表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鈍色送り  作者: 南部忠相
10/12

第10話 辿る

 夜の闇、蛍の光のようにうっすらと明滅する導きを追ってナガレは陰から陰へと身を移す。

 かすかに感じる血の臭いに彼女の緊張感は増してゆく。乾いた血をこすりつけたような残り香が次第に濃くなる。治水のための巨大な排水路、敵は川とこれを移動の手段に使っているらしい。

 警戒しながら進む彼女の鼻に刺すような臭いが襲ってきた。

 食べ残しである。


「憎しみを払いて今まさに黄金の原へと至れ」


 ナガレは打ち捨てられた遺骸にまじないを与えて怪異への転化を防ぐ。魂の抜けた人間の体は苗床として申し分ない。

 葬儀の時分、香や念仏で清めながら魂を抜くのはこういった理由もある。古くから人間は見えずともこうして線を引いてともに暮らしてきたのだ。


「近いな」


 彼女は独り言ちて歩を進めるのだった。






「お、御結じゃん。どったの?」

「おー、サトちゃんげんきー?」

「おぉう、変な男にでも捕まったの?ひっでえ顔!」


 目の下に巨大なクマをつくったリツの顔を見てサトは訝しげに顔をしかめた。それにリツは手をひらひら振って笑いながら答える。


「違う違う、昨日ナガレと登山してきたんだけどさ……実力の違いってのをさ、嫌ってほどわからされたってーの? ちょっとでも追いつくために宝身営言ほうしんえいごん覚えてみようかなってさ」

「強化術? もっと簡単なのなら教えてあげられるよ?」

「んー…… それだとナガレの移動にも追いつけない」

「御結はいいなぁ、送情様はあんたしか側に置かないでしょ? 私も一緒に行きたいなぁ。いっつも助けてあげてるんだけどなぁ。ちょっとくらい口利きしてくれてもいいんだけどなぁ」


 サトは薄目でにやにやしている。リツは大きくかぶりを振った。


「残念だがそれはできない相談よ! ほら、サトちゃん連れてくと私の立つ瀬がないから」

「なにいってんの!東方立封とうほうりゅうほう百年に一人の逸材様!」

「成績一位様が何言ってんの! あ、ごめん電話だー 噂をすれば」

「お、天は我に味方するか!さあさ、推挙してくれたまえ!」


 リツは舌を出して振り向くとスマホを操作して電話に答える。


「どうしたのナガレ? 電話なんて珍し……うん、うん。……わかった。すぐに手配するね」

「どうしたの……?」

「美咲の仇、見つけたって。上の橋の方から駅方面に向かって逃げてるみたい。”一級戦時配置を”って」


 サトが廊下へ駆けだす。


「手配は任せて、あんたはすぐに合流!」

「ありがと!」


 リツは初めての一級戦時配置に強烈な何かを感じるのだった。


後書きでの卑怯な補足コーナー


"東方立封"仏教の宗派みたいなもの、という設定です。リツはこれに所属しています。設立は平安時代、昔々から妖怪やらなんやらと戦ってきました。もちろん戦争とかには一切手を出さず、超常的ななにかを相手しています。守護地域は東日本。


これに対して西日本を守護しているのが立封真会りゅうほうしんかい。神祇官の暗部組織である立封局が権力争いの末に分裂したため片方が"真"を名乗っています。

争いに負けた一派が北伐の供として東北地方に進出したのが東方立封の始まり、という設定です。

二つの組織は基本的にすごく仲が悪いです。ナガレはその二つの場所を行ったり来たりしているため嫌われていることも結構あります。死んじゃったやんちゃな若者とかにも嫌われてました。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ