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対決!ドラゴン


 まず先に仕掛けたのはドラゴンだった。巨体を活かしたローリングアタックでカーミラにぶつかる。しかしカーミラはキリモミしてるドラゴンのしっぽを掴み、相手の勢いを利用して地面に投げ飛ばしてきた!


「グアアアオオオオ!!!」

「おわっあっぶね!!!」

「ゴロ~、気を付けてね~」

「お……おう!」


 ドラゴンが叩きつけられた衝撃はすさまじく、そのインパクトにビビった俺は短く返事をするだけで精一杯だ。ドラゴンがドヒューンと再び宙に上がってから、心の奥でもう少し気を使ってくれよな! という思いが込み上げてきたが、今度はカーミラが墜落してきてその思いは吹っ飛んだ。


「いっつぅ、ドラゴンめぇ~」

「だいじょうぶか!?」

「ちょっと失敬」

「あふぅ……」


 サクッと咬まれてパパッと回復して満月の空へと飛んでった。お、おれはポーションか……?


 上空では熾烈な攻防が繰り広げられている。あのドラゴンは大量のエリート兵やベテラン騎士をあっさりと全滅させた、めちゃくちゃ強い怪物だ。しかしそんな怪物と対等にカーミラは戦っているではないか。

 カーミラが翼で切りつけると、ドラゴンは火を吹いて応じる。するとカーミラは例のチリになって霧散し回避、突然ドラゴンの背後で実体化し蹴っ飛ばす。が、ドラゴンもだんだんカーミラの戦法に慣れてきたのか、無造作にテイルウィップして対応する。


 思いもよらずトリッキーな動きをこなすドラゴンに、カーミラは不敵に笑みを浮かべている。なにをやってんだか……


「おでぶさん、やるね」

「ふん、見たところ記憶を失っているな、吸血鬼よ」

「それがどうしたの」

「やはりな、だからワシの元へ来たのか!!」

「わ~、いきなり叫んでこわ~」

「しらばっくれるな!!」


 おや、なにやらドラゴンの動きが急に変わったぞ。さっきまではカーミラの攻撃なぞ屁とも思わず突っ込んでたのが、いきなり回避優先になった。カーミラの攻撃でダメージが響いてきたか?


「ドラゴンさん、私はただおしゃべりしに来ただけだよ~」

「じゃあのニンゲンはなんだ! あいつは昔、ワシを退治しに来たやつらのボスだ!」

「ゴロは命の恩人! 昔なにしてたとかどうでもいいし」

「余りに弱腰だったので情けをかけて逃がしてやったが、またワシの住み処を荒らしにきた!」

「も~、うざ」


 二人ともがんばってんな~。あ、二匹? どっちでもいいか。なんか見る分にはエキサイティングな戦いで結構楽しくなってきたぞ。カーミラ、がんばれ! エイエイオー!


「咬むよ、いいね?」

「なっ……いつの間に!」

「かぷ」

「あ、あおお……! やめてくれ!」

「うーん、うまうま。ごち」


 お!? 俺の応援が届いたのか、カーミラが咬みついたらドラゴンがヒューンと力なく落っこちてきた。カーミラもスターンと着地し、勝敗は明確となった。まさかあの、長年一つの国を脅かしてたドラゴンを倒してしまうなんて……


「グオオオオ……し、しにたくない!!」

「死ぬわけないじゃん、ちょっと血を吸っただけ」

「そうだぜドラゴンさんよ。気持ちいいよな~吸血されるの! これでシモベ仲間ですな」

「グッ……吸血鬼よ、貴様は記憶を失っているから、自分がなぜドラキュラと呼ばれるか忘れているようだな!!」

「ドラキュラ……はっ!」

「お、どうしたどうした」


 なんだなんだ? ドラゴンは死にかけてるし、カーミラもなんだか頭を抱えてうずくまってしまったぞ? 俺だけ仲間はずれにしないでくれよ、なあ。


「ニンゲンよ……あの時お前に情けをかけたのが大間違いだった……ガク」

「おいおい、死んじまったぜ!」

「うううう……」

「おいおい、カーミラさんよ!」

「ゴロ……思い出したよ、ぜんぶ」

「いきなりだな。でもよかったじゃないか。ドラゴンも倒したし帰ろうか」

「そ、そう、だね? そうね? そうだわ? そうしましょう? そうですわ……?」

「カーミラさん、返事は一回でいいぞ」


 なんだか様子がおかしい。やっぱり病院で診てもらえばよかったかな? いやでも吸血鬼を診てくれる医者はいねえよな。吸血鬼に詳しそうなドラゴンも死んじゃったしどうしたものか。


 まあ悩んでいても仕方ない。ドラゴンを倒したのは紛れもない事実なのだから、ひとまずアグニャのとこへ報告しに戻るとしよう。一度あの箱で眠ればカーミラも落ち着きを取り戻すかのしれないしな。


「歩けるか、カーミラ。怪我してるだろ、おんぶしてあげる。そうそう、血とか吸っていいからね」

「ありがと……うん、ありがと、ゴロ! やっぱ私、ゴロ好き~」

「おお?? よせよな~」

「ふかふか~、ドラゴンのウロコで飾ろ~」

「お、いいなそれ。何枚かちぎっていこうぜ」


 小さな吸血鬼を背負ってあげたら、嬉しそうにギュッと引っ付いてきた。なにを思い出したのかは知らないけど、俺はご主人様のご機嫌をとることができたようだ。


 かつて絶望しながら駆け抜けた下山の道を、今度はなぜか希望に満ちた足取りで走り抜けていった。


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