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ぐらとぐら  作者: シクル
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第5話「白猫と賞金Part3」

「銃で……僕を撃つというのか…?」

「おうよ。その猫を渡さないならな」

男は依然として銃を羅門に対して向けている。

「ホントに僕を撃つのかい?」

「しつけーなクソガキ。マジで撃つぞコラ」

男はかなり苛立っているらしく、右足でトントンと地面を蹴っている。

「もし僕がアンドロイドで、衝撃を与えると爆発するタイプだったらどうする気なんだい!?」

「な、なんだってー!?」

ゴン!

声を上げて驚く男の頭に、リーダー格の男がゲンコツを喰らわせる。

「んな訳ねーだろ馬鹿が。馬鹿なこと言ってないでとっと猫を奪え」

「す、すいません……」

ダッ!

男達がそうこうしている内に、羅門は逃げ出した。

「みーちゃん!!しっかり捕まってて!!!」

「みぃ〜」

羅門は頭に猫を乗せたままその場を走り去った。

「おい、逃げたぞッ!」

「追え!!」

男達はそんなありきたりな言葉を交わしながら走って羅門を追いかけた。



正直、羅門の行動パターンは読めない。

故にどこに行ったかなんて俺には絶対予想出来ない。

つまり

「いきなり手詰まりということか……」

俺は溜息をついた。

こんなことなら早起きしておくべきだった。

更に前を後悔するなら昨日の間にあの猫の飼い主を探しておくべきだった。

だが今は後悔しても仕方ない。

とにかく今は猫と羅門を探すことが先決である。

一応は色々回ったのだ。

商店街。

コンビニ。

公園。

白凪校。

思いつく所は行った。

他に行っていない場所と言えば……

神社。

白凪神社。

「とりあえず行ってみるか……」



「待て!!」

羅門は男達に追い回されながら神社の周りを逃げ回っていた。

が、流石に相手が複数ともなると捕まるのは時間の問題だった。

男達に取り囲まれていた。

人数は8人。

結構な人数だ。

流石にこれでは逃げられない。

「ハァハァ……クソガキ…観念して…猫を渡せ…!」

羅門は猫を抱いたまま離さない。

男達に渡す気はさらさらないようだ。

「兄さんは言っていた……」

羅門は猫を片手で持つと、空を指差すように右手を上げる。

「俺達程関係の深い兄弟はそんなにいない…どんなに離れていても手に取るように居場所がわかるとな………!」

「うがッ」

その言葉と同時に、男達の内1人がその場にドサリと倒れた。




「んなことは一度も言った覚えがないぞ羅門」

俺は男達の内の1人に手刀を喰らわせ、その場に倒すと即座にツッコミを入れた。

間に合ったか…。

十分一大事だが俺の想像する中の最悪の展開にはなっていないようだ。

どうやらこいつらが強盗集団。

やはりあの猫はシャルロットで間違いないな。

「貴様……ッ!」

一斉に男達の視線が俺に集まった。

「兄さん!」

「何だ貴様は…!コイツの仲間か……?」

仲間……ちょっと違うな。

「仲間というより……まあ不本意なんだが……。兄だ」

俺が言い終わるか言い終わらない内に男達が俺に向かってくる。

どうみてもこいつらの動きは素人。

喧嘩慣れしている訳でも、武道をやっている訳でもなさそうだ。

そのくらいの奴らなら、俺でも簡単に倒せる。

1人、2人とぶちのめしていく。

しかし俺が7人目を倒した時だった。

「そこまでだ」

カチリと銃の音がする。

まずい。

相手は銃を持っていたのか…

「どこのスーパーマンだか知らんがこのまま我々も黙って引き下がる訳にはいかない。死にたくなければ猫を渡せ。さもなくば2人とも撃つ」

コイツ、マジだ。

目でわかる。

本気で撃つ気だ。

コイツにもそれなりの覚悟があるのだろう。

「さあ、どうする……?」

「仕方ないか……」

「羅門…!?」

俺の身を案じてか、羅門は猫を男の方へ差し出した。

「兄さんの命には代えられない。だから……」

「賢いな小僧」

「頑張って!みーちゃん!」

「みぃ〜!」

なんと羅門は猫を男に向かって投げたのだ。

猫は男の顔面に跳びつくと、男の顔面を引っ掻き始めた。

「おおッ!!」

そのチャンスを見逃さず、俺は男の腹部に思い切り蹴りを入れた。

男はそのまま後ろに倒れ、気絶した。

羅門はすぐに猫を抱きあげる。

「ふぅ。お疲れ様。みーちゃん」

「みぃ〜」

どこか猫も誇らしげである。

「羅門、その猫の飼い主が見つかった…。返しに行くぞ」

「うん、その前に……」

まだ何かあるのか?

俺が不思議に思っていると、羅門は俺を真っ直ぐに見る。

「ありがとう兄さん」

「あ、ああ……」



あの後、猫はすぐに鳳凰院家に返した。

結構本気で捜していたらしく、高飛車な涼香も家主の代わりに頭を下げてくれた。

強盗集団はすぐに警察に捕まり、それなりに裁かれた。

そして10万円は俺達にきちんと支払われた。

羅門が新しいテレビを買おうなどとふざけたことをぬかしていたが無視し、10万円は当面の生活費に充てさせてもらった。

とりあえず猫の件は一件落着……

なのだが何か忘れているような…

「……あ」

岸田。

その後電話で謝罪したがものすごく怒られた。

すまん岸田。

しかしそれでも10万円は全て俺達の生活費に充てられた。


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