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ぐらとぐら  作者: シクル
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第30話「恋せよ乙女Part3」

「理恵ちゃんのばかっ!恥ずかしかったんだよ!!」

五時限目終了後の休憩時間、既に着替えた優が怒りながら猛抗議。

そりゃそうだ。

体育でもないのにジャージ姿で授業を受けたのだ。

そりゃクラス中の視線を浴びてさぞ恥ずかしかっただろう。

あたしは心の中で優を哀れんだ。

「作戦其の三、いやんばかんうっふんあっはんそのまま奥まであんああん〜ホテルで二人は……〜編!!」

「ちょっと待った!!」

バン!とあたしは机を両手で叩く。

「……何?」

「アンタ遊んでるだけでしょ」

あたしに指摘され、りえりえはしばらく黙った後、自分で頭をコツンと拳で軽く叩いて

「てへっ☆」

「てへっ☆じゃないわよてへっ☆じゃ!」

予想通りりえりえはふざけていただけらしい。

真面目にやるか、やらないのなら何もしないで下さい。

あたしは「ふぅ」と溜息を吐く。

「じゃあ、作戦其の四、普通にデートしてこい」

結局それか。

とは思ったものの、あたしもそれが最良だと思う。

どう誘うのかが問題なのだけれども……。

「……問題はどう誘うか」

「そうね……」

「じゃあ、図書室で梯子から落ちそうに……」

「それはもうやりました」

りえりえが言い終わらない内にツッコミを入れる。

「じゃ、じゃあ不良に扮した私に襲われる詩織ちゃんを通りすがりの仮面ライダーが……」

仮面ライダーが助けに来るなら、羅生関係ないじゃない。

「優、また恥ずかしい思いしたいの?」

あたしが問うと、優は青ざめた顔でブンブンと首を横に振った。

「笑えば、良いと思うよ」

「ごめんなさい、こういうボケにどうツッコミを入れれば良いのか、わからないの」

笑顔で言うりえりえに、あたしは静かにそう答えた。



なんだかんだでその日はそれ以上は何も決まらず、あたしは自分で考えることにした。

映画のチケットを二枚買い、たまたま手に入ったので一緒に行かないか?と誘う。

何ともベタだがシンプルで良い。

早速あたしはチケットを購入することにした。

最近の映画の情報を調べるためにPCを立ち上げる。

「ん?」

起動を待っている間に携帯の着信音が響く。

メールだ。

「優から…?」

タイトルはオススメ映画。

どうやらあたしのために調べてくれたらしい。

「優…」

あたしは軽く微笑み、メールを開く。

「……」

コナンか仮面ライダーに行けば良いと思うよ!

とのこと。

何でデートでアニメか特撮なのよ。

あたしは溜息を吐くと、携帯を閉じて机の上に置いた。

「……映画はやめよう」

あたしは一人呟き、立ち上がったばかりのPCをシャットダウンした。

ドサリと。

身体を投げ出すようにベッドの上に倒れる。

「どうしよっかなー」

ゴロリと転がり、うつぶせの状態から仰向けになる。

天井を見ながら考える。

そもそもあたしは羅生のことが本当に好きなんだろうか……。

元々少し意識してただけで好きだと確信した訳じゃない。

ただ、気になるだけ。

確かにそれは恋の始まりかもしれないが、よく思い出せばあたしは昔何度か意識しただけで、恋まで発展しなかったことは何度もある。

そう考えればあたしが羅生のことを好きになるとは限らない。

それでも、意識しているのは確かだった。

「……あー!!」

考えるのをやめ、立ち上がる。

ぐじぐじ悩んだところで何にもならない。

好きかどうか確認するために行くデートでも良いじゃない。

あたしは改めて、どこに行くのが良いか考えることにした。



しばらく考えて、結局結論はショッピング。

映画程ではないが無難で良い。

次の日、早速りえりえ達にも相談してみると、「良いと思うよ」とのこと。

りえりえに頼むとふざけるので誘い方は自分で考えることにした。

そしてその日の授業中に色々考えた結果、普通に話しかけて誘うことにした。

小細工をするのは面倒だ。

しかしここで一つ問題がある。

―――神宮羅門。

彼に来られるとまずい。

二人きりで過ごしたいのだ。

どう彼を追い払うか……。

正直あたしには神宮羅門の考えていることがまったくわからない。

勿論交友関係も謎である。

故に、どう手を打てば良いのか見当がつかない。

羅生だけ呼び出して誘うのも何だか変だし、逆に羅門のいる時に羅生だけ誘うのも不自然だ。

メールで誘おうかとも思ったけどこういう大事なことは口で伝えたい。

なのであたしは電話で誘うことにした。

部活が終わった後、帰り道を歩きながら携帯を開く。

辺りは既に真っ暗で、携帯の光が少しだけまぶしかった。

「……」

電話帳から羅生の番号を呼び出し、後はボタンを押すだけ。

それだけなのに。

怖かった。

携帯を持つ手が震えている気がした。

電話をかけるだけなのに…

断られたら?

そんなことを考えただけで怖くなる。

別に告白をする訳ではないのだ。

何を怯えることがある?

あたしは、ボタンを押した。

トゥルルルルル……

コール音が耳に響く。

『もしもし、ボス……』

「は?」

思いもよらない応答に、あたしは間の抜けた声を上げる。

『そこにいるのなら………ボス、完全にぼくたちの勝ちだ!フフ……フ。でも……さびしいよォォォォ………ボス、いつものように、電話ください…………待ってます……電話』

「いや、えと……え?」

意味がわからない。

『羅門ッ!お前人の電話勝手に取るんじゃねえ!!』

『オレのそばに近寄るなああーーーーーーーーーッ』

『お前が俺の携帯に近寄るなッ!!』

ゴッ!

電話の向こうで鈍い音がする。

多分羅門が羅生に殴られたんだろう。

『悪い、もしもし?』

良かった。

羅生だ。

あたしは安堵の溜息を吐く。

「あ、羅生?」

『おう、詩織か。どうした?』

「あの、次の土曜日って空いてる?」

あたしは恐る恐る問う。

『ああ、大丈夫だ。何かあるのか?』

「ショッピングに付き合ってくれない……?」

左手で胸に手を当てる。

早い鼓動が手から伝わる。

今、すごく緊張してる。

『別に良いけど、どこに行けば良いんだ?』

「白凪駅の前に午後一時に来てくれれば……」

『おう、わかった』

「あ、それと…」

『ん?』

「羅門君はちょっと……」

『ああ、わかってるわかってる。アイツが来ても面倒なだけだから留守番させとくよ』

「うん、ごめんね」

『気にすんな。じゃあな』

「うん」

ツーツー

電話が切れる。

「ふぅ」

あたしは再度安堵の溜息を吐いた。

「よ、良かったぁ……」

ついつい呟いてしまう。

思いの外うまくいった。

後は土曜日が来るのを待つだけ………

あたしは軽い足取りで帰り道を歩き始めた。



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