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KARMA fake:recognition  作者: 藍月琉
第一章 灰の舞い落ちる日
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黒い影が、華奢な少女の身体を吹き飛ばした。

その様子を苅磨はただただ呆然と見つめていた。

ヤラレルと、苅磨の頭の中に警報が鳴り響く。


が、思うように身体が動かない。

手が振り下ろされる。

二メートルは、ゆうに超えるであろう。

黒い、鹿のような角を頭を持つ怪物だった。

咄嗟に目を瞑り痛みに備える。


「狗神くん危ない!」

一向に襲って来ない痛みに、苅磨は恐る恐る瞳を開いた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


数刻前

「もう、狗神くんたら人の話を聞かないんだから!」

見事に置いて行かれた高木繭花は、ぶつくさ文句を言いながら苅磨を追いかける準備をしていた。

こんな事もあろうかと、色々リュックに仕込んでおいたのが早速役に立ちそうであった。


災害用の非常食にロープ、雨水をろ過して飲めるようにするモノなど、中にはアヤシイものまでいろいろ詰まっていた。

とりあえず、懐中電灯を片手に捜索を開始する。


丁度、灰が地面に薄く積もり苅磨の足跡が残っていた。

この足跡を、辿って行けば苅磨の元に辿りつくであろう。

灰が、足跡を搔き消す前に高木繭花は急いだ。



しばらく残っている苅磨の足跡を辿ると、足跡が倉庫の前で途切れているようだ。

誰かが侵入した事を示すようにシャッターが開いている。

「きっと、ここね」

高木繭花は、意を決してライトの明かりを頼りに進んでいく。



暗い倉庫の中を、懐中電灯で照らしながら進んで行くと途中に階段を見つけた。

耳を澄ましてみると微かに音が聞こえた。

狗神くんが居るのかも…。

何か起きてからでは遅い。

音のする場所まで、高木繭花は急ぎながらも慎重に進んだ。



だんだんと、音が近づいている。

この声は狗神くんともう一人居るみたい。

高木繭花は、懐中電灯を消して部屋の入り口から中を覗いた。


暗くてよく見えないが、苅磨の銀髪がぼんやりと確認できた。

少し奥に、もう一人人影を感じた。

体格からすると女性だろうか。

ーー何だか、揉めてるみたいに思えたが少し見守る事にしたーー


二人が話し込んでいる後ろに、何だかひときわ大きい影が見えたが二人に危険を知らせる前に、巨大なそれは手を払った。

少女らしい影が吹き飛ばされて宙に舞った。

高木繭花は、思わず身を呈して狗神の元に駆け出した。





ガシャンと、高木繭花が落とした懐中電灯が音を立てて転がった。


閉じていた瞳を開けた苅磨の目の前に、高木繭花がいた。

苅磨は、思考が追いつかず頭が真っ白になった。

「せ…先輩、何で!」

「狗神くん、ケガはない?思い切り突き飛ばしちゃった」

「先輩こそ大丈夫なんスか!?」

慌てる苅磨に大丈夫だよ、足を捻っただけだからとヘラっと笑った。


グルルルルと、シロは唸りながら怪物と対峙していた。

「シロ見つかったんだね。菜月ちゃんは?」

苅磨は首を横に振った。

「菜月は、まだ見つかっていない」

こんな危険な事に、関係のない先輩を巻き込んだ事に苅磨は後悔した。

先程、吹き飛ばされた蒼髪の少女は、どうやら気絶しているようだ。

彼女の持っていた獲物が、持ち主の手を離れて転がっていた。

「狗神くん、提案がある。私が囮になるからあの子を連れて逃げて」

高木繭花の発言に苅磨は目を見開いたのがわかった。



「先輩、何言ってるんスか!?そんな事出来るわけないだろ!!」

「狗神くん聞いて!私の足じゃ、早く動けない…このままじゃ3人とも死んでしまう!そしたら、誰が菜月ちゃんを助けるの?」

高木繭花に、諭されてしまった。

悔しいやら情けないやら、もっと自分に力が有れば良かったのにと狗神苅磨は後悔した。


ーー先輩にとってオレたちは他人なのに。こんな状況でも先輩は、先輩らしいーー

「先輩は、やっぱりここで死ぬ人じゃない」




「シロ来い!」

苅磨は、怪物と対峙していたシロを呼び寄せた。

シロは苅磨の声に従い、威嚇するのを止め戻ってきた。

苅磨は呼び寄せたシロの背に、高木繭花を乗せるとシロに命令する。

「え?何、狗神くん?」

目を見開きながら高木繭花は苅磨の顔を覗き込もうとする。


「シロ…先輩を安全な場所に」


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