いわゆる、お約束という展開(前編)
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むかしむかし あるところに
それはそれは かわいらしい
おひめさまが おりました
みんなで なかよく
しあわせにくらす くにで
とても あいされて すごしていました
ところがです
おひめさめの かわいらしさを ききつけた
マオウが やってきたのです
マオウは いいました
ひめよ おまえが10さいになったら
マオウの はなよめに してやろう
くにじゅうのひとが かなしみました
そして あるとき ゆうしゃとなのる──
「魔王……あんた、ロリコンだったのー!!」
「アホかアァー! チガウわアー!!」
みなさん、こんにちは。天使族のミカです
ゲームでは回復役をメインに、補助魔法も少し使えるプレイヤーです。今はウサギメイドさんたちの末っ子であるプリシラちゃんに絵本を読んであげてました
「ろりこん? みかくん、なにそれ?」
小さい子は、すぐ真似するから変な言葉は教育に悪いのに。この2人はホントにもう!
『──沈黙』
「~~! ※※※!!」
「※※※! ~~!!」
沈黙の魔法で、やっと静かになりました。騒いでた2人を紹介しますね
まず、姉である戦士のルキ。素早い動きで敵に斬り込むアタッカーです
ボクの2つ上の年齢で小学5年生。あまり考えず行動して、ドタバタと落ち着きの無い性格です
そのくせ、人見知りするんですよ。面倒くさい
長い黒髪をなびかせて戦う姿は人気があるようで、一部では【黒姫】なんて呼ばれてます。たまに発言が黒いのも愛称に関係あるようで、他のプレイヤーさんたちを不快にさせてないか心配です
さて、もう1人はイザヨイさんです。かつて裏妖精郷で魔銀を守っていた魔王 十六夜の陰影、その人です
ボクたちとの戦闘を動画配信したので存在は知られていましたが人の姿は湖に突入したポシェットお姉さんしか知らず、イザヨイさんを見たとたん自爆しようとしました
すかさずポーチお姉さんが、しがみついて止めてました。イザヨイさんは復活した後、火口湖を部下に任せて遊びに来た様です
まったく迷惑な話しです。姿が知られていないので騒ぎになりませんが正体が知れて気軽に遊びに来てるのを見られでもしたら、あの戦闘に捏造疑惑が出るじゃないですか
し・か・も腰布1枚のほぼ裸で現れたものだから、また騒ぎになって大変でした。ポーチお姉さんが持ってた服を着せて事なきを得たのですが、あれ確か拘束衣とかいうやつじゃ……ポーチお姉さんは何故あんな服を持っていたのでしょう
「ただのコスプレ衣装。気にしちゃダメ」
なんだか逆らえない雰囲気で言われました。はい、気にしません
真っ白い肌に赤い刺青が電子回路の様に走っていて、白目部分は黒く瞳は金。いかにも異形の者という感じです
「モトヨり、タタカうキハナい」
少しおかしな喋り方をするイザヨイさん。何をしたいのか辺りをフラフラしながら色々、観察しているようです
結局、「害が無いなら良いんじゃない?」というリーダーの言葉で収まりました。面倒くさかったのかな? いやいや、心が広いという事にしておきます
どこで知り会ったのか、二人してボクの部屋に押し掛けて騒がしいのなんの。少しおとなしくしていてもらいましょう
「ええと、どこからだったかな? 確か勇者がどうとか……」
静かになったので中断していた絵本を読もうとページを開いたのですが、目的の場所が見つかりません
「みかくん、ここ。ここ変だよ」
プリシラちゃんに言われ、見てみるとページの下のほうがピカピカと点滅しています。これなんだろう?
エクストラクエスト:【絵本の魔王】
クリア条件:不明
報酬:不明
受注しますか? YES/NO
こ、これって……点滅している場所に触れると出てきたのは、なんとクエスト案内。しかも、エクストラです
プレイヤーとしては嬉しいですがクリア条件と報酬が分からないのはダメです。こういう怪しいものは、ちゃんと準備をしてからでないと……
「※※~、※※※※※! (へえ~、ポチッとな!)」
やりやがりましたよ。お姉ちゃんはホントにもう!
一瞬の眩しさの後、どうやら4人とも専用のフィールドに転移したようです。ここは……街の広場かな? 少し離れた場所に大きな、お城が見えます
「ふおー! 何コレ、どこココ!」
「イヤな、ケハいスる」
「みかくん、絵本は~?」
沈黙の魔法が切れたとたん騒がしくなりました。お姉ちゃんは忙しなく走り回っているし、イザヨイさんは寝転がって動かないしプリシラちゃんは状況を理解していないのか絵本を強請んで来ます
何だか、一人で冷静になろうとしてるのがバカらしくなりました。もういいや、ボクも楽しもう
「はいはい! みんな、お城に行くよ」
パンパンと手を叩いて歩くように促します
「何で、お城なのよ?」
「このクエストはお姫様の救出だと思うんだ。絵本の内容もそれっぽいし。だったら行くのは、お城でしょ」
もっとも正解かどうかは分かりません。おっとプリシラちゃんとは手を繋いでおかないと。迷子になるかもしれない
真っ直ぐお城に来ると、クエストが進行しました。直ぐに謁見の間に通され、王様から話しを聞きます
「よくぞ、来た勇者よ!」
「来てあげたわ!」
お姉ちゃんが偉そうに答えていますが良いのかなあ。話の内容はやっぱり魔王対策のようです
そして今日がお姫様、10歳の誕生日。唐突だなあ
王様によると迎えが来るようなので、それまで待機です。魔王が用意する、お迎えってどんなのだろう
「ところで、そこなる青年よ。ちよっと、こちらへ」
「オレのコトか?」
イザヨイさんが王様に手招きされています。すごい近いんだけど大丈夫かな
(あなた、NPC側の立場でしょう。何やってるんですか)
(スマん、マキコマレた。シカし、タントうチクがチガウしダイジョウブダろ)
(ええ、そうでしょうね。こっちの魔王と揉めないで下さいよ)
(ドリョクスる)
小声で話してるつもりなんだろうけど、聞こえてますよー。裏事情とか、やめてよもう
でも1つ分かった事があるね。この世界には魔王は複数いるみたい
お父さんに教えたら喜びそうだ。貴重な情報です
「へ、陛下ー!」
「何事だ!」
「お、おぞましいものが外に……」
お城の兵士さんが駆け込んで来たと思ったら外を指差して震えています。バルコニーへ出て下を見ると、そこには首の無い馬を2頭繋いだ馬車が停まっているじゃないですか
そして御者台には馬と同じく首の無い騎士が兜を脇に抱えて座っています。あーあれは
「げえっ、デュラハン!」
どこかで聞いたセリフを王様が叫んでる。首無し騎士デュラハン
色々な伝承があるけど、有名なのは訪れた家で1人を指差し死を宣告するアンデッドモンスターであること。1年後に殺しに来るので、その時に退治すると死なないで済むこと
このゲームではどうなんだろう? 魔王の手下みたいだけど
「ウオオオオ! 姫よ迎えに来たぞおぉぉ!」
「うるさいわね!」
どうやら、あれが迎えの様です。あっ、お姉ちゃんが勝手に相手してる
デュラハンは結構な大物モンスターだから1人じゃ危ない、助けなきゃ
「何だキサマは?」
「勇者……って言ったら分かるかしら?」
「ほう! ほう! ほう! くくく……敵だな。このまま轢き殺してくれるわ」
「へえ、騎士様のくせに剣で戦わないんだ。えー、げんめつう。自信無いんだー、きっと弱いのねー」
「キサマー!」
うわあ、煽ってる煽ってる。どうやら挑発に乗るみたいで、大剣を引っ提げて降りてきました
「お姉ちゃん!」
「ミカ、手出し無用よ」
ええ!? そんなカッコつけなくても。あれ、いつもの剣じゃない?
お姉ちゃんが、いつも愛用しているのは広刃の剣なんだけど今は長めの鉄棍を持ってる
真ん中を持って少し屈んだ、あの構えはもしかして杖術? リーダーが得意としている槍での攻撃
あれは杖術を基本としてるって聞いた事がある。いつもの攻撃的な動きじゃなく受け身で切り返す、お姉ちゃん
そういえばリーダーと一緒に訓練してたっけ。いつの間にマスターしたのだろう
元々、木の杖で刀に対抗するために編み出された技術らしくて、まともに打ち合わず、かわす事を重視してるって言ってたっけ。
厚いヨロイを着た敵に刃物じゃ分が悪いだろうから正解なんだと思う。素早く横にかわして払う、打つ、突くで有利に運んでるみたい
あっ、真ん中から端に持ち手を移して間合いを狂わせてる。鳩尾付近に突きが決まった
だけど……
「効かぬなあ」
パワーのあるリーダーと違って─「誰がゴリラよ! (ポシェット)」─ごほんごほん、スピード重視のお姉ちゃんじゃ少し厳しいみたい。あっ、まともに受けた
「くう!」
衝撃で鉄棍を離しちゃった。すかさず剣を構えたけど、どうするんだろう
「知っているぞ、居合いだな」
お姉ちゃんは剣を抜いていない。デュラハンが言った通り、あれは居合い抜きの構えだ
「よかろう、勝負だ」
デュラハンが大上段に構えた。お姉ちゃんの居合いとデュラハンの振り下ろしのスピード勝負
「ウオオオオ!」
剛剣が速度を持って降りおろされた。けど、お姉ちゃんは抜かない
狙ったのは居合い切りでは、なかったんだ。そのスピードを持って横にかわしながら予備の小剣を抜き放ちデュラハンが抱える頭部へ突き立てた
兜の隙間から見事に突き立ったけど、これでは決まらなかった
「この程度で我は倒せ─」
「─爆!」
後方転回で距離を取った瞬間、突き立てた小剣が爆発しました。ええ、あれ戦士の技じゃないよね
たしかリーダーのお友達であるモモさんが使ってた符術じゃないかなあ。ホントにいつの間に習得したのやら
「見事だ……ぐふっ」
地響きを立ててデュラハンが崩れ落ちた。すごい、勝っちゃった
「勝った……のか?」
王様が警戒を解かずに様子を伺っていると、お姉ちゃんがスッと右手を上げる。勝利宣言だ!
「うおおお!」
「勝ったぞ!」
「勇者だ、勇者が倒してくれたぞ!」
お城の兵士たちが拍手喝采で讃えてくれてます
「どう、ミカ。すごいでしょ」
「うん、まあ。すごいんだけど……」
「何が不満なのよ」
お姉ちゃんが自慢気に鼻高々なのは良いんだけど、クエスト終了のアナウンスは無いんだよね。ていうか迎えに行ったのに帰らなかったら大変な事になるんじゃないの?
「ナラば、コチラカらノリコメばヨロシい」
イザヨイさんが敵のアジトに乗り込む気満々でいる。うーん、でも4人で突っ切っても潰される気がするよ
「それならば余に考えが。背格好も似ているしの」
王様に連れられ向かったのは……
「わが弟ながら、ホントに」
「アー、ニアッてイルぞ」
「みかくん、カワイイ!」
衣装部屋でした。つまりお姫様の身代わりとしてボクらが変装して行こうって作戦
イザヨイさんが御者、お姉ちゃんが従者、プリシラちゃんがそのまんまメイド……つまり
「なんで、ボクがお姫様役なのー!!」
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