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泣き虫のチーム崩壊の危機

新章突入です


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「て、撤退だー!」

「くそう、またか!」

「諦めるな! ベースまで急げ!」


 レイドバトルが始まりました。しかし……


「わたしたちも逃げよう。みんな無事?」

「生きてるけどマズイよ、リーダー」

「もう、このエリアはダメです。離脱しましょう……」

「さすがに、わしも同意じゃ」

「ですね~」 


 現状は、この有り様です。先ずは今回のイベントについて説明します

 このレイドバトル、ボスを倒して終わりという単純な物ではありませんでした。そこまで辿り着くのが困難なのです


 参加を希望すると自動的にサーバーを振り分けられ、ベースキャンプに飛ばされます。パーティーを組んでいないと同じサーバーになる確率が下がるので、フレンドさんたちと一緒に遊びたいなら注意が必要です

 ただし結構な人数でモンスターとの乱戦になるため、いつもと同じ様に戦闘は出来ません。こういう時、少人数チームは不利なんですよ


 ベースキャンプを出発し、エリア最奥に居るボスを攻略するのが目的なのですが、かなり広いマップに加えて徘徊(ワンダリング)モンスターが手強い。姿形は通常フィールドにいるのと変わらないのに名前の後に(強)が付いてるんじゃないかってくらいパワーアップしてる


 しかも組織だって行動するもんだから下手に突っ込むと返り討ちにされる。向こうにも指揮官が居るのか奇襲されたり伏兵に襲われたり罠を設置されたりと、まるで戦術ゲームである

 手強いからと全員で出撃したらベースキャンプが陥落し、即ゲームオーバー。つまり守備隊も必要なのだ


 大人数チームなら役割を分担出来るし、指揮系統も一本化されて組織的に動ける。死んだらイベント離脱しない限りベースキャンプで復活するので、回復して前線へというゾンビアタックも可能だろう


 それが出来るチームは大体、身内で固めたレギオン構成で挑んでいるから入り込む余地は無し。仕方なく少人数同士の混成部隊になるんだけど当然、連携なんて無理

「おい、勝手に攻撃するな!」

「なんでだよ!」

「タゲが移るだろうが!」

「何だよ、それ?」

「ちっ、素人が」

「なんだと!」

「やるか!」 

 これである。ね、少人数チームは不利でしょ

 

 気に入らなければ無言で離脱するわ、範囲攻撃で同士討ち(フレンドリーファイア)するわ、散々である。せめて実力者か、カリスマプレイヤーが率いてくれないかなホントに


 何? どうしたの、みんなで見つめて。あ、わたしは無理だよ

 戦闘の決定打は自爆だから巻き込むし、大して慕われているわけでもないし

「謙虚なのは美徳って言うけど、無自覚は何て言うのかねえ」

「ポーチお姉さんが居たら、的確なツッコミが入るんですけど」

「これで肝心な所ではキチンと締めるから文句も言えんのじゃ」

「ですね~」

「ハア~」溜め息×4

 

 ……そんな事言われても、無理なもんは無理だい


 人間て見ず知らずの他人から指示されると腹が立つみたい。その人が正しい判断をしていたとしてもね

「指示なんかされたら楽しくねえんだよ!」

「指示厨タヒね」

 おお、怖い


 それは、さておき『回復薬が無くなったので離脱します。爆弾はベースに置いておくので使ってください。お疲れ様でした』っと。理由を言えば納得してくれるだろう

『おつかれー』

『乙、また機会があれば』

『爆弾、助かります。お疲れ様でした』

 どんなにピンチでも挨拶を忘れない日本人。しかも割と礼儀正しい返事が来る

 お互い顔が見えてるからね、次に会ったら気まずくならないとも限らない。別れの挨拶は過剰なくらい丁寧にしておいた方が良い

 まあ、ケンカして離脱した人は罰ゲームだと思って針のムシロに座りなさい。仲裁まで面倒見れんわい




「やれやれ、前途多難だねえ」

 エンチェンさんの声が響く、チームハウスの会議室。2つ席が空いたテーブルには仲間たちが重い空気を纏って集っている 

 何か対策をしなければ進まないのだが何をすれば良いのか、わたしの頭では考えつかない。頭脳戦は、ここに居ないポーちゃんが得意なのだ

「先ずは問題点を洗い出しましょう」

 もう1人の頭脳担当、ミカ君が提案してくれた。小学生に頼るのかって? だってホントに優秀なんだもん、適材適所


「防御力については問題無いと思います」

 ミカ君の言う防御力とは盾職(壁役)の人たちの事で、個人の硬さではない。あの人たちは後ろに居るのが誰であろうとも守ろうとする、熱い魂の持ち主なのだ

『我が前に脅威あり、我が後ろに憂い無し』

 この合言葉、その前ではチームの垣根も関係ない。守りたいから守る、そういう(こだわ)りが有るからリックスさんも家出してまで修行中なのだろう


「その……回復役(ヒーラー)も……大丈夫です」

 ミカ君、今度は言い難そうだ。そりゃ自分の職業(ジョブ)だからね

 謙虚は美徳ですよ、うん。でもね、この職業を選ぶ人はプロ意識がスゴイのよ

 装備は最新、最良で固めてるし、レベルもほぼカンスト。回復に有利なスキルはもちろん不屈とか鉄壁とかのスキルを持ち、決して倒れない様に自身を作り上げてる


 なぜかって? 口の悪い人は居るもので、戦闘に負けると回復役のせいにされたりするのだ。しかもモンスターの前に留まって殴るを繰り返すだけとか範囲攻撃を逃げないで毎回食らうとか、そういう人に限ってネチネチ言ってくる

 もちろん、回復役が倒れればパーティーの全滅は避けられないという理由もある。真の回復役は決して倒れず文句を言わせず、己1人だけ生き残ろうともパーティーを立て直せる技量を求めるのだ

 なので回復役を選ぶプレイヤーは上手な人が多いんですよ。昔のオンラインゲームでは回線落ちしないようルーターにまで気を遣っていた、なんて話しも聞いた事がある


 拘りの盾職に不屈の回復役、この2職が居れば戦闘は安定するのだ。もっとも、高い技量を持っている人ばかりじゃないのが現実だけどね

 

「となると、攻撃力かのう。自信は有ったんじゃが……」

「技の性質の違いです。サオトメさんもリーダーも、一点突破には長けていますが面制圧となると……」

 わたしも、じいちゃんも貫通性能の高い技や魔法(ビームやソーラレイ)は使えるんだけどポーちゃんの様な幅の広い攻撃は持っていない。自爆は味方もろともだから使えたもんじゃない


「爆弾は代わりになりますけど、コストが掛かりますしピンポイントで使わないとダメです。全体を見渡せる指揮官が必要ですね」

 ミカ君よ、その歳でコストなんて知ってるのね。さすがとしか言えない


「お主はどうなんじゃ? 竜形態なら簡単じゃろ」

「あー。そうなんだけどねえ……この際だから言うけど、今回は生産に集中したいんだわ」

 スキルを多数持つエンチェンさんは戦闘も強い。竜形態になれば尚更である

「多人数参加イベントで個人が活躍しても、白けるだろ。ああいう空気は苦手でね。それに、こういうイベントは生産職には()()()なんだよ」 

「それは、私もですね~。魔法が使える様になったとは言え、まだ駆け出しですから~。爆弾や薬のストックも少ないですし~」

 魔法が使える種族に進化したエクトちゃんであるが、それほど数は覚えていないらしい。やはり錬金術が主軸なのだろう

 2人とも生産がメインであるために我々とは少し目線が違う。戦闘系のイベントは料理やアイテムを売りまくれる絶好の機会なんだろう

 戦闘に寄与したくない、もしくは出来ない人たちも多く居る。そういう人たちも生産ではイベントに関われる

 ついでに、お金も稼げる。そりゃ生産に集中したいわな


 会議室を沈黙が支配する。それを破ったのは進行役をしてくれているミカ君だった


「生産のため2人が抜け、さらに有効な手立てが無い……となればチームとして機能しなくなりますね」

 

 ……え?


「サオトメさん。例の話し、どうなってます?」

「うん? ああ、あれか。話しは通したぞ、若いもんが来るんじゃ歓迎されるじゃろ」

 ちょ、ちょっと待って! 何の事を言ってるの? 雰囲気が怪しいんだけど……


「そうですか……」

 ミカ君は、たっぷりと息を溜め吐き出すと決意した顔で宣言した

「しばらくチームを抜けます」


「ミカ君、わたしを捨てるの!」

 思わず、変な言葉が出ちゃった。わたし相当、混乱してたのね

「ちょっと、リーダー落ち着きなって。子供に何を言ってんだい」

 エンチェンさんに窘められ、恥ずかしくて赤くなってしまった。そんな、わたしに優しく笑顔を向けてくれるミカ君イケメン

「しばらくサオトメさんの古巣で修行してきます。あそこは人数も多いから、良い経験になると思うんです」

 POWER OF OLDかあ、孫可愛がりされて戻ってこないなんて事は無いよね

「わしも付いて行くから安心せい。やつらが離さなかったら決闘じゃ!」

 戦いたいだけな気がするけど、ここはサオトメじいちゃんに託すよ。絶対連れて帰ってね、絶対だからね!


「さて、方針も定まったようだし解散かね。各々、やれる事をやって備えるとしようか」

「ですね~」

 エンチェンさんとエクトちゃんが席を立って出ていった。やがてミカ君とサオトメじいちゃんも連れだって出ていく

 わたしはどうしよう? ポーちゃん、わたし1人じゃ何にも出来ないよ……



「居たああぁぁ!!」

 ドアを壊す勢いで入ってきたのはルキちゃんだった。わたしの隣にイスを持ってくると、ちょこんと座る

 あれ? いつもより距離が近いんだけど……ってゼロ距離だよ、ぴったりくっついてる

「んふふ、ミカが居ないから遠慮しなくて良いよね。いつもの怖い、お姉さんも居ないし」

 そっか、ミカ君が居るからと気を遣ってるもんね。ハイハイ今日は、わたしを独り占めだよ

「でね、ポシェットさん今日は……って何メソメソ泣いてるの、もう!」

 痛たた、ハンカチで拭いてくれるのは良いけどゴシゴシは痛いよ。嬉しいけど

「せっかくだから特訓しよ、特訓! まだまだ強くなりたいし、手応えもあったし。ねえ、行こうよ」

 そうだね、ここに居ても何にも始まらないし。エンチェンさんの言う通り、やれる事をやろう


「余もいるぞおおぉぉ!」

「あー! お邪魔むし!」

 再びドアを危機に晒してるのは元魔王のファラちゃん。最近はミカ君たちと、3人でよく一緒に居るみたい

 ありゃりゃ、2人で口論になってるよ。ルキちゃんが突っ掛かって、ファラちゃんが笑って受け止めてる

 多分、ミカ君が寄越してくれたんだろう。ホントにもう……ありがとう


「アハハ。ポーちゃん、わたしの周りはやっぱり騒がしい方が良いね」

 どんなに困難でも、何とかなるよね。だって、みんなと一緒だもん

 ようし、特訓だ!

 

 

 

『謙遜は過ぎると嫌味になる』

「いやあ、全く才能なくて。面白くないでしょう、ごめんなさい」

 読んでくださる方に失礼ですよね。ならば

「全力で頑張りました。読んでくれて、ありがとう」

 こちらの方が気持ちいいと思います

 謙遜も必要とされて生まれたスキルなのでしょう。不要ならば失くなっているはずですから

 発する側と受けとる側の性格もあるでしょうが、あまり気にし過ぎると、却って何も出来なくなる気がします

 

 作者もテキトー言いながら、何度も見直してます。『謙虚』な気持ちで

 えーと、ごめんなさいテキトーなのは真実です

「ですね~」

 ……ん?

 

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