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ぐらとぐら  作者: シクル
13/52

第13話「いじめ、かっこ悪いPart4」

「…………」

言い逃れをするかと思ったが、大野は俺の予想に反して黙りこくってしまった。

「そんな訳ないでしょ……!」

全否定しているようで、動揺があからさまに顔に出ている志村。

無理もない。

あれだけ筋の通った推理を聞かされては例え友人でも疑わざるを得ない。

だが志村はどうしても大野を信じたいらしく、頭を抱えて「嘘よ嘘よ」と繰り返している。

「バレちゃったか」

「っ!?」

大野は更に予想に反し、自白した。

福井は黙って大野を見つめ、志村は驚愕に顔を歪めている。

そしてしばしの沈黙。

「……何でそんなことしたのよ……」

最初に沈黙を破ったのは志村だった。

随分と怒っているらしく、その声には怒気が込められている。

「嫉妬……かな」

「嫉妬?」

「ほら、あの子胸大きいじゃない?」

動機それかよ。

「それを隠すでもなく堂々と見せつけて……。男子の視線釘付けにしてさ。何かイラッと来ちゃったワケ」

「そ、そんなことで………っ!!」

志村の声に更に怒気が込められる。

「つまんない理由だよね。だから、反省してる……」

「………馬鹿」

ボソリと。

福井が大野に呟く。

「そうだよね。馬鹿だよね私……木下さんは何も悪くないのに…」

本人も非常に反省しているのか、大野の目から大粒の涙がこぼれる。

「じゃあ、明日ちゃんと謝りに行きなさいよ……」

怒ってはいるが許す気があるらしい。

志村はプイっとそっぽを向きながら「あたしもついていってあげるから」と付け足した。



あの後、俺達はすぐに解散した。

今日の内にでも謝りに行きたかったがもう遅いので解散ということになった。

解散した後、大野は俺達の元へ来て「謝る機会をくれてありがとう」と泣きながらに礼を言っていた。

「しかしまだ引っかかる……」

帰宅後、テレビに夢中になっている羅門をよそに俺は一人考えていた。

制服にペンキは立派ないじめだ。

だが不登校になるにはショックが足りない気もした。

木下が気弱なのはわかっているがそこまでとは思えない。

制服のペンキだけで不登校になったのなら去年度の最後の数日間、登校できなかったハズである。

大野が言うにはペンキ以外には何もしていないらしい。

あれだけ反省していることだし、信用して良いと思う。

しばらく色々考えたがどれもピンと来ない。

明日本人に聞くのが一番だろう。

そう思って今日はひとまず考えるのをやめた。



「………」

翌日の放課後。

俺達五人は木下家へ向かっていた。

大野の件もあってか、会話はなかった。

ちなみに羅門が空気を全く読まずに鼻歌を歌っていたのは言うまでもない。

微妙な空気を保ちつつ(羅門を除く)木下家に到着すると、中山は何も言わずにインターホンを鳴らした。

「……」

緊張した面持ちで待っていたが一向に誰かが出てくる気配はない。

恐らく母は出かけているのだろう。

だとしたらまずい。

母が帰ってくるまで木下と話をすることが出来ないかもしれない。

「優ー!優ー!」

窓に向かって志村が呼ぶ。

ほんの少しだけカーテンが揺れた気がするが、木下は顔を出さない。

「木下ー!」

俺も一応読んでみる…が、反応はなかった。

「ごめんなさいっ!!」

思い切ったように大野が窓に向かって叫ぶ。

出てこないのならココで謝ろうという考えだろう。

「本当にごめんなさいっ!!私のせいで……!!」



大野さんの声がする。

私に謝ってるみたい。

だけど違うの。

大野さんだけが悪い訳じゃない。

理由はもっと他にある。

それに、私は大野さんに何かをされた覚えがない。

私が……私が怖いのは……

思い出すと泣きそうになる。

本当に怖かった。

学校に行きたくない。

アイツに会いたくない。

みんなが心配してるのは知ってる。

私だってみんなに会いたい。

だけど……

そこまで考えて、私は言い訳を考えるのをやめた。

大野さんは勇気を出して私に謝りに来たんだ。

私も……

「私も勇気を出さなきゃ」

私はゆっくりと、ベッドから出た。



「優……」

返事がないことに落胆する志村。

「やっぱり、許してもらえないよね……」

目に半分涙を浮かべながら大野はうつむいた。

その時だった。

ガチャリと。

ドアが開いた。

「木下……」

中山が驚愕の声を上げる。

「優っ!!」

「ありがとう詩織ちゃん、理恵ちゃん、大野さん」

木下は顔色が悪かったがニコリと微笑みかけた。

「私が怖くて学校に行けなかったのは………大野さんのせいじゃないの……」

「え……?」

「ホントは……ホントはね……」

余程怖いのか木下の足がガクガクと震えている。

目に薄らと涙さえ浮かべている。

大野のせいじゃない……?

じゃあ一体……

「……」

ゆっくりと木下の腕が上げられる。

人差し指を突き出しているのが見える……。

恐らく指さすつもりなのだろう。

ではこの中に………

「………ッ!?」

木下の人差し指が、俺の左隣で止まった。



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