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鈍色送り  作者: 南部忠相
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第2話 人ならざるものたち

「あぁ、美咲だった。間違いない」

「あの子が敗けたの?」

「そう、言わざるを得ないな。あれは間違いなく囚われていた」


 黒く染まった空、街灯も切れかけてチカチカとしている公園で二人の女が話し込んでいた。一人は黒髪の美しい女。もう一人は脱色したようなバサバサで真っ白な髪の女、眼鏡をはずして涙をぬぐう。

 二人は通夜にでも来ているような顔で缶コーヒーを啜る。


「相手は?」

「山姥だ。書家を助けようとでもしたんだろう」

「……」


 ため息をつくと黒髪の女はボディバッグからスマートフォンを取り出しておぼつかない手付きでポチポチとタップする。


「ナガレはいつまで経ってもなれないね」

「仕方ないだろう? 文明の利器はいつだって難解だ」

「貸して、私がやったげる」


 逡巡しながらもナガレはスマホを白髪の女に渡して要点を伝える。


「こいつは私が引き受ける、手出し無用と送ってくれ」

「……今回も一人でやるの?」

「美咲が敗けるくらいの相手だ、穢れがお前達に飛んでも困る」

「もう少し頼ってくれてもいいのに」

「リツ、私は今だって頼っているさ」

「スマホは誰だって使えるの!」


 少し苛立ったような顔を浮かべてリツはナガレへスマートフォンを突き返した。


「はい、終わり」

「助かった。私がやっていればもっと時間がかかったろう」


 スマートフォンの画面には何某かの文字のような物が映し出されていた。速記の文字にも見えるようなそれはフッと画面から消えるとリツのスマートフォンが鳴った。


「ね、送信完了」

「やはり苦手だ、昔は皆筆で送ったものさ」

「いまそれ出来るのナガレくらいだよ」


 言われたナガレはボディバッグから筆を取り出して虚空へ走らせる。一瞬浮かぶ速記のような文字は少し光って消える。そこへナガレが息を吹きかけるとキラキラと光の粒が飛び散って見えざるものを象っていく。


「こいつらみたいに害が無ければね」

「まったく、可愛いものだ」


 よちよち歩く二足歩行の猫、鎌を背負ったイタチのようななにか。ふたりと目が合った瞬間ギョッとしたように木の陰に隠れる。落ち葉をパリパリ鳴らしながら食べるウサギのようなものもいる。リツと目が合うと恥ずかしそうに頭を掻いた。


「ぜんぶこいつらだったらいいのに」

「まあな。さて、言ってもいられないから動くとする」

「気を付けてね」


 ナガレは静かに立ち上がると夜の闇に解けるように消えていった。

白い方が御結リツ、黒い方が主人公ナガレです。

リツは「噛み殺せ!」https://ncode.syosetu.com/n2180gs/

のお結様から名付けて頂きました!

この場を使って感謝!

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