泣き虫ゆえに泣き虫
応援おねがいします
読んでくださる方に感謝を
はてさて、昨日ログアウトしてから何があったかなんて目の前のすんげーリアルな竜さんを見れば察しはつくんだけど……
とりあえず撤退して兎の姿で温泉に入ってると、マザーと中級精霊がやって来た。先輩ちーす
やれやれといった感じで温泉に浸かるパイセン。のんびりしてていいんすか? はあ、アレはどうにもならんと
マザーも困った顔して溜め息ついてる。解決法としては3つ
討伐する
移動待ち
外部からの討伐
わたしの選択は待ちしかないような気がする。ワールドアナウンスで妖精郷の存在はプレイヤーたちに認知されたようだし、ドラゴンと聞いて血が騒ぐ人たちもいるんじゃないかな
となれば、せこせこレベル上げをするまで。せめて10くらいには上げておこう
───
目標のレベルも達成し新たなる技も作ってみた。スキルではないので完全オリジナル
その名も【ヘッジホッグ】! 要は身体を石にしてゴロゴロ転がるだけなんだけど、同じく石の突起を無数に出す事によってハリネズミのごとくダメージを与えるのだ! 回復させるライトヒールとフラッシュっていう目眩ましの魔法も覚えたよ
さて、頭を切り換えてっとドラゴンはどうなったかな。結果、どうもなっとりゃせんがな
妖精郷を一望できる丘に登って、見下ろせば居眠りしてやがったよ。何か情報ないかと調べてみたら挑んだ人がいたみたい
「無理ゲー」だの「倒せる気がしない」等と消極的な言葉が並ぶ。トッププレイヤーと言われる人たちでさえこれだ、先が見えないや
丘の上で独り溜め息をつく。何でこうなるかなあ、わたしって運が悪いのだろうか。それとも分不相応な買い物をしたからバチが当たったのだろうか。空を見上げれば2匹のモッフリャーたちが楽しそうに飛んでいる
「いいなあ。わたしも友達作って一緒に遊びたい……グス」
寂しいよう、つらいよお。もうゲーム辞めようかな……
ポシェットさんにフレンド申請が届きました!
え? え! なに? だれ? はい! イエス!
「あーねー!」
え! この声、この呼び方。もしかしてえええ
黒い綿毛玉がフワフワ飛んできて、ぽふんとぶつかってポテっと落ちた。地面をコロコロと転がって、わたしの側を回りだす
「あね、来たよ」
「ひーちゃん? ひーちゃんなんだね!」
「そーだよ。あね、一緒に遊ぼう」
なんという幸福感。しかも名前は【ポーチ】わたしに合わせてくれたんだよね
しかも同じ精霊さん! ひーじゃない、ポーちゃん。カワイすぎる!!
「本当は、もうちょっとレベル上げてから会おうと思ってたけど、あねが……」
「ん?」
「あねが泣いてたから」
何で知ってるの。え、球イスちゃんの外部出力からテレビに繋げて見てたって?
そ、そうなんだ。じゃあ遊びに来てたのね、ゴメンねゲームしてて
「それにしてもゲームは殆んどしなかったのに。興味が湧いたの?」
「あねと、一緒にゲームしたかったから」
このカワイさよ
もうね、この時はドラゴンの事なんかスッキリ忘れてたね。嬉しくて嬉しくて
あ、また……
「あね、また泣いてる」
称号【泣き虫】 獲得!
ちょっと待てい! なんちゅう不名誉な称号。恥ずかしくてフィールド歩けんわ
「あねどうしたの?」
「あ、あはは。ちょっとね、変な称号が……」
「?? それより遊ぼう。レベルも上げたい」
「うん、そうだね。遊ぼう!」
それから2人で森を探険したり戦ったり転がったり温泉に入ったり、わたしのお気に入りの場所に案内したりドラゴンに石ぶつけてトンズラしたりしてたくさん遊んだ
その時に聞いた話しによると球イスちゃんを買ってもらったらしい。うらやま
「進化できるみたい」
ポーちゃんがそう言った。宝珠はポーちゃんに全部、使ってたのでレベル上がるの早かったね
本来ならレベル10で進化なんだ。ポーちゃんの進化先は──
邪精霊
……どうもね、ポーちゃんは課金ガチャで【闇魔法】を引き当てたらしい。戦ってる時も使ってたんだけど、わたしのライトアローが霞むくらい強いの
闇魔法の威力を上げる進化先がコレなんだって
「あね、私も兎さんになりたい」
お、そうだね。カワイくしちゃうよ
物質変化先生、お願いします。わたしと同じ大きさで黒毛、金色の目をした兎さんになりました
ポーちゃんは頭に葉っぱを乗せるとポンッと元の綿毛玉に戻ってみせた。なにそれ?
モンスタースキルで【変幻自在】と言うらしい。わたしの【物質変化】との違いは質量に関係なく変身出来ること
つまり条件さえ整えばドラゴンにもなれるらしいんだけど……
「今は無理。むこうのレベルが高すぎて【看破】出来ない」
今度はモッフリャーに変身してパタパタ飛んでる。看破というのは鑑定の上位スキルなんだって
ポーちゃん有能すぎない? 他にも条件があるらしくて現状では、わたしが変化させて自分を看破したほうが楽らしい。わたしも取り込んだ方が早いしね
そんなこんなが有りまして、いろいろ疲れた黒と白の兎2羽で温泉に浸かっとります
「あね、これからどうするの?」
ポーちゃんが聞きたいのはドラゴンの事だろう
「えーと、ひたすら待つ……かな」
「うそつき」
邪精霊ちゃんの金色に光る瞳が、わたしの心を見透かしたのではないかと思った
「あね、何かする気でしょう? 私にはわかるよ」
やー、まいった。実は考えてる事があるんだけど確実な方法が見つからないんだよね
「あねに考えがあるように、私にも策がある」
ん?
「あね、お願い聞いてくれる?」
ポーちゃんの頼みを断るなんてあり得ないよ。イエス1択っす
「私を進化させて」
真剣な眼をしてポーちゃんが頼んできたのは、わたしが持つ進化アイテムを使うことだった
みんなの妹、ポーちゃん登場!