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ヒートソウル!

さて、毎度おなじみ虫食い回です

苦手な方はご注意を


ブックマークや評価ポイントなど応援よろしくお願いします

読んでくださる方に感謝を

待ってくださっている方にさらに感謝を

「のじゃああああ!!」

「何事ですの!? ドリヒレオグ?」


 エンチェンとリュケの戦いを覗いていた竜族2体だが、突然に叫びとも悲鳴とも言える声をドリヒレオグが上げた

「弟子が怒ってるのじゃ~。怖いのじゃ~」

「はあ?」

 訳が分からないという顔のグローファリガに、2人の弟子が映る水晶球を指差す

「あの顔を見るのじゃ~。絶対に怒ってるのじゃ~」

 どうやら水晶球に映る、エンチェンの顔色を読んだらしい。短い付き合いの間柄だが怒らすとどうなるかは、よく知っている

「アソコとか、アソコを剥がされて売り払われるのじゃ~。スキル習得に何時間も拘束されるのじゃ~」

「自業自得よね」

 自らのことは棚上げにして、グローファリガは騒ぐ火竜を放置する。戦闘は佳境を迎えようとしていた


「あら、勝った」

「のじゃ!?」

 氷棺(アイスコフィン)の発動によりリュケの勝利である。この魔法によるコンボはグローファリガの直伝だ

「……なんじゃ、まだ終わっとらんのじゃ」

 映し出される光景は、エンチェンが不死鳥の炎により復活しているところだった。これにはグローファリガも、口あんぐり

「なにそれ! 卑怯よ、死亡が無効になるなんて! ズルいズルい!!」

 今度は水竜が騒ぐ番である。珍しい事に眠たげな目が開き、吊り上がっている

「別に卑怯ではないのじゃ。ちゃんとスキルとして確立しておるのじゃから」

「き~~!!」

「それよりなのじゃ」

 青筋立てて怒っているグローファリガに、ちょっとこれを見てみろと水晶球へ手招きする


「あらあら」

「また、面倒な事になりそうなのじゃ」


 ───


 ああ、おなかがすいたなあ

 とげとげのみどりも、おいしいけど

 すこし、あきちゃった

 なにか、たべれるものないかなあ

 そういえば、おそとがうるさいな

 なんなんだろう? おや?


 ……あれ、おいしそう──



 ──さて、こちらは弟子たちが戦っていた場所。2人の決着の行方はどうなったかと言うと……もぐもぐタイム中であった

 不死鳥の炎はすべての状態異常を癒すが、強化されたステータスまで元に戻してしまう。そのため食事による、ステータスの強化(バフ)を企てたエンチェンである

 リュケに断られると思っていたが、あっさりと休戦に応じてくれた。そのリュケも食事をするようだ

「それ……おいしそう」

「ん? これかい?」

 エンチェンが食べていたのは自作のフルーツサンドである。色とりどりのフルーツが挟まれたサンドイッチは、見た目にも華やかだ

 一方、リュケの方は店で売られている携帯食である。これはゲーム開始から用意されていた物で、プレイヤーならば1度はお世話になるアイテムである

 値段も安く、そこそこ回復も出来るため持ち歩くプレイヤーは多い。ただし味は最低……ということもなく、どちらかと言うと味が無い

 棒状のクッキーの様な形で、食感はモソモソである。そのため、あるていど稼ぎが出たなら料理職人が作る食べ物を購入するようになるのだ

 もちろん味に拘りが無ければ優秀なアイテムなので、高レベルプレイヤーも使用する息の長い商品である


「食べるかい?」

 自分が食べるより、他人に食べてもらうのが好きなエンチェンである。戦闘をした間柄ではあるが、料理を食べてもらう事に関しては敵味方の概念は取り除かれている

「お、おいひいいい!」

「そりゃ、何より」

 夢中で食べるリュケの姿に微笑むエンチェン。そんな穏やかな雰囲気が2人の警戒を緩めていたのかもしれない 


 ドッザザザアアア


 急に足下の砂が盛り上がり、2人は空中へと放り出される。砂の下から巨大な何モノかが現れたのだ


 砂漠ムカデ(デザートセンチピード)

 通称、砂潜りと呼ばれる巨大なムカデである。プレイヤーの足下から不意討ちで出現し、2本の牙で相手を切り裂く砂漠の門番

 硬い甲殻と素早い動きを持つ、なかなかの強敵である


「むぐ!」

 着地と同時にエンチェンの視界は、水色と白色の縞模様に彩られた。それと同時に後頭部から後ろへと倒れ込んでしまう

「ご……ごめん」

 リュケのお尻からの着地ダイビングヒップアタックを顔面で受け止めてしまったのだ。この時ほど頑強な竜人であることに感謝をした覚えはない

「やれやれ、普通なら首が折れて死亡状態だよ……で、何で見えるの?」

「こ……これは……水着なの」

 エンチェンが言及しているのは下着の事である。通常、このゲームでは絶対に見えない仕様になっている筈である

 だが夏の浜辺イベントにおいて開放された水着を着用すると見えてしまうようなのだ。()(この)んで着用する者は稀だが居ないわけではない

 リュケは、その珍しいプレイヤーの1人なわけだが理由が有りそうだ

「み……水魔法……に……都合が……良いの」

 どういう訳か、水着着用中だと水魔法の調子が良いらしい。具体的にはクリティカルが出やすかったり、消費MPが少なくなったりする

 何か意図が有って仕組まれた物なのか、それとも只の気まぐれなのかは分からない。今のところは極一部のプレイヤーだけが知っている、隠し仕様である


 呑気に、こんな話しが出来るのも2人には砂漠ムカデなど敵ではないからだ。その証拠にムカデは2人を警戒したまま、動けないでいる


 そして油断は更なる脅威を呼び込む


 砂の中から、またもやモンスターが現れたのである。しかも複数

 1匹ずつはムカデより、かなり小さい。その姿を見たエンチェンは興味津々であるが、リュケは嫌な顔を浮かべる


 砂漠芋虫(デザートキャタピラー)

 普段は巨大なサボテンに生息しているため、サボテン虫とも呼ばれている。巨大蛾の幼生体であり主食はサボテンなのだが、その強靭な顎で目に着く動くもの全てに食らいつく暴れん坊である

 派手に暴れる竜人たちに反応したのだが直接、襲って来たりはしない。その知能は高く狡猾であり、特殊な能力を駆使してくるのだ


 ──かみつけー!


 1匹の芋虫から、指令が出された。目標はムカデである

 次々と、その強靭な顎で硬い甲殻に食らい付いていく芋虫たち。嫌がるムカデが暴れるが、決して放さない


 ──ほうしゅつ、かいし!


 芋虫の口から、ある物質がムカデに注入される。これはサボテンが持つ物質で、あらゆるモノを巨大化させるのである

 砂漠に生えるサボテンは、この物質を作り出す事で巨大化したのだ。当然、それを主食とする芋虫たちも大きくなる

 元は人間の指先ほどの大きさしかなかったのにだ。そして、身体に蓄えられた物質は他者に与える事が出来る様に進化した


 芋虫たちから強制的に送られた物質により、ムカデは更に大きくなっていく。あちこちに芋虫をぶら下げ、のたうち回る姿は異様である


 ──いっけー!!


 そして、この芋虫の特徴が、もう1つある。それが狂乱毒である

 これを注入されたモンスターは暴走状態になり、敵を倒すまで暴れまわる。その後は芋虫たちに食いちぎられて終わりである

 寄生した宿主自身と、それが倒した獲物という2つの食糧を得る実にズル賢い生態をしているのだ


 さすがに、この暴走巨大ムカデは竜人でも手に余る。とりあえずは、逃げの一手である

「こいつは、手強いね」

「隙……が、無い」 

 小さな攻撃では弾き返されるため大技を放ちたいのだが、常に暴れまわっているため隙が作れない。仕方なく細かい火線をぶつけてみるが、ムカデにはまるで効いていない


 ジュッ


 焦げ臭さが辺りに漂う。ムカデには無意味な火線も芋虫には有効なようだ

 これは発見である。もしかしたら何か解決策が見えるかもしれない

「ちっ! 当たりゃしない」

 ところがムカデが身体を使って芋虫を守り始めたため、当たらなくなってしまった。リュケも水魔法で援護するが、効果は期待できそうにない


「しゃあない。あれ、使うか──チン!」

 エンチェンが行使したのは空間を指定して発動するスキル、通称『レンジでチン!』である。空間内を行使者の指定した温度にする事が可能で、一気に加熱させ標的自身を爆発させる事も可能だ

 エンチェンは料理に便利なスキルと思っているようだが、実際は恐るべき攻撃スキルである

「チン! チン! それチン!」

「先……輩……チ○チン……って」

 ポッと顔を赤らめるリュケ。それにつられて赤くなるエンチェン

「ち、違う! 変な想像するな! ああ、もう」

 欠点は単体攻撃である事だろう。改めて自分が、恥ずかしい言葉を連呼している事に気付かされる

「仕方ないだろ! これが一番効果的……うん?」

 エンチェンの鼻に芳ばしい匂いが入り込んでくる。どうやら焼かれた芋虫たちから漂って来ているようだ

 通常モンスターは倒されると、経験値となる宝珠とドロップアイテムに変わる。ところが、そうでないモノも存在し素材アイテムとしてそのまま残る事があるのだ

 芋虫たちは、その素材アイテムらしく消えずに残っている。しかも美味しそうに匂いを漂わせながら

 ただ、その芳ばしさはまちまちである。美味しそうに焼くには温度の見極めが必要そうだ

 戦闘中に、そんな手間は不可能だろう。せっかく面白い素材を見つけたのに残念だ


「ああ、どうにかならないのかねえ。料理職人として悔しいよ」

 悔しい、悔しい。ホントに悔しい

「あー! 何のためのスキルだい! これだけたくさん習得しても肝心な時には全然、ダメじゃないか!」

 

 久し振りに味わう無力感。そこから這い上がろうとする熱量は新たなスキルを呼び起こす


 バトルアナウンス:条件を満たしました。称号【温もりの絆】により新たなスキルが発現します。あなたが抱いた感情をもとにスキルを構築、その名は──


「分かる、分かるよ!」

 芋虫1匹、1匹に表示される数字。それは最高の味を引き出す適温である

 しかも複数を標的に(マルチロックオン)出来たのである


 

 ここで立ち止まるのかい?

 どうしようもない 壁さ

 あなたは 平気な態度で 軽くぶち壊す

 差しのべられた その手は

 熱い血潮の 証し

 ヒートソウル! 燃やし尽くせ

 ビートソウル! 魂、揺らせ

 情熱なんかじゃ 生ぬるいさ

 この身が 焦げ付くほどに 


 揺らめく 炎掲げ

 煌めく 未来目指す

 あなたを 追いかけて 翼が千切れ飛ぶ

 悔しさ覚えた その心は

 赤い血潮の 宿命

 ヒートソウル! 食らい尽くせ

 ビートソウル! 魂、震わせ

 燃える火柱 閃光になる

 この身を 焼き尽くせ 



「【火加減・極みヒートコントロール・アルティメット】」


 全てが、焼き芋虫と化した。ボトボトとムカデから剥がれ落ち、地面に転がる

 ムカデは巨大化の反動なのか、縮まって動かなくなった。もはや勝利者は誰なのか明らかであった


 エンチェンは転がる芋虫を1つ掴むと、躊躇いもせずにかぶり付いた

「うまーい! これ焼き芋だよ。チーズを乗せてグラタンにしようかな」

 その様子を見ていたリュケも1つ取ってみるが、なかなか勇気が出せないでいる

「それ食べれたら、あんたの勝ちでいいよ」

「ぐ……むむ……うー」

 躊躇いまくっているリュケを見ながら、さてどうやって師匠のウロコを剥がしてやろうかと思案するエンチェンであった


「む……むりいいいい!」

「アハハ」

途中で「あ、リュケ視点にすれば良かった」と思いましたが、あの口調では無理という結論になりました


早く秋らしくならないかな

では、また


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