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待ってくださっている方にさらに感謝を

「だって、わたしはプレイヤーだもの」

 その言葉は私の存在を深く(えぐ)る。ミカのとなりに、私ではなく彼女が居続けるという宣言

 では、私はどうなる?


「お前は、もう必要ないよ」


 そうか……それがミカの答えか。いつまでも人でないモノが側に居ては困るか


「消えたいな……」

「じゃあ、消えろよ」

 そうだな、もうこの手を離して何処かに行きたい。いっそ、この身を消去(デリート)するのも良いか

 そうだ、早く手を離そう。そうすれば少しは気が楽になるのだろうか、でも何故か手は離れない

 決心して、ちからを込めて振り切ろう。う、うう……さようなら、ミカ


『こんのぉ! あほんだらああぁぁ!!』

「ぎゃほお!」

 何かが私の、みぞおちに飛び込んで来た。クリティカルヒットして相当なダメージを食らい、咳き込んでしまう

「ゲホッ、ゴホッ。ハアハア、何これ? 金色のまんじゅう?」

『そのネタは、もういいっつうの! いい加減、目ぇ覚ませボケぇ!!』

 目の前で暴言を吐くのは、金色の光兎ことスクルド。ん? あれえ? じゃあミカに抱きついているのは誰?

『こんな、チンケな幻覚に惑わされやがって。元魔王の肩書きは、どうした? ていっ!』

 そう言って金髪の女に体当たり。のけ反った女は霞みの様に消えてしまった

『ほれ、戻ってこいや』

 どうやら私は幻覚に惑わされたらしい。なるほど、理解はした

 だが……だがな、このまま目を覚ましたとして今までの様に振る舞えるか不安になる

 言葉にするなら絶望を知ってしまったのだ。もう立ち上がるだけのちからが湧いてこない


『お前よぉ。戦闘前にミカは、なんつってたよ? それに対して、お前はなんて答えたよ?』

 ミカが何を言ったかって? それは……『この手の先にはボクが居る、絶対に味方だから信じて』それに対して私は『信じる』と答えたはず

『肝心の所を抜かすんじゃねえよ。ミカは何が起こってもって言ってただろうが、そこにはこの先の未来の事も含まれてるんじゃねえのかよ』

 スクルドの言葉は乱暴だが、そこに何故か慈しみを感じる。なあ、私はどうしたら良いんだ?

『もう分かってんだろ? その小さい手を互いに握ったときからな』


 手……小さい? ハッとした。見えている姿は大人なのに、握っている手は子供の大きさだ

 そうか、この先に本当のミカが居るのだな。帰ろう、暖かいあの場所へ

 だが、その前に疑問を晴らしておこう

「スクルドよ、貴様は何者なのだ?」

『フフ……それは言わぬが花よ。のう、ファラやんよ』

「そうか……すまぬな」

 何故、詫びたのかは分からぬ。だが、これで正しい気がするのだ

 さあ、ファラ・ゲアラハの復活じゃ。この落とし前、きっちりつけさせてもらうぞ


「おかえり、ファラ」


 ああ、ミカが居る。余の見下ろした先に……あれ?

 ん? ああ! 

「余、元に戻っておるー!!」

 原因は分からぬが、子供の姿から元の大きさに変わっておるではないか。ちからも若干ではあるが、戻っておる


「ねえ、ファラ。ボクは怒っているんだよ」

「え? ご、ごめんなさい」

 そ、そうじゃった。信じると言ったのに、目の前で醜態をさらしてしもうた

 怒るのも無理からぬ事じゃ

「そうじゃないよ、ボクはファラを泣かせたやつに怒ってるんだ」

「え?」

 余は泣いていたのか? 顔をさわると、確かに濡れたあとがある。これが泣くという事か、そうか泣くというのは辛い事なのだな

「赦さないよ、絶対に」

 ミカの静かな怒りが、熱い炎の様に余に伝わってくる  


 バトルアナウンス:条件を満たしました。称号【闇の貴公子】が【魔王の因子】へと変化します。これにより新たなる魔王の資格を得ました、ちからの解放を始めます


 ちょ、ちょっと待て! 闇の貴公子はミカの称号だったはず、プレイヤーが魔王の資格を得るとか本当に良いのか!?

 余の心配をよそに、ミカは光に包まれ、成長し大人の姿へと変わる。苦い思いがよみがえるが、ミカの目は優しいままじゃった

「うわっとと、大きさが違うとバランスが難しいや。すぐに慣れるかなあ?」

 急に大きくなったゆえに、身体のバランスが取れず歩くのにも苦労しておる。そっと後ろから支えると、ミカの()()()が顔に当たる

 輝くような笑みはそのままに、金色の髪は腰の辺りまで伸び凛々しさをも備えた美男子(イケメン)のアバターじゃ。それだけに美しかった白い翼が惜しまれる


「ミカよ、翼が……」

「え? あ、黒くなったんだ。お(そろ)いだね」 

 余にもコウモリに似た羽があるのじゃが、やはり黒い。翼の様に美しくはないので普段はしまっておるのだ

 その羽と揃いと言ってくれるか。思わず顔が熱くなる


「さあ、行こう」

「ああ、行こう」

 あなたと共に


 小さく交わした 約束は

 未来に託す 道しるべ

 大きな空に ふたつ 飛ぶ鳥

 永遠(とわ)に 遊べ

 たとえ 片翼 落ちるとも

 繋いだ 絆は

 温もり 忘れぬ 心の羽


 強く握った あなたの手は

 偶然 出会った 運命(さだめ)の道

 怖れる未来は いつか 迫り来て

 無限に 巡る

 たとえ この先 離れるとも

 繋いだ この手は

 あなたに 通ずる 迷路の糸


 三日月の(つるぎ)で 断たれるのなら

 闇のとばりで 覆い尽くせ

 決して 告げられぬ 言葉と共に 


 ───


 敵の正体は(しん)と呼ばれる龍じゃった。その龍はかなりの強敵であったが、余とミカのふたり

 そして正気に戻ったプレイヤーたちによって討伐された。戦闘が終了すると、余とミカは再び子供の姿へと戻っておった

 魔王としてのちからも消え失せ翼も白くなったミカは少し残念そうな顔をしておったが、発動条件を探ると意欲を燃やしておった

 

 プレイヤーたちが祝賀ムードに包まれる中、余はひとり本拠地の屋上で風に吹かれている


「なーに、してんのよ?」

「……姉御前か」

「誰が姉よ、ってもういいわ。ミカに付きまとうのは止めたの?」

 付きまとう……か。少しだけミカに似た姉御前の顔に嫌味は無い

 少しだけ、少しだけで良いから話しを聞いてもらおう

「姉御前よ、余はこのゲームが終了すれば消える身じゃ。しかしな、しかしそれはイヤだと思える様になってしもうた」

「へえ」

「原因は……ミカなのじゃ」

「……あんた、それって」

「なあ、どうすれば良い? 告げてしまえばミカも苦しむじゃろうか?」

 涙がこぼれて止まらぬ。こんな顔を見せるつもりはなかったのじゃが

 不意にルキは余を抱きしめた。いつもの強い光をもった瞳は少しだけ潤んでおる


「多分、ミカは気付いてる。あの子は勘が良いの、もう苦しんでると思う」

 ルキの言葉は衝撃を持って余を貫いた。もしかして苦しんでいない振りをしていたのか

「気付いた事を知られたら、あんたが苦しむと思ってるんでしょ。まったく似た者同士ね」

 ふたりして同じ事を考えていたと言うのか? 本当にそうなのか? だとしたら

「余はどうすれば良い?」

 もう一度、同じ問いを投げかける


「分かんない!」

「え?」

 乱暴に言い放ったルキは余の顔をジッと見る

「分かるわけないじゃない、私たちはまだ子供だもん! だけどね、だけどね……うう、ぐす」

 さらに瞳にちからと涙を蓄えルキは言葉を続ける

「ミカは男の子だから泣かないし、私が姉として泣かせない! だからね、だから私が一緒に泣いてあげる……うわああん」

 

 さらに余を強く抱きしめ、姉は泣く

 同じ様に余も声を上げて泣いた

 ミカの代わりに泣いておるルキの涙が

 余の心に染み込んでゆく

 

 

 この時だけは

 本当の姉妹になれた気がしたのじゃ

 


ルキの言葉「分かんない!」は作者の言葉でもあります

このふたり、どのような結末にしましょうか。皆様、ご意見があればどうぞ

しかし、そこまで作者は書き続ける事が出来るでしょうか?

ルキ「分かんない! けどやれ」


はい、努力します(保証はしない)

では、また


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