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"環"  作者: 正さん
三章
14/22

十四話「未練」


「…あの子からの連絡は?」

「……無い」

「今日で3日目だっけ?」

「……と、3時間43分…」

「創、分数まで把握しちゃうのはちょっとキモいよ流石に」

「…!!ついたついたついたついた!!既読!!ついた!!ついたよ遥!!!」

「ほんと!?なら返信来るよ返信来る来る来る」

「既……ッ」

「…どうした?返信来た?」

「……行ってくる」

「何?」

「この子寂しがってる」

「いや…あのね、言うのやめようと思ってたけどこの際だから言わせて?」

「行ってくる」

「創はさ!元カノが他の男と会ってたから喧嘩して別れたんだよね?そんな人と復縁しようって思う方がおかしいよ!」

「噂でしょ、私噂信じないタイプの男だから、遥とは違って」

「あっ…百々創!待て!なんて来たかだけ言って!先っぽだけで良いから!!」

「…って言われた」

「行け行け行け行け!今すぐに行け!!!ゴー!振り返るな!!」

「行ってくる」

「お肌綺麗にして行ってきな!」

「行ってくる!!」



 あの……話し合いするんじゃなかったっけ?

 レンから「おともだちが増えたから、この際まとめてみんなの自己紹介でもしない?」って、誘われて、来た筈なのにな…。

 てか、なんで帷子と百々の二人はあんな仲良くなってんの?いつの間に…。

 菜那さんと顔を見合わせ「恋愛って難しいですね」と話していると、てつが菜那さんと私に向けて恐る恐るこう尋ねてきた。


「あの、一個質問なんすけど…よくドラマとかで見かける、友達に好きな人から送られてきたメッセージを見せる流れってあるじゃないですか?あれって実在するんすか?」

「するよ、私中学ん時友達に見せられたことあってさ、○○君から送られてきたメッセージ見てーって」

 私の言葉を聞いた菜那さんは嬉しそうに私を後ろから強くぎゅっと抱き締めてくれた。

「え!本当なんだ…わ、華菜ちゃんも結構青春してるね!お姉さんなんか嬉しいな~!」


 なんか…石鹸の良い匂いがするな…とか思ったら変態っぽいかな…。

 なんて思いながら、私を抱き締めてくれる菜那さんの腕を撫でていると、そんな私達二人に向けて、レンが興味深そうに身を乗り出してこう質問してくれた。

「ねえねえ、そのおともだちはどうしてかなちゃんに見せてくれたの?」

 レンの言葉を聞いて、中学時代の事をふと思い出した。

 友達から「どうしたらいいかな!」と相談を受けまくって、恋愛経験ゼロなのに恋愛マスターみたいな扱いをされていた日々を。


「なんて返信すれば良いか自分以外の意見が欲しいらしくて…確か「誰よりも素直な華菜に聞きたい!」って言ってたっけな」

 レンの問いかけに私がそう答えると、ワキノブが納得したように息を吐いた。

「おおー…なんか、華菜さんらしいですね…」

「私らしいってなんだよ」

「ねえねえ華菜ちゃん華菜ちゃん?その子と好きな人は、賢い華菜ちゃんのアドバイスで付き合えた?ダメだった?」

「あそこ見せられたって言ってたから男の方一発殴った」

「わーかっこいい…ぼくがそのおともだちだったらかなちゃんに惚れてるよ…」

 レンはそう言いながら冗談っぽく胸の前で手を組んで、恋する乙女のような仕草をした。

「あはは!なんだそれ…」

 その姿が面白くて笑っていると、レンもつられたように笑ってくれた。

「ふふ、どう?ぼくかわいい?」

「うん、かわいいとおもう」


 レンとそうやって微笑み合っていると、てつが申し訳なさそうにこう問いかけてきた。

「えーでも、あの…友達にメッセージ共有して返信どうするか聞いてるってなんか怖くないっすか…?」

「あー…たしかにそれ、いわれてみたらこわいかも…」

「確かに!考えてみて!変なメッセージ送ってて…それを友達に共有されてたらって思うと怖くならない!?友情怖~!絶対男子会とか女子会とかでネタにされてる~!ってならない!?」

 菜那さんは私から離れ、そう言いながら辺りを見渡すような動作をした。

「付き合ってもない奴に他じゃ見せられんような変なメッセージ送る方が怖いです」

 冷静なワキノブの言葉。菜那さんは納得したのか大きく頷いた。

「それもそうだな…」



 その後、元カノに物凄く辛い振られ方をした百々が帰ってきてから、みんなでお互いの趣味や名前、家族構成、その他諸々についてを話し合うことにした。


「私は百々創、誰からも愛されない男です…」

「百々君には申し訳ないけど落ち込み方めちゃくちゃ面白いね」

 俯き、恐らく元カノの名前を何度も呟く百々創。

 そんなに元カノが恋しいのか…じゃあなんで別れたんだろ…?

 しかしそんな事が聞けるわけもなく、代わりに、豪快に笑っている澁澤を見て怪訝な顔をしている百々創へこう質問した。

「恋人さんとは付き合って何ヵ月くらいだったんですか?」


 百々は、しばらく悩んでから…嬉しそうに、でも、どこか悲しそうにこう答えた。

「半年です…大好きで、大切だって伝えたら振られました…」

「それは彼女の方に問題があるんじゃない?」

 なんて答えようか悩んでいた私の代わりに返事をしてくれたのは菜那さんだった。

「私が重いのが彼女のせいですか…?」

 そう言いながら悲しげに俯く百々。


「そ、そういう…あぁ…どう、しよっか…」

 あの菜那さんが気を使ってる…。

 どうしようか、なんか、き、気まずいな…。

 てつと顔を見合わせ、どうしようかと首を傾げたその時、ワキノブが口を開いた。


「私は花脇忍です、恋人はいません、趣味は眼鏡磨き」

「ワキノブ、お前どういう精神構造してんの?」

「ワキノブ…可愛いあだ名ですね…」

「可愛くないですから」

「はは、このあだ名あんまり好きじゃないんだ?」

「はい」


 おい、なんでワキノブでちょっと元気出てんだよ百々創。

 まぁあの状況だったら無理矢理でも話を変えた方が…。

「…彼女も君みたいに、自分のあだ名が嫌いだったな…」

 始まった!!

「あーーー私は沢田華菜!恋人はいない!趣味はマスコット集め!」

「彼女も好きだったな、ポピーラビット…」

「お、俺は…う、艮…清…」

「綺麗な名前…私の彼女みたい……」

「それはちょっと嫌だな……」

「あーーーえっと、お、俺は丸岡徹!!恋人募集中!趣味は読書!!」

「読書?え、好きな本はなんですか?」

「え、俺ん時は彼女に絡めたこと言わないんすか…?」

「あ…ごめんなさい…彼女が読書家アンチで、私が本を持っているだけで「別れる」って言ってくるから…もう半年読んでなくて…」

「あ、した」

「そんな女別れて正解だよ」

「マジでそれ」

「うるさい、もういいよ、はい、終わり、私の人生終わり」


 うわ…も、元カノの事ディスられて露骨に不機嫌になってる…。

 まあ、百々本人が彼女にまだ未練タラタラみたいだし、そんな状態だったらどんな声かけても無駄だよな。

 なんて思いながら、百々の隣でずっと色んな言葉を掛けているてつの肩を軽く叩き、首を横に振ると、察したのかてつは「まあ、あなたが良いなら良いんすけど…」と言いながら百々から離れた。


「まぁ、正直、彼女があんまり…その、良い子じゃないのかもっていうのは、遥に相談してた時に察してはいたんですけど…」

「ならなんで別れを切り出されるより前に分かれなかったの?」

「それは…彼女の事が誰よりも好きだったから…」

「へー、帷子君下の名前遥って言うんだ!」

「額塚さんと帷子さん、なんでそんなに仲良いのにお互いの下の名前知らないんすか…?」


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