とある大資産家がいた。
とある大資産家がいた。
誰よりも豊かで。
誰よりも恵まれていて。
誰よりも孤独だった。
天涯孤独の身であった彼は、金よりも、土地よりも、地位よりも、何よりも愛を求めるようになった。
けれど彼の前に現れるのは資産目当ての悪女ばかり。
彼は彼女らの企みを見破り、全ての交際を断った。
――――彼は泣いた。
何故愛されないのかと。
これでは金があっても意味がない。
―――――愛が欲しい。
ただ貪欲に愛だけを求めた。
取り繕った愛ではなく、ただ純粋な愛を求めた。
それでも手に入らなくて。
途方にくれて。
諦めて……
けれど出会った。
愛を手に入れた。
初めて触れた温かな愛。
彼は幸福だった。
心から幸福だった。
その幸福は彼を裏切ることなく長く続き、いつしか彼は……
―――――愛に慣れた。
当たり前になった。
もう愛を欲する必要はなくなった。
子を授かり、彼は全てを手に入れた気になっていた。
いつしか彼は愛を大切にしなくなった。
有り余るほどの金で豪遊した。
更には浮気までした。
彼女の愛を忘れた。
そして……
―――――失った。
彼は嘆いた。
己の愚かさを。
何故大切にしなかったのかと。
思い詰め、思い詰め思い詰め思い詰め…
そして
―――――命を絶った。
償うために。
謝るために。
彼は彼女に会いに、命を絶った。
たった二人の幼い息子を残して――――