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ぐらとぐら  作者: シクル
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第43話「遠い過去、遠い未来Part1」

人生。

人が生きると書いて「人生」。

俺の「人生」は終始平穏無事であると俺はいつから決めつけていたのだろう?

何の変哲もない1人の男の人生。

それで済むハズだった……

そのハズだった。

羅門が現れてからの数ヶ月、どうも平凡とは言い切れない人生を送っている。

俺と羅門の生きる「人生」は―――


どうも最後も平凡とはいかないらしい。




ついこの間まで暑かったと思っていたら、もう涼しくなってきている。

これが秋かぁ……などとどうでもいいことを考えながらも、そろそろ自分の進路をハッキリしなければならない。

なんせもう高二だ。

いつまでも遊び呆けている訳にもいかない。

進学か、就職か、浪人か、ニートか、フリーターか。

最初の二つ以外は選びたくないものだ。

まあ、まだしばらくはゆっくりできるだろう。

そんなことより迫っているのは学園祭だ。

白凪校の学園祭はわりと大きなもので、色んな所からそこそこの人数が集まる。

まあほとんどが保護者や他校にいる誰かの友人、または中学生や誰かの兄弟ってところだが。

たまに外人なんかもいるからビックリする。

そんな文化祭が二週間前だ。

そろそろ俺のクラスも出し物を決めるべきだろう。

故に、今日のLHRは文化祭の出し物についてだ。

「おいお前ら!文化祭の出し物決めるぞー!」

相変わらず幼く、かわいらしい声で喋る宮本。

「何でも良いが、私が面倒な作業をするような出し物は禁止だ」

身勝手過ぎる理由だな。

それに、作業はどうせほとんど大山にやらせるんだろうが。

「意見のある奴手を上げろー」

あまり覇気のない声である。

「いないのかー」

誰も手を上げないことにイライラしているのか、指でトントンと机を叩いている。

「もういい。ウスノロ、任せた」

「わかりました」

呼び名、ウスノロで定着したのか大山。

「えー、意見のあるものは手を上げるようにー」

宮本から大山に切り替わり、やっとのことで静まっていた生徒がざわつき始める。

それぞれが友人同士で何にするかなどと話し合っている。

「兄さん、何したい?」

「特に意見はないな……」

席替えをした結果、また俺の後ろに座っている羅門の方を向き、俺は適当に答えながらも何をしようかと考えていた。

「……学年対抗最大トーナメント」

「出し物ではあってもうちのクラスのではないな。それだと学年全体の出し物だろ」

隣でふざけたことを呟く福井に、俺はすかさずツッコミを入れる。

「……じゃあ、行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ町興し!〜究極の超人タッグ編〜」

「それはもうこないだやっただろ」(第32〜35話参照)

それに学園祭で町興しってのどうなんだよ。

「はい、木下さん」

福井と妙な会話をしている間に、ビシッと手を上げた木下を大下があてる。

木下は立ち上がるとそれなりに大きな声で

「メイド喫茶とかで良いと思いますっ!」

間抜けなことを言い放った。

男性陣からは歓声が上がり、女性陣からは溜息と歓声が半々といったところだった。

木下の発言に、木下の隣で詩織が呆けた顔をしている。

ビックリしたんだな……。

「ぐ、具体的な説明をしてください」

大山は興奮で顔がすごいことになっている。

元々アレな顔だったのが、更に酷くなっている。

「はい!女子はメイド服で接客と料理!男子は料理の手伝いとビラ配り!料理のメニューは焼きそばとか簡単なものにし、飲み物はお茶とジュースを有料で!ただし水道水はタダで飲み放題!」

本気か木下。

テンション上がってる奴ら以外はドン引きしてるぞ。

「メイド服はどうやって用意するんだよ?」

冷静な男子が木下に問うと、木下は「あ……」と間の抜けた声を上げた。

やっぱり考えてなかったか。

「その心配はないぞ」

不意に、座って知恵の輪をつついていた宮本が立ち上がる。

「私が用意しよう!!」

「おおおーッ!!」

その言葉で、一斉に歓声が上がった。

一部は溜息吐いてるが…。

テンションが上がり切った男性陣は宮本を胴上げしながら「オールハイル宮本!」などと繰り返している。

他のクラスの邪魔になるから黙れ。

「じゃ、じゃあ決定ということで……良いですね?」

大山のテンションもマックスらしく、今にも鼻血が出そうな顔をしている。

もう嫌だこの組。

「ちょ、ちょっとお待ちなさい!!」

バン!と。

涼香が机を叩いて立ち上がる。

やはり反論する者はいるらしく、涼香もその一人のようだ。

「何故私が使用人の格好などしなければならないんですの!?」

「嫌ならしなくて良いぞ馬鹿お嬢。その代わりお前の仕事はパンダの着ぐるみで客寄せだ」

「んなッ!?」

適当にあしらう宮本に、更に怒りを露わにする涼香。

「丁度良い。お前ん家メイド服とかありそうだな。借りるぞ」

「勝手に決めないで下さいましっ!」

が、完全に上がってしまったこのクラスのテンションはもう止められない。

涼香以外の反対派は既に諦めてしまったらしく、投げやりな表情で涼香と宮本のやり取りを見ている。

結局多数決で決めるという話になり―――


見事、メイド喫茶が我がクラスの出し物に決定しました。






ずっと探し続けていた。

いつか必ず出会えると信じていた。

名前が変わっていて気付けなかったけど、やっと見つけた。

僕が兄さんの顔を間違えるハズがない。

成長しててもわかったよ。

「見つけたよ。兄さん」

今僕は、白凪町にいます。


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