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ぐらとぐら  作者: シクル
17/52

第17話「焼肉をやろうPart3」

『一番地味だと思われたチームCッ!まさかのトップ独占だァーッ!!』

誰が地味だこの野郎。

まあ地味なのは確かだが……。

これだけの量ともなると流石に肉でも厳しい。

俺の腹は既に危険信号を発していた。

箸の動きが遅くなる。

水を飲もうかと思ったがそれでは余計に腹が膨れるだけだ。

「そう……そういうのもありなのね……」

「ッ!?」

食べるのに夢中で気がつかなかった……。

福井は岸田と戦闘中。

木下はおろおろと福井を見ている。

霧は無難に肉が焼けるのを待っている。

ということは……

今俺の背後にいるのは……

「流石に限界でしょ?」

「あ、ああ……」

詩織だった。

詩織は驚愕と満腹でロクに動けない俺の背後から二、三枚ずつ肉を持ってきた自分の皿に盛って行く。

「「し、しまった!」」

福井、岸田が詩織を見て同時に驚愕する。

「ぐら、今戻るぞ!」

「………しくじった」

岸田は急いで俺の隣に戻り、福井は悔しそうに舌打ちした。

詩織は一通り肉を奪うとすぐに戻り、霧と分割して食べ始めた。

『チームBが巻き返したァー!!この試合、どうなるのか全く見当がつきませんッ!!解説の鳳凰院さん、どのチームが優勝すると思いますか!?』

「わ、私の分の肉はあるんですの…?」

『ありませんッ!!』

「な……ッ!?」

安物でも一応食べたかったのか涼香「どういうことですの神宮羅門!私の分もきちんと残しなさい!!」などと騒いでいたが羅門は完全に無視して次々に肉をホットプレートに乗せて行った。

『さあ、良い感じに焼けて来ましたァッ!!』

羅門が肉を何枚か裏返す……と同時に肉が焼けていると判断したらしい福井の目が怪しく光る。

「……お前はもう、焼けている」

『出るかァー!?福井流奥儀ィィィッ!』

「焼肉百烈……」

福井が箸を構えたその時だった。

「させるかッ!!」

ジュゥッ!!

岸田がホットプレートの上の油を箸と肉を使い、福井に向かって飛ばす。

油は見事に福井の目に直撃……って大丈夫か福井!?

※良い子も悪い子も大人も真似しないで下さい。

「私の目が………目がァァァァァッ!!」

ラピュタ王ばりの叫び声とともに福井はその場にダウンし、目を押さえてゴロゴロと転がっている。

…ホントに大丈夫か?

「りえちゃんッ!?」

「りえりえッ!」

詩織、木下の二人が心配して福井に駆け寄る。

流石にまずいので涼香と羅門が洗面器に水を入れ、それで目を洗わせた。

失明はしてないらしく、福井は恨めしげに岸田を睨んでいた。

一応岸田も謝ってはいたが許してもらえていない。

まあ当たり前っちゃ当たり前だが……。

そうこうしている内にも憎争奪戦は進んでおり、なんだかんだで無難に攻めていたチームBが優勢だった。



開始から15分も経たない内に全ての肉は食い尽くされた。

どう考えても早過ぎるだろ。

俺としてはゆっくり食べたかったのだが……

順位は下から

チームA

チームC

チームB

チームAは福井が負傷したため、途中から木下だけで食べる破目になり、食の細い木下では十分な成果を上げることが出来なかった。

復活した福井が追い上げようとするも失敗し、結局順位はドべ。

俺達チームCは岸田が反則で退場となったため俺だけになってしまい、成果を上げることが出来なかったが、前半で多量に稼いだため、ドべは免れた。

そしてチームBは地道に二人で分割しながら食べ、いつの間にやら一位。

高級肉は詩織と霧の物となった。

『それではチームAのお二人には鳳凰院家の高級肉を贈呈しますッ!』

「高級肉……!」

高級という言葉に、ゴクリと唾を飲み込む詩織。

福井は納得いかなさそうに岸田を睨みつけていた。

そんな福井に詩織は「少しあげるから機嫌直して」と福井の肩を叩いていた。

「……あ」

霧の方は何かに気づいたかのように短く声を上げると、涼香の方を見て焦った表情になっている。

涼香の方も似たようなもので、「これはまずい」と言わんばかりの表情である。

「このお肉……」

ガサリと。

涼香は手元のナイロン袋を取り出す。

「貴女方に合わせるつもりで用意しましたので……その………」

気まずそうに涼香はナイロンから中の物を取り出した。

「…………」

それを見て全員が絶句する。

福井も口をあんぐりと開けたまま動かない。

俺も唖然とした表情でソレを見ていた。

「スーパーの……お肉ですわ」

580円と書かれた値札の近くに「レジにて2割引!!」とかかれたシールが貼ってあった。



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