彼は眠っている。
彼は眠っている。
目覚めることなく。
延々とベッドの中で時を過ごし、ピクリとも動くことなく。
私は泣いた。
泣きつかれる程に。
だけど私の泣き声は眠っている彼には届くことなんてなくて………。
それでも泣いた。
いつの日か届くと信じ続けた。
そんな日は来ない。
頭ではわかっているつもりだった。
だけど私はそれを否定し続け、彼のために泣いた。
日が暮れても、夜が来ても。
泣き続ければ彼に届くと信じ続けて。
泣き続けて何日か。
今日も涙はただただ虚しく流れるだけ。
――――無駄だということに気づいて、私は泣くのをやめた。
涙は枯れた。
もう泣けない。
だから今度は叫ぶことにした。
ひたすら彼を求めてただただ叫んだ。
彼の名前を。
彼のためだけに。
ただひたすらに。
すると今度は喉が枯れた。
小鳥が囀るように音を鳴らしていた私の喉は枯れてしまった。
それでも叫んだ。
彼のために喉を潤し、叫び続けた。
だけど私の声はただ騒音のように辺りに響くだけ。
――――無駄だということに気づいて、私は叫ぶのをやめた。
私は何もしないことにした。
どれだけ泣いても、どれだけ叫んでも、もう彼には届かない。
あの声を聞くことも、あの笑顔を見ることももうない。
もう二度と。
もう誰も。
会えない。
逢えない。
遇えない。
遭えない。
あえない。
アエナイ。
彼に逢えるのは、もう記憶の中だけ。
私の中だけ――――――――