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第五話 惑星ゼノム

「つまり、ここは人類、君たちがいうところのヒュームが、何世紀も前に地球から移り住んだ惑星ってことだ。ええっと。」


「ゼノム」


 ナギの言葉を、絶世の美女が継いだ。


「そう、惑星ゼノム」


 ナギはこくりとうなずいた。なるほど、だんだん見えてきた。


 金髪の美女は、スオウと名乗った。スオウは、無知なナギにわかりやすく歴史を教えてくれた。彼女にとっては歴史だが、ナギにとってはおとぎ話のような物語だ。


 曰く、かつて地球と呼ばれた青く美しい星があり、そこは生物の宝庫だったと。だが、人間同士が争いに争った結果、大地は汚染され、生き物の住めない世界になってしまったのだとか。争いから逃れた人類の祖先たちは、巨大な宇宙船にあらゆる生き物を乗せて宇宙を彷徨う旅に出た。そして、この惑星ゼノムにたどり着いたのだと。


 ノアの箱舟みたいだ。となると、宇宙船に乗れる生物の選別なんかもきっとされたのだろう。ナギはふと、家族や友人のことを考えた。


 無事ならいいけど。。。全く現実感がない。壮大な彼女の大風呂敷に包み込まれている気もする。と言うか、そうであって欲しい。これが、壮大なドッキリであって欲しい。もう少ししたら誰かが種明かしに来て、父親に、遊びは終わりだから早く学校に行けと面白くもない顔で言って欲しい。


「何十年もかけてたどり着いたゼノムは、人間が生きるのに適していなかった。だから、多くの人間が死に、逆に宇宙船で連れてきた多くの生物は繁栄を極め、様々な形に進化した。人類は生き残りをかけて、それら多種多様な生物の遺伝子を体に取り込み、この星に適応しようとした。」


 まるでホムンクルスだ。


「ヒュームの祖先たちは、取り込んだ他の生物の遺伝子によってこの星に対応し、さらに知能を持った生命体に進化した。中には、取り込んだ生物の遺伝子が強く外見に出る者もいた。」


 それが、さっき見たトカゲ人間らしい。というか、ほとんどのヒトは外見がヒトとは程遠い生き物に成り果ててしまったのだという。


 あまりに現実離れした話すぎて、途中からナギの頭は付いて行けなかった。ただ、だんだんわかってきた。だから、さっきのようなトカゲ人間が普通に存在するのか。


「原子の人間に近い姿形をしているのは、私や、父のギュスターヴのような貴族だけ。私たちはそれを、ヒュームと呼ぶ。」


「へぇ。」


 え、ちょい、ちょい待ち。今、貴族って言った?


「つまり、君はお姫様なんだ?」


「違うわ。私は王族ではない。でも、特権階級ではあるわね。ただの貴族よ。」


「へぇ・・・。」


 スオウはこともなげに言うけど、すげえ。


 本物の貴族に会うのって、初めてだ。いや、初めてです。はい。


「あなたってば、とっても珍しい存在なのよ?」


 そうなの?


 俺ってば、一般的な、超平凡な高校生なんだけども。


「今では、純粋な人間は死に絶え、この星に生き残っているのはみんな、遺伝子構造的にはヒト以外の生き物を含んだものたち。王侯貴族たちは、いや、この星で生きている誰もが、より人間に近い存在こそが尊いと思っているわ。かつて、神は自分の姿に似せて人を想像したと信じられているから。」


「つまり、俺こそが神だと?」


「え?」


 スオウがきょとんとした顔で俺を見つめている。


「やばい」思わず声に出た。


 やばいやばい、スオウが変な顔で俺を見ている。


「そなのかもしれないわね。あなたが本当に地球人なら。」


「いや、今のは冗談で・・・。」


「でも、」と、スオウは鋭い視線をナギに向けた。


「どんな理由があるにせよ、尊い地球を愚かな戦いで滅ぼしてしまったのよ。あなたたちは。」


「そう・・・、だよね。」


 なぜか罪の意識が芽生える。身に覚えのない出来事に懺悔するなんて変だ。でも、、、


「まあ、私もその人間の子孫なんだけど。ね。」


 スオウは一転、ニコッと可愛らしく笑った。


「つまり、ここは、未来の世界ってことか」


 現実味は全くないが、今は、彼女の言葉を疑う余地はない。まるっと信じることもできないが、とりあえず、彼女の信用を勝ち得たい。それが、ここから脱出するただ一つの方法だ。

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