第3話「白猫と賞金Part1」
思ったより話は着々と進んだ。
羅門はてきぱきと白凪校への編入手続きを済ませ、見事編入試験に合格した。
俺が思っているより羅門の頭は良かったようだ。
バイト代で必ず返すと言うのでとりあえずは制服代及び授業料も払ってやることにした。
バイト先での羅門はしっかりと働き、時折俺以上の成果を上げるくらいだ。
問題はない。
そうこうしている内に、白凪校は春休みとなった。
羅門も4月から高校に通うことになる。
「ふぅ……」
俺はソファーに腰掛けると一息ついた。
ここしばらく羅門の件でバタバタしていたため、ゆっくり出来る時間がなかったのだ。
今羅門は買い物に出しているため、今ココには俺しかいない。
久々の心休まる1人の時間である。
電気代節約のため、日頃はつけないテレビの電源を入れる。
静かだった部屋にテレビからの音が響く。
時刻は6時前。
テレビでは夕方のニュースをやっていた。
白凪町内のニュースらしいので少し真面目に見てみる。
なんでも、鳳凰院家とかいう白凪町内にある屋敷の猫が逃げ出したらしい。
名前は「シャルロット」だとか……
猫が逃げたくらいでニュースにするのもどうかと思う。
いくら金持ちの家とはいえ、流石にやり過ぎだろう。
「うわ、警察まで動いてるよ…」
正直信じられない。
まあどうせ金持ちのことなんか俺にとっては信じられない世界なのだろう。
「ただいまー」
ドアの開く音と同時に羅門の声が聞こえる。
「ちゃんと買ってきたよ兄さん」
羅門を見る。
買い物袋以外に出発前と明らかに違う点を発見し、俺はそこを凝視した。
「ご苦労。1つ質問していいか?」
「うん。いいよ兄さん」
俺は羅門の頭の上の白い何かを指さす。
「それはなんだ?」
「拾ったんだ」
微妙に質問内容と返答があっていない。
「ちゃんと質問に答えろ。その物体は何だ?」
「猫だよ」
羅門の紹介に呼応するかのように、頭上の猫は「みぃ〜」と鳴いた。
いやまあ見れば猫だと一目でわかるが……
「お前の次の台詞は『ねえ、飼っても良い?』と言う」
「ねえ、飼っても良い?……ハッ!?」
図星かよ。
「ダメだ。元の所へ捨てて来なさい」
「えー。こんなにかわいいのに……」
「その猫の愛らしさが俺達に飯を食わせてくれるのか?金をくれるのか?」
「………」
ちょっと言い方がキツかったか…?
と、少し反省しつつも態度を変えるつもりはなかった。
今の俺に羅門+猫を養える程の収入はない。
餌代だって馬鹿にならないのだ。
「それにその猫ホントに野良か?野良にしちゃ毛並みとかキレイだが……」
俺は猫をまじまじと見つめた。
わりとキレイな猫である。
とてもじゃないが野良猫とは思えない。
捨て猫か?
「うーん……。わかんない。とりあえず今日一日だけ家に置いてちゃダメかな…?」
「まあ、今日一日だけなら……」
「ホント!?」
心底嬉しそうに笑う羅門。
「その代わり、明日には俺と飼い主を捜しに行くぞ」
「わかった!」
早速羅門は猫とじゃれ始めている。
もう仲良くなったのか…。
俺はそんな羅門に驚かされつつも呆れながら、近くのコンビニへ猫缶を買うために足を運ぶのだった。
夜の公園。
そこに数人の男達が集まっていた。
全員が黒いスーツにサングラスといった怪しい風貌である。
「おい、いたか?」
「いません…。どこへ逃げたんでしょうか…?」
男達はヒソヒソと話し始める。
「あの猫……すぐに見つけ出さねえとボスに怒られちまう…!お前ら、急ぐぞ!」
「はい!!」
リーダー格の男に支持を出され、男達は散り散りに猫を探しに行った。
「ふぁ〜あ」
朝……と言っても俺の朝は遅く、大体12時前くらいに起きる。
俺が目を覚まし家の中をうろついていると、机の上に1枚のメモが置いてあった。
メモの内容は
みーちゃんと散歩に行ってきます 羅門
猫って散歩必要だっけ…?
ほんの少し疑問を持ちつつもそろそろ昼飯時なので、羅門と猫を迎えに行くことにした。
まあ適当にうろついていなけりゃ家に戻っているだろう。
俺は適当に身支度をするとアパートを出た。
「お、ぐら」
俺がしばらく歩いていると、何故か岸田に会った。
「なあぐら、猫見なかったか?」
昨日の夕方から夜にかけて散々見た。
「白い奴なんだけど、確か名前はシャルロット…だったと思う」
そうそう白いの。
俺が見たのも白いの。
…ん?
「ニュースでやってた猫なんだけど今賞金かかってるぜ?」
「賞金…?」
「ああ。10万だ」
猫一匹に10万…ねえ。
ってちょっと待て。
逃げた白い猫ってまさか……
「見つけたら俺に教えてくれ!俺が見つけてもお前に教える!な?山分けだぜ!!」
もう岸田の言葉など聞いていなかった。
重大なことに気がついた俺は思い切り駆け出した。
多分その逃げ出した鳳凰院家の白猫というのは昨日羅門が拾ったあの猫……。
だとしたら…!!
「10万円ッ!!」
恐らく今俺の目は¥のマークになっていただろう。
欲に目が眩んだ俺は、ひたすらに羅門と猫を探して走った。
続