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"環"  作者: 正さん
四章
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二十六話「法律違反」


「蹴上、こんなとこで何してんの」

 珍しく、寄り道せずに真っ直ぐ家に帰ると、私の部屋の前には蹴上が居た。

「お、帰ってきたな。お帰り、佐鳥のお嬢」

 煽っているような、馬鹿にしているような、楽しんでいるような口調の蹴上。

「……」


 父親がうちの組ん中で嫌われもんってことは嫌って程理解してるし、こいつが特に佐鳥反対派ん中でも過激な思想持ってるってことも理解しては居たけど、今の今まで娘の私には出来る限り直接は手を出してこんかった筈やろ。

 舐められんのは癪に触るけど、それで助かってたのも事実やから妙な感じやったんよな…。


「何の用?お父さんなら今お出掛け中やけど」

 私が妙に思いそう尋ねると、蹴上はクスクスと笑いながら私の部屋を指差した。

「そうか。俺はお前にも、お前の部屋にも用はない。でも、そこに居る奴らには用があったんだ」


 ざわりと立つ鳥肌。腹の底から沸き上がる怒り。

 ポケットからスマホを取り出してメッセージアプリを開くと、送った覚えの無いメッセージと、神足、そしてスパイからの連絡が。

『今晶の家に居るよ。会えるの楽しみにしてる』

『晶さんから連絡なんて珍しい…明日は槍が降るかも?』

 ヘラヘラと笑っている蹴上を突き飛ばし、扉を蹴破るくらいの勢いで部屋に入ると、そこには床の一点を見つめ固まっている神足とスパイの一人が。


「……晶、私……」

 蹴上から何を聞かされたのかも、何があったのかすら分からない。けど、ただ、今の私に出来ることは、目の前の震えている神足を抱き締める事だけだと思った。

「…晶、私……」

「……何があったか話せそう?」

 私の問いかけに、神足は震えながら首を横に振った。


「俺が、何を聞いたか伝える。だから神足の事は…今はそっとしておいてあげてほしい」

 冷静なスパイの言葉。

 頷いてから話してくれと促すと、彼は、私が今まで蹴上の居る組からどんな扱いを受けていたのか、その全てを聞かされたと淡々とした口調で教えてくれた。


「…晶さん、あんた…それでもトップになるつもりか?このままだと惨く殺されて終わりだぞ…あんたの性格を知ってるから諦めろとは言わんけど、神足のためにも、少し…考えた方が良いんじゃ…」

「だからこそなんや。わしがトップになってあいつら全員ぶち壊すしか手が無いねん。それが、わしが出来る、この組への一番惨い報復で、神足にしてあげられる最大の償いやと思わんか?」

 私の言葉を聞いたスパイの子は俯き、チラリと神足の方を見た。

 神足はスパイの子と目を合わせ、数回頷いてくれた。


「晶。私はあなたのためならなんだってするよ」

「うん、うちも、あんたの為なら何だってする」


『だから、あの蹴上という男を殺す役は私にやらせてくれ』


 神足の口がそう動いたように見えた。





「…ほら、煙草。学生の身分だと手に入れんのに苦労したんだよ、大事に吸いな」


「サンキュ」


「火」


「………はーーーダル…何時になったら環は俺らに情報吐くんだよ…もうこの際角材でも持ってきてガツンとぶん殴って情報吐かせてやった方が早くないか?」


「止めなみっともない。それしたらあたしらの首が飛んでくよ…あんたはまだ良いさ、こっちは乳臭い初潮もまだなガキの子守りだよ。あんたとあたしどっちのが悲惨だ?全く…」


「てか、そもそもの話、あの環とかいう男が本当にお前の手に入れたい情報知ってんのかよ…智明とか晶本人に当たった方が早くないか?」


「急いては事を仕損じるだよ、このクソガキ。今あたしが接触してる男には最初から期待なんてしてないよ。あいつの言う観月も、顔写真を見ない限り本人かどうか確認出来んが、似てないなら別人で、似てんなら他人の空似だろうさ」


「じゃあお前の本命は、あの男じゃなくてあのガキなのか?」


「まあね…あいつが間接的にでも晶と繋がってんなら別だが、とにかく、情報が手に入んのは時間の問題さ。吸い終わったらさっさと行くよ。二人で居んのがバレたら面倒だからね」


「あいよ」


「言っとくが、あたしの顔はもう晶に割れてんだよ、身分明かされんのも時間の問題。だからあんたは精一杯あたしの顔を隠すことに専念しな。リンチなりバラすなりは全部終わってもぬけの殻になってからで良いだろ」


「それもそうだな…あいつらのビビった顔、どんぐらい間抜けなんだろうな」


「あんたをリンチしていたぶった奴らに聞いてみたらどうだい?」


「聞けねぇよ」


「おや、そりゃまたどうして?」


「今入院してるからだよ」


「そりゃ残念だ。あ、ガキだよ。馬鹿の演技しな」


「はいはい。あんたも間抜けの演技頑張れ」


「どうも」


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