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第四話 混乱

彼女が戻ってくるまでの数時間は、本当に長く感じられた。


 何しろ、狭い狭いカプセルの中では、何もすることができない。することがないので、唯一自由に動く頭が思案をやめてくれない。思考がぐるぐると頭の中を回転する。それらは大抵、よくない考えだ。自分は売られて、これから奴隷になるのかなとか、なんで捕まってんのかなとか、なんで捕まる前の記憶がないんだよとか、自分の考えが、どんどん自分の心を不安にさせて行く。


「クソ、いっそ眠りたい」


 でも、全然眠くない。


 頭はクリアだ。頑張っても眠れそうもない。


 そうだ、カプセルから出る方法を考えよう。


「あ〜、早くあの子、戻ってこないかな〜」


 可愛かったな。本当に。


「戻ってこーい!」


「呼んだ?」


 唐突に彼女が現れたので、ナギは思いっきりガラスに頭をぶつけた。


「痛って!」


「ごめんごめん」


 彼女は快活そうに笑い、顔の前で手を合わせた。合唱。てことは、見た目は外国人だけど、やっぱり日本人なのかな。


「ハーフとか?」


 やばい、思わず口に出た。


「ハーフ? そう、私はハーフよ。」


 彼女は長い金髪の髪をかきあげ、長い耳があらわになった。尖りすぎじゃないその耳?


「見た目は完全にヒュームだけどね。」


 彼女は顔の前で右手を天に向けた。と、その手の中で炎の渦が巻き起こった。


「え!?」


 なんじゃそりゃ! びっくり人間かよ!


「私は炎のエルフと氷のエルフとのハーフ。見た目はヒュームだけど。」


「それって魔法? それにエルフって、、、」


 そんなのアリかよ!


 ここは日本なんかじゃない。間違いなく、日本じゃない。てゆうかそもそも現実なのかこれ。


「魔法は珍しい?」


 彼女はなぜか鋭い目をナギに向けた。この国では、いや、この世界では魔法は普通なのか? 無知が男は嫌いよって、そう言うこと?


「珍しい、と言うか、初めて見た。と言うか。。。」


 存在自体信じてませんでしたよええ。だってそうだろ? 高校生にもなって、魔法を真面目に信じているやつは、確実に白い眼で見られる。それか、面白がられて、、、いや、どちらにしろ、クラスからは浮きまくる。俺にはそんな覚悟も思想もない。なかった。


「あなた、もしかして、本当に、正真正銘のヒュームなの? どこからきたの。」


 彼女は少し興奮したように、両手でナギの入っているカプセルのガラスをつかんだ。興味津々だ。まるで、絶滅危惧種の大山椒魚を見つけた子供みたい。って、それは俺の子供の頃の夏の思い出だった。


「えっと、俺は・・・。」


 どこからきたって言えば良いだろう。


「東京、です。日本の。東京。」


 思わず敬語になってしまう。


「東京? 日本? それってどこの国?」


「えっと。。」


 やばいこの子、何も知らないの。いや、きっとこの場合は、俺の方が何も知らないのだろう。だっておそらく、ここはこの子の国だから。


「日本は国の名前。東京は、その首都の名前、かな。」


「トウキョウ・・・。初めて聞くわ。それって、どこの星にあるの?」


 どこの星も何も。。。人間が住んでる星が、そんなにいくつもあるわけがない。


「えっと。。。地球だけど。」


「地球!」


 彼女は静かに息を呑んで、そのまま動かなくなった。


 え、どうしたの。大丈夫? 驚きたいのはこっちなんだけど。


 静かに、しかし、確実にナギの脈拍はスピードを増していく。


 整理するに、つまり、


「もしかして、ここは地球じゃないの?」


 こくり。


 彼女は小さく頷き、呟いた。


「宇宙人だ」

 

 え? いや、違うよ。いや、そうだけど。宇宙人だけど。え? それって俺のこと?


「違った。御免なさい。あなたこそ、本物のヒュームなのね」


 ナギの頭は思いっきりこんがらがった。

 

 誰か、説明してもらえませんか?

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