第17話「焼肉をやろうPart3」
『一番地味だと思われたチームCッ!まさかのトップ独占だァーッ!!』
誰が地味だこの野郎。
まあ地味なのは確かだが……。
これだけの量ともなると流石に肉でも厳しい。
俺の腹は既に危険信号を発していた。
箸の動きが遅くなる。
水を飲もうかと思ったがそれでは余計に腹が膨れるだけだ。
「そう……そういうのもありなのね……」
「ッ!?」
食べるのに夢中で気がつかなかった……。
福井は岸田と戦闘中。
木下はおろおろと福井を見ている。
霧は無難に肉が焼けるのを待っている。
ということは……
今俺の背後にいるのは……
「流石に限界でしょ?」
「あ、ああ……」
詩織だった。
詩織は驚愕と満腹でロクに動けない俺の背後から二、三枚ずつ肉を持ってきた自分の皿に盛って行く。
「「し、しまった!」」
福井、岸田が詩織を見て同時に驚愕する。
「ぐら、今戻るぞ!」
「………しくじった」
岸田は急いで俺の隣に戻り、福井は悔しそうに舌打ちした。
詩織は一通り肉を奪うとすぐに戻り、霧と分割して食べ始めた。
『チームBが巻き返したァー!!この試合、どうなるのか全く見当がつきませんッ!!解説の鳳凰院さん、どのチームが優勝すると思いますか!?』
「わ、私の分の肉はあるんですの…?」
『ありませんッ!!』
「な……ッ!?」
安物でも一応食べたかったのか涼香「どういうことですの神宮羅門!私の分もきちんと残しなさい!!」などと騒いでいたが羅門は完全に無視して次々に肉をホットプレートに乗せて行った。
『さあ、良い感じに焼けて来ましたァッ!!』
羅門が肉を何枚か裏返す……と同時に肉が焼けていると判断したらしい福井の目が怪しく光る。
「……お前はもう、焼けている」
『出るかァー!?福井流奥儀ィィィッ!』
「焼肉百烈……」
福井が箸を構えたその時だった。
「させるかッ!!」
ジュゥッ!!
岸田がホットプレートの上の油を箸と肉を使い、福井に向かって飛ばす。
油は見事に福井の目に直撃……って大丈夫か福井!?
※良い子も悪い子も大人も真似しないで下さい。
「私の目が………目がァァァァァッ!!」
ラピュタ王ばりの叫び声とともに福井はその場にダウンし、目を押さえてゴロゴロと転がっている。
…ホントに大丈夫か?
「りえちゃんッ!?」
「りえりえッ!」
詩織、木下の二人が心配して福井に駆け寄る。
流石にまずいので涼香と羅門が洗面器に水を入れ、それで目を洗わせた。
失明はしてないらしく、福井は恨めしげに岸田を睨んでいた。
一応岸田も謝ってはいたが許してもらえていない。
まあ当たり前っちゃ当たり前だが……。
そうこうしている内にも憎争奪戦は進んでおり、なんだかんだで無難に攻めていたチームBが優勢だった。
開始から15分も経たない内に全ての肉は食い尽くされた。
どう考えても早過ぎるだろ。
俺としてはゆっくり食べたかったのだが……
順位は下から
チームA
チームC
チームB
チームAは福井が負傷したため、途中から木下だけで食べる破目になり、食の細い木下では十分な成果を上げることが出来なかった。
復活した福井が追い上げようとするも失敗し、結局順位はドべ。
俺達チームCは岸田が反則で退場となったため俺だけになってしまい、成果を上げることが出来なかったが、前半で多量に稼いだため、ドべは免れた。
そしてチームBは地道に二人で分割しながら食べ、いつの間にやら一位。
高級肉は詩織と霧の物となった。
『それではチームAのお二人には鳳凰院家の高級肉を贈呈しますッ!』
「高級肉……!」
高級という言葉に、ゴクリと唾を飲み込む詩織。
福井は納得いかなさそうに岸田を睨みつけていた。
そんな福井に詩織は「少しあげるから機嫌直して」と福井の肩を叩いていた。
「……あ」
霧の方は何かに気づいたかのように短く声を上げると、涼香の方を見て焦った表情になっている。
涼香の方も似たようなもので、「これはまずい」と言わんばかりの表情である。
「このお肉……」
ガサリと。
涼香は手元のナイロン袋を取り出す。
「貴女方に合わせるつもりで用意しましたので……その………」
気まずそうに涼香はナイロンから中の物を取り出した。
「…………」
それを見て全員が絶句する。
福井も口をあんぐりと開けたまま動かない。
俺も唖然とした表情でソレを見ていた。
「スーパーの……お肉ですわ」
580円と書かれた値札の近くに「レジにて2割引!!」とかかれたシールが貼ってあった。
続