして欲しいことを頼んでみる?」
お互いのして欲しいことなら、こっちのして欲しいことを頼んでやって貰えばいい。
それが栞さんの喜ぶことならいいのだけど。
「ちなみに永継君なら何を頼む?」
「眼鏡を取って貰いたいけど、それは絶対に栞さんの喜ぶことじゃないもんね」
「ほんとにそれだけはブレないよね」
栞さんの素顔を見る、それだけは絶対に譲らない。
なぜなら見たいから。
「桐生さんのトラウマを消し去りたいのかもしれないけど、桐生さんも結構頑固だよ?」
「そういうのじゃなくて、絶対に可愛い栞さんのお顔を見たいの!」
「何が永継君をそこまでさせるんだ」
自分でもわからない。
ただ見たいのだから仕方ない。
「でも待つんでしょ?」
「催促はするけど、無理やりはしたくないもん」
「そこが永継君なんだよね。でもほんとに決まんないんだけど。やっぱり鏡莉達と相談する?」
確かにそれが一番手っ取り早い。
だからそれは後でするとして、一つ思いついた。
「栞さんにさ、『あれ』あげたらいいんじゃない?」
「『あれ』? どれ?」
「因果応報、違うな。燕返し、これも違う」
それっぽい言葉は出てくるけど、言いたいことが言えない。
「身から出た錆とかもそうじゃない? でも多分因果応報が一番合ってるよ」
どうやら宇野さんには伝わったようだ。
「別に悪いことじゃないから違和感があるんだよね」
「悪ノリだから似たようなものだよ。とにかく永継君のそれにしよう。きっと桐生さんも喜ぶから」
そう言う宇野さんの顔が悪くなっている。
ニタリ顔も可愛いけど、いつもの顔がいいので優しく宇野さんの顔に触れると元に戻った。
次いでに赤くなったので、微笑んだら宇野さんに頬をつねられた。




