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鈍色送り  作者: 南部忠相
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第5話 大見主

御結おむすびが本所にいるなんて珍しいね、なにしてんの?」


 商業ビル、ボタンの指定が無い地下三階。その一室でバサバサの白い頭で歴史書に齧りつく御結へポニーテールの女が声をかける。


「んー、調べもの。歴史の講義ずっと寝てたからわかんないの」

「へー、ほんと珍しいね。あんた感性で動くタイプじゃん?」

「失敬な! ま、否定派しないけどね。あ、サトちゃん詳しかったよね?」


 振り向いたリツへ向けてサトは悪戯っぽく笑った。


ユノミー(併設のカフェ)のティラミスで良いよ?」

「それは情報次第だよキミ」

「で、知りたいことって?」

「“大見主”って知ってる?」

「いや、知ってるも何もお伽噺でしょ? 世が乱れた時に現れ人類を選別するとか、何様だっての!」

「それがね、ナガレが事実だって」

「送情様が?」


 リツの脳裏に“たくさん死んだ”という言葉と共にナガレの顔がフラッシュバックする。普段無表情の彼女にあんな顔をさせた敵、少なくとも可能性があるならば知りたいと思ったのだ。


「たくさん死んだって言ってたの。あのナガレがいて、だよ?」

「・・・講義では詳しく言ってなかったけど、たしか太平洋にあった火山島へ法力の強い人たちを集めて丸ごと食わせたって話」

「囮……」

「人数までは書いてなかったけど、日本から引き剝がすなら相当な人数……でしょうね」


 二人の顔が曇る。


「まぁ、そもそも琵琶湖よりでかいクジラが空飛んでる時点でおかしいんだって! 自己犠牲の植え付けの為の誇張じゃないかな? 実際にはもっと小規模でさ!ね!」


 サトはそう言ったが、リツは漠然と掴みようのないこの話を真実だと感じ始めていた。


「さ、知ってることは話したよ! お礼の品はまだかね?」

「気晴らしに行こうか、ナガレから連絡もないし」


 二人は目を逸らすように資料室を後にした。





「たす、助け……!」


 路地裏に男の声が響く。その断末魔も強い雨音で掻き消えた。肉を貪るは見るも悍ましい鬼女。べりべりと肉を剥ぎ、ゴリゴリと音を鳴らして骨すら食む。血は雨に流されて排水溝へ流れていく。


「足りない……あぁ、足りない! あの子を育てるために、もっと!」


 強い雨脚の中、残されたのは衣服と僅かな肉の破片だけだった。

ユノミーって名前のカフェでティラミス食べるってお話です。

湯呑みとyou know me をかけたダジャレのお店。筋骨隆々の筋トレ趣味おじさんが腕を振るっています。ベンチプレス250kg。その剛腕から繰り出されるメニューは繊細で美味しいと評判。

という裏設定でした。

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