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ぐらとぐら  作者: シクル
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第26話「メモリーオブロボPart5」

「キレイに…忘れて…?」

俺の隣で田原がプルプル震えながら老人の言葉を繰り返す。

「バックアップの際に今のデータが消えるだけだ。問題は何一つない。それに、コイツは元々私の物だ」

正論だ。

悔しい程に。

この老人からロボ子を奪う権利は俺にも、田原にもない。

老人の言う通り、彼女は老人の所有物だ。

造ったのも老人だ。

「なあ、爺さん」

「何だ?」

「ロボ子を……いや、そのロボット、何に使うんだ?」

俺の問いに、老人はムッとした表情になる。

「私が私の物を何に使おうが関係ないだろう」

「確かにそうだな。…が、俺はともかく田原はアンタがそのロボットを見つけ出すまで管理してくれていたんだぜ?田原には聞く権利がなくもないと思うんだが……」

自分でも少し無理のある申し出だと思った…。

だが、この老人がロボ子で何か良いことをしようとしているとは到底思えない。

むしろ悪事に使いそうな気がしてならない。

直感もある。

だがそれだけじゃない。

この老人の雰囲気、ロボ子を見つけたこの日だけ歯科を臨時休業にする程の重要性。

それに、侵入者排除のために襲いかかってきたナースロボ。

何もないとは思えない。

「……一理あるな」

「だろ?」

俺はついついニヤリと笑ってしまう。

これで悪事だとわかれば、何の気兼ねもなくロボ子を取り返すことが出来る。

「お前らが知ったところでどうにもならんからな」

知ったところでどうにもならない…?

これなら悪事だと自白しているも同然だ。

「復讐だよ。学会へのな」

「復讐……?」

「ああ。わしの研究論文を否定した学会に復讐するのだッ!!このロボットで!!武力によってなッッ!!!」

典型的なマッドサイエンティストだな。

「ロボ子を…ロボ子をそんなことに使うんですか!?」

黙っていた田原が俺の隣で叫ぶ。

「私の研究を理解しない奴らが悪いのだッ!!復讐されて当然だろうッ!!」

何とも自己中心的な意見だろう。

俺はいつの間にか怒りを感じ、拳を握り締めていた。

「お前の論文が悪いだけだろうがッ!逆恨みしてんじゃねえッ!!」

「逆恨み…?そう見えるかも知らんがもう遅いッ!!バックアップは完了したッッ!!」

老人のその言葉に、田原の表情が驚愕に歪む。

老人はニヤニヤと笑いながらロボ子の頭を機械から外すと、傍に寝かせてあったボディにくっ付ける。

「ロボ子……ッ!!」

「さあ、目覚めよッ!!我が復讐のためにッ!!」

ギ、ギギギ……

機械的な音を出しながら、ロボ子の腕がゆっくりと動く。

「葉貝博士……」

「そうだ!やっと思い出したかッ!」

今のロボ子は、俺が初めて会った時とは違っていた。

無機質ながらも穏やかだった表情からは穏やかさが消え、目からは氷のような冷たささえ感じた。

もう、ロボ子じゃない。

「そんな……ロボ子…!」

「さあ、手始めに侵入者のコイツらを消せ」

「了解……しました」

今までのロボ子からは想像できないような冷たい声で、彼女は答えた。

「ロボ子ッ!!」

ダッ!!

ロボ子は田原の声を無視するように走りだす。

「田原ッ!!」

俺は田原に向かって突き出されたロボ子の拳を、右手で受ける。

「ぐ……ッ」

流石はロボット、かなりの威力だ。

右手に激痛が走る。

「おい、ロボ子!ホントに忘れたのかよッ!?」

俺の声も届かないのか、ロボ子はただ無機質な表情で目標ターゲットである俺を見つめていた。

どうすればいい…?

ロボ子と戦う訳にはいかない。

戦った所で敵うハズがない。

ゴッ!!

「が……ッ!?」

腹部に走る激痛。

ロボ子の拳が直撃しているのがわかる。

ドサリと。

その場に俺は倒れた。

「た……田原…」

ロボ子は俺が倒れたことを確認すると、田原の方を向いた。

「やめて…ロボ子…」

やはり、届かない。

ロボ子はゆっくりと田原に近づくと、拳を振り上げた。

「う、うわ…!」

田原が目を閉じた瞬間だった…

ピタリと。

ロボ子の腕が止まる。

「え……?」

田原がゆっくりと目を開ける。

「ガ…ギ…ゴゴ…」

ロボ子から不快な音が聞こえる。

エラーか、バグのような音だ。

「どうした!?何故攻撃しない!?」


「出来るハズがないさ」


「ッ!?」

不意に聞こえた声の方向に、その場にいた全員が目を向ける。

「お前……」

ゆっくりと梯子を降りて来たのは、羅門だった。

「人であろうと、ロボットであろうと、本当に大切な記憶っていうのはどんなことをしたって完全に消すことは出来ない。今は忘れていても、心のどこかできっと覚えてる。そういうものなんだ」

羅門はゆっくりと俺達の方へと歩み寄る。

「ふざけるな!!コイツはロボットだぞ!?そんな感情、あってたまるか!!」

「ロボットだろうと人間だろうと関係ないって、今羅門が言ったばっかだろうがよッ!!」

先程の痛みが和らぎ、俺はよろめきながらも立ち上がる。

「陽…一……さん」

「ロボ子ッ!!」

「申し訳…ありません」

「何で謝るんだよ…!?」

ポロリと。

田原の目から涙が流れる。

「このままでは私は貴方に危害を加えてしまう…。そんなことをするくらいなら………」

カチッ!

ロボ子から何かのスイッチが入ったような音が聞こえる。

「お前……何をした!?」

「自爆スイッチを起動しました。これで……これで陽一さんを傷つけずに済む……」

「な…ッ!?」

その場にいた全員が驚愕した。



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