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カジノで遊びましょう


 今日はカーミラとギャンブルをしにカジノへ来た。先日カーミラと街を散歩していた時に、夜中であるにも関わらずまぶしいライトや店の外からも中の騒々しさが伝わる賑やかなカジノを見て、案の定カーミラは行きたいよ~と言ったのだ。


 国営のカジノだから危ない事ややましい事(裏操作とか)はないだろうし、所持金も生活に響かない程度しか持ってきてないので安心して遊べる。


「なんか色々あるね、どこで何すればいいの?」

「まずはお金をコインに交換しよう。あ、バニーさんちょっといいですか」

「うふ~ん、どうしたのかしらん」

「へ、ヘンタイみたいなカッコ……!」

「バッカ、失礼だぞ! あ、すいませんね、悪気はないんです、あっ」


 カーミラの失礼な言葉にバニーガールは怒ってしまい、どこかへ立ち去ってしまった。俺はカーミラにここで働く人たちの格好には色々ワケがあると説明してやる。一応カーミラは納得したようなので、気を取り直してコインの購入をする。無難にボーイさんに頼もう。


「すいません、コインください」

「はい、おいくら分でしょうか」

「100万円分」

「……ああ、100コインですね。それなら1万円です」

「いや100万。ほら、この通り」

「え、マジで100万スか!?」

「ゴロ~、まだ遊べないの~?」


 あんまりジャブジャブお金を使うのは良くないけれど、今の俺の貯金からすれば100万を丸々スッたとしても生活に影響は全く出ないし、どうせ遊ぶなら全力で遊びたいじゃん?


「失礼。では1万コインをどうぞ」

「どうも。あ、こいつはチップ」

「ユキッティ! ははぁ、ありがたや!」

「ゴロ、もしかして金持ち?」

「ただ見栄っ張りなだけだよ。さ、このコインで今日はいっぱい遊ぶぞ~」

「わ~い! ぼろもうけ、ぼろもうけ」


 俺は1000コインだけ手持ちに残し、あとはカーミラに渡した。今日はカーミラに色んなゲームの遊び方を教える事になりそうだし、それに俺はギャンブルに強いわけではないからいっぱい持っててもすぐスるしな。


 キョロキョロとカジノを見渡したカーミラが最初に目をつけたのは、大きなテーブルに大きな設備でよく目立つルーレットだった。


「これにする!」

「ルーレットか。これはあの数字の円盤にボールを転がして、どこに入るか当てるゲームだよ」

「???」

「実際にやればすぐ分かる。まずは当てやすく分かりやすい赤全部か黒全部に賭けてみよう」

「よく分かんないから、ゴロの真似する~」

「じゃ、俺は赤に10枚賭ける」

「それじゃ私は赤に10枚!」

「い、いやね、ここは逆の黒に賭けた方が無難だし、おもしろいよ?」

「やだ! ゴロと一緒にするの!!」


 まあそう言うなら止めはしない。それに赤と黒両方に賭けるとどちらかは負けるのだ。それなら同じベットをして一緒に一喜一憂するほうがギスギスしないな。最初はまるっと真似させとけばいいか。


「スピンスタート、ベットの変更はまだ受け付けています」

「ゴロ~、目が回る~」

「そうだな。でもルーレットは回り始めてしばらくはベットを変えれるから、玉がどこに入りそうか凝視するんだ」

「うわ、なんかゴロ、ギャンブラーみたい」


 今回はカーミラを慣れさせるため、そして広範囲に賭けたので変更はしないけど。じわじわとルーレットは勢いを失い、運命を決する銀玉がポケットに入った。ナンバー5……赤だ!


「おめでとうございます。払い戻しをどうぞ」

「おお~、20枚もらった!」

「簡単だろ。さ、今度は好きにやってみな」

「わかった! じゃ、5番きたからゴロにちなんで6番に9000枚!!!!!」

「ブバァー!!」


 いやおかしすぎない? 今の賭け方はめちゃくちゃ当たりやすいベットだったから当たったわけで、1点狙いは約3%しか当たる確率は無い。だがもしかしたら、という可能性もあるし何よりカーミラの好きにさせると決めたじゃないか。


「おし、こいやぁ~」

「あの、ボーイさん、履歴表見れます?」

「どうぞ。でも見ない方が……」

「それはどういう……あ、見ない方がよかった」


 なんということでしょう。少し前に6に入っているではないですか。バイバイ、俺の90万円。せめて俺の手元にある10万円分のコインは換金して帰ろう。ボーイさんも同情した面持ちでゲームを開始した。


「わくわくするね~」

「ソダネ」

「ごちになりまぁす」

「ああ、もうどうでもええわ。さっさと終われ」

「めがまわる~、きゃっきゃっ」


 そしてスコンと銀玉がポケットに落ちる。赤のナンバー9……そりゃ入らんぜなぁ。


「あばぁ」

「うーん残念。ゴロ、コインくれ~」

「あのねカーミラ、今日はもう帰ろっか……」

「え~まだ全然遊んでないよ?」

「……あっ! お客様! これ当たりです!?!?」

「えっ、俺賭けてないぞ……ん? 6じゃなくて9にコイン・タワーが……!?」

「あ~、私側から見ると6だけど、それ9だったんだ~」


 ベットテーブルでも6と9は隣り合っているので置き間違えることはたまにある。ディーラーも目を疑っていたが、確かに9の部分にコインが山積みであった。こ、これは恐ろしい事になりましたよ、カーミラさん。


「は、払い戻し、324,000コインです……!!」

「ふぁ~、バケツに入ってる~」

「し、信じらんねぇ。満タンのバケツが3つとパンパンになったコインケース2つ……!」

「お客様、このテーブルのマックスベットは1万コインなので、お手持ちのコインならほぼ全面にマックスベットで1点賭けできますよ」

「誰がするか!」


 凄まじい損害を取り戻そうとカーミラにそんな提案をしてきたボーイ。しかしカーミラはどこかつまらなさそうだ。


「う~ん、ハズしてコインもらっても楽しくないね」

「俺はすごく楽しい。カーミラ、まだするか?」

「飽きた、別のする」

「おし、じゃ今度は俺たちも遊べるゲームにするか」

「やったー、見るだけじゃつまんないからね」


 カーミラを連れていくつかのエリアを回る。トランプを使うポーカー、ブラックジャックなんかや、サイコロを使うクラップスやシックボー、そしてお馴染みスロットを見て回った。

 俺たち客が実際にゲームに参加して遊ぶ事のできるやつは一通り見終わった。どうやらカーミラはカードを使うゲームが気になったようだ。


「あれやってみる」

「ポーカーか。ルールも分かりやすいし、すぐ楽しむようになるぜ」

「カード、さわれる?」

「もちろん」

「わ~い、たのしみ」


 もしかしてトランプを触りたいだけなのか。そういえばクラップスを見てたときもサイコロばかり見てた気がするし、カーミラはゲームで遊ぶよりも道具を使ってみたいのかもしれない。


 それはさておき、どうやらこのポーカーはカリビアン・スタッドルールのようだ。プレイヤーとディーラーの手元に5枚ずつカードが配られ、ディーラーは1枚だけ手の内を見せてくれるあれだ。このルールだとカードの交換はできないので、配られた時点で勝敗は決している完全な運ゲー。

 ただ単純明快なのでカーミラみたいなカジノ初心者でも楽しみながら慣れることができるゲームだろう。


「さて、言っても分かりにくいだろうしまずやってみるか」

「ゴロの真似する~」

「最初にアンティにベットする。今回は10枚でいいな。ジャックポットにも10枚置いとくか」

「ふかふか~」


 カリビアン・スタッドが他のポーカーと大きく違うのはプレイヤー同士の戦いではないこと、そしてこのジャックポットの存在だ。

 ジャックポットはサイドベットとも呼ばれ、プレイヤーの勝敗ではなく、プレイヤーが出した役に賭けるベットだ(このポーカーの場合は)。どういうことかと言うと、俺がフォーカードを出したら、俺が例えゲームに負けたとしても、ディーラーがプールしていたジャックポットのコインを少量だが得ることができる。こう聞けば単に負けたときの保険に聞こえるが、実はもっと大きな狙いもある……


「じゃ私もアンティに10枚、ジャックポット10枚~」

「32万枚もコインあるのに、けちな賭け方するなぁ」

「むっ、じゃあアンティに10万、ジャックポットに10万!!!!!」

「お、お客様、その賭け方なら手元に40万コイン無いと……」

「ぷぅ~、じゃジャックポットは1万」


 ちょっと豪快すぎるけど、まあいい。なんかカーミラは勝つような気がするしな。ボーイは早速カードをサクッと切って場に5枚ずつ配った。俺の手札はダイヤの3で1ペア。しょぼい。


「ねえゴロ~、これどう?」

「うむー、ツーペアか。いいんじゃないか?」

「ふかっ! で、どうすればいい」

「勝負に出るならアンティにさっき賭けたコインの倍のコインを置く。このカードに自信がないなら、フォールドとあの人に伝える」

「ゴロはどうする?」

「俺はフォールドするけど、カーミラは勝負してもいいな」

「わかった!」


 ドスンと聞こえそうな勢いでさらに20万コインを賭けるカーミラ。これよく考えたらツーペアに出す金じゃねえよな? 勝っても3倍だぜ。いや60万コインになるから凄まじいけど、負ける確率が割りとあるからもったいなくね?


「プレイヤー全員の行動を確認しました。こちらのカードを開示します」

「ゲッ!!! お前、ストレートかよ!!」

「ゴロ、あのぐちゃぐちゃの組み合わせが強いの?」

「カーミラのスリーカードより微妙に強い……」

「ほえ~」

「ふふふ、勝負ありですね。ごちになります」


 くっそ~、しかもあのストレート、ハートの3とかスペードの6とかマジでぐちゃぐちゃな組み合わせだぜ。34567のストレートとか、ストレートの中でも最弱レベルだし腹立つ。


「フルハウス以下なので、ジャックポットのベットも回収いたします」

「あれま~」

「あ、あれま、じゃねえよ! 一気に手持ちが2万コインだ……」

「2万4千コインだよ~」

「ああそうだな、ちくしょう……」


 もしあれを現金に換えてたとしたら、3000万円だ。なあみんな、もう帰ってもいいよな。今帰れば来た時よりプラスなんだ。というか100万が250万になったのでむしろ大勝ちしてる。そう、まだポジティブな気分になれる今のうちに帰ろう。引き際、すげえ大事。


「おし、やるよ~。ふかふ~か」

「あまり熱中してもダメだよ」

「え~、や~る~の~」

「はぁ……じゃボーイさん、お願いします」


 俺はさっきと同じ、10枚ちょっとを賭ける。ケチだなんだと言われてもいい。俺はただ楽しめればそれでいいんだ。なのにカーミラときたら……


「アンティ8000、ジャックポット1」

「ここに来て、また悪い癖を……!」

「ゴロ~、コイン1枚貸して!」

「好きにしてくれ、もう」

「ありがと! 1億倍にして返すね」

「ははは……はぁ」


 俺たちのベットを確認し、運命のカードは配られた。俺の手持ちは相変わらずグズであった。楽しくねぇなぁ。


「ゴロ~、これすごくない? めちゃ綺麗」

「おお、全部ハートじゃないか? 絵札も多いし……んん!?!?」

「10が邪魔だね~」

「こ、これ、おま、おま、おああ!?」

「うるさいね、ふかふか~」


 なんとカーミラはロイヤルストレートフラッシュを引いているではないか!!!!


 俺はドキドキしながらカーミラに勝負に出てくれと頼む。これは敗けの存在しない、いわば無敵の吸血鬼みたいな役だ。チラリとロイヤルストレートフラッシュの配当を確認したら、なんと100倍……! ルーレットの1点狙いより、3倍近くも儲けられる! いや、ルーレットは確か1万枚だったから、2万枚以上賭けたこれは……!?


「おら、早くしろボーイ、こっちはあったまってんぞ!!」

「ゴロ、なんで興奮してるの」

「うひゃひゃひゃひゃ、金じゃ金じゃ!」

「うわぁ、きも……ふかふか、あっちいこうね」

「あ、ディーラーのカードに役ないので不戦勝ですね。払い戻しは32000コインです」


 ……は?


「わ~、やったね、今度は勝ったね~」

「うおおおおああああああ!! お前な、さっきはストレート出したのにっ!! なんでワンペアすらできないんだよ!! う、目眩が……」

「ゴロ、なんか変だよ。もう帰ろっ」

「またのお越しをお待ちしておりま~す」


 く、なんだか意識がぼんやりしてきた。遠退く意識の中で、カーミラがふかふかを抱きしめながら冷めた目で見下してるのを見てしまった。熱中するなと言っておいて、俺がドハマりしていたようだ……


 みんなは友達が非常識なギャンブルをしようとしたら止めてあげてくれ。もしかしたら、自分の身に災難が降りかかる事になるかもしれないからな。



ボーイ「あ、ジャックポットに賭けてましたね」

カーミラ「ほえ。私よく分かんない」

ボーイ「え~と、お客様はロイヤルストレートフラッシュなので、プールしてるコイン1億枚を全てもらえます」

カーミラ「わ~、コインの海だ~。よく分かんないけどありがと~」

ボーイ(噂通り吸血鬼に関わると破滅の運命に向かうのか……俺のボーナス、飛んだよ!)


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