第7話 探し札
「これは送情様、お久しゅうございます」
あたたかな日の差し込む縁側でしわがれ声の老人が頭を下げた。来訪者があることを知っていたのか傍らには茶菓子が準備されている。
「久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
老人は肩を揺らして笑うと隣を指した。頃合いを見ていたのか小間使いが湯呑を運んでくる。ナガレは誘われるままに腰を下ろす。
「早速ですまないが情報が欲しい」
「美咲嬢の仇、ですな」
「あぁ、奴めなかなか尻尾を掴ませない。かなりの人数を喰っている」
「我らも草を放ってはおりますが4人程戻りませぬ。皆、腕に覚えのある者達。相手はなかなかの切れ者のようでございます」
「おそらく大見主が絡んでいる。種のうちに潰さねばならない」
老人は溜息をつくと螺鈿細工の豪奢な箱を差し出した。意匠のこらされたそれは国宝級の価値が見て取れる。
「これは?」
「先々代の書いた失せもの探しの符でございます。我らでは持て余しますが、送情様であれば」
「いいのか?」
「皆死んだようです、どうか仇を」
「使わせてもらおう。ふふ、あの鼻ったれの坊が立派になったものだ」
「ほっほ、ようやく免許皆伝ですかな?」
「いつだって頼りにしているよ義之」
老人は穏やかに笑うとナガレを見送った。
「良いのですか漣仁上人」
「老いぼれの我儘よ、送情様は我々なぞ及びもつかない古くからこの国をお守り下さっていた。最後に役に立ちたいではないか」
空を仰ぐ老人はどこか満足そうに笑った。
「くそが!」
男は自慢の刀で空を切る。さっきまでそこにいたはずの敵は姿を消し、連れて来た舎弟どもを一人、また一人と刈り取っていく。“ろくな死に方をしない”女の言葉が男の頭をよぎった。
「ふざけんなクソ!!」
「嫌だ!死にたぐ」
「うわああああ」
刀を持つ男の手が震える。10人連れて来た舎弟は既に残り二人。目の端に少しだけ映る鬼の姿に男は堪え切れずに逃げ出した。それは舎弟を盾にするような光景だった。
「佐々川あぁぁぁあ゛」
舎弟の断末魔を聞きながら男は走った。その先の廃工場の非常口、ノブに手をかけた瞬間男の胸から手が突き出る。その突き出た血濡れの手には男の心臓が握られていた。気管を潰された男は声も出せず、息も吸えず、流れ出た血に奪われた熱のせいで次第に冷たくなっていく己の体をただ見るばかりだった。
お爺ちゃんが穏やかに笑う姿が好き。ただ、それだけです!
うそです。ほんとは組織が一丸となって事にあたっていることを伝えたかったのです。
輩もいますが理念は滅私の組織ってことです。
でも、あったかい縁側で庭を見て穏やかに茶を嗜み微笑むお爺ちゃんって素敵じゃないですか?
ちがう?すみません。