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KARMA fake:recognition  作者: 藍月琉
第一章 灰の舞い落ちる日
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地面を一滴ニ滴と血が滴り落ちていく。



フルフェイスのヘルメットを押さえながら男は床に膝をついた。



砕けたメットから覗く瞳には動揺が隠せない。


「誰だ貴様ァ!!いつの間にィ!!」


「取り込み中だったか?それは悪かったな。」

先程、出会った蒼髪の少女と同じ装束を着て、顔には般若のような面をつけた厳つい男がそこには立っていた。


「おのれ!おのれぇ!!まとめて始末してやる!!」


ドルイドと名乗る甲冑の男は激怒しながら、パチンッと指を鳴らす。

「アイツを始末しろ!!…どうした…!?」

怪物たちに命令するも反応がない。


「悪いが、始末させてもらった。いくら呼んでもアンタの所には来ない」


フルフェイスの男が声の方を振り向くと、そこには黒装束を着た細身の少年が怪物たちを踏みつけていた。


(クソォ!!あと少しだったというのに!!どうにかしてこの状況を打開しなければ!)


「貴方達、八咫烏の方々とお見受けしますぅ!どうでしょう取引など?ワタクシ、こう見えて色々と研究をしておりまして!お望みでしたらこちらの情報を差し上げます。ああ!!そうだ!何なら八咫烏のためにワタクシ如何なる研究もお手伝い出来ますとも。黒血など…、どうですか?」


ドルイドはネズミの滑車回し並みによく回る口で語った。


「言いたい事はそれだけか…?」

「ヒィッ!!」


鬼の面を付けた黒装束の男はドルイドに凄んだ。

その迫力にドルイドは、欠けたフルフェイスから覗かせる瞳が般若の面を捉えながら小さく悲鳴をあげた。


こうなれば、最後の手段を使うしかない。

おもむろに手元から注射器を取り出し自分の首に当てた。


「どうやらお気に召さなかったようで…。それでは皆さんご機嫌よう、サヨウナラ」



「なっ、そうはさせるか…!!」



ガシャン!

鬼の面を被った男より早く、何かの塊が注射器を持つ手を弾いた。

注射器が地面に転がって行く。 



「これ以上好きにはさせない」



「遅いお目覚めだな…レン」

蒼髪の少女はレンと呼ばれていた。

どうやら彼女が投げつけた何かで弾かれたようだ。

「少し隙を突かれただけ…」

「少し…ね」

鬼の面の男と黒装束の少年はお互い見遣い肩をすくめた。



(困りましたねぇ、あっそうだこの手がありましたね!)

フルフェイスの男は呪を唱えた。

solu!



ぐああああっ!



突如、苅磨の腕が暴れ出した。

腕の鱗が逆立つ。

ビキビキと音を立て苅磨を侵食していく。



「こいつが例の式神使いとかいう奴か?」


「ええ、そう」


レンと呼ばれる少女は少年の発言に同意する。


「黒血か…普通の人間じゃ耐えきれん」


「なら、始末しますか?」


鬼の面の男の発言に、細身の少年は腕からワイヤーのような糸を取り出してみせる。


「いや、ここは俺がやろう」


「そうですか、それより良いんですか?アイツ逃げましたよ?」


「流石に今はこっちが優先だ…まだ他にも生き残りがいるかもしれない」


フンっと鼻を鳴らし少年は引き下がった。


苅磨に視線が移ったのを見計らい、フルフェイスの男ドルイドは姿を消していた。



大剣を担いだ鬼の面の男が、苅磨に近づいてくる。

大剣が苅磨の鼻先を掠める。

「悪いな…こちらも急いでる。何か言い残すことは?」

苅磨は暴れる腕を組み敷きながら男を睨みつける。



「オレはこんなところで死ぬわけには…行かない…!!」



(ほぅ…その状態でまだ自我を保つか…)

「こいつ、まだ喋れるのか…」

細身の少年は苅磨を眺めながら、鬼の面の男に進言した。


「隊長。どうせ時間の問題です。早く楽にしてやった方がいい」



少年の言葉を聞き、こんなこんなところで終わってたまるか!!と

苅磨はなけなしの力を振り絞った。



「オレはやらなきゃならないことがあるんだ!!菜月が…菜月が待ってる!!」



鬼の面の男の大剣を苅磨は掴む。

その切っ先を暴れる腕に向けた。

ポタポタと刃を掴んだ手から血が滴る。

「ヤタガラス…ってアンタ達のことだろ?アンタ達は知ってるんだろ?この腐った茶番劇がどうして起こったのか…?オレは知る権利がある!ちがうか?」

「……後で、後悔することになっても知らんぞ?」

「後悔…?こちとらずっと後悔の嵐だ!あの時、菜月を無理やりにでも止めなかったこと…オレに力があったらこんな…こんなことには」


「何をするつもりだ少年?」

鬼の面をつけた男が苅磨に問い掛ける。

「こうするんだ…よ!!」

そう力強く答えると大剣の先端を己の腕目掛けて

刺し込んだ。

「ぐうあああっ!!」

「なっ…!?」

「オレはもう立ち止まってるわけには行かないんだ!」


「オレの名は…狗神!狗神苅磨!!しのごの言わずオレを連れて行け!!」


「いいんだな?後で泣いても逃げ道などないぞ?」

鬼の面の男の問いかけに、少年は真っ直ぐと男を真剣な眼差しで見据える。

「隊長なにをするつもりですかッ!?こいつの言うことを聞くつもりで?」

細身の少年が神経質な声音で問うが、隊長と言われる鬼の面の男の意思は変わらない。

「フハハハ!!良いだろう!!カルマよ、その覚悟ゆめゆめ忘れるなよ!」

鬼の面の男は愉快そうに笑う。

少年の覚悟を汲み取り鬼の面の男は大剣を振るった。



黒装束の少年と少女が見守る中、

ドッと苅磨の腕が切り落ちる音がした。






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