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ぐらとぐら  作者: シクル
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第12話「いじめ、かっこ悪いPart3」

「優……」

折角顔を出したというのにすぐに引っ込めてしまった。

志村はそのことに対しての落胆の溜息を吐いた。

「兄さん」

「ん?」

珍しく真面目な顔で羅門が囁く。

「さっきの木下さん、様子がおかしくなかった?」

「様子がおかしいから志村達が心配してんだろ」

「そういうことじゃなくて、何だか誰かに怯えてるような…そんな引っ込み方じゃなかった?」

言われて見ればそうだ。

学校内でいじめがあったとしても、志村達のような友人や、いじめに関係ない俺達、そして担任教師しかいないこの状況で引っ込む理由などないハズだ。

顔を合わせづらいのだとしたら最初から顔を出さなければいい。

決定的なのは「誰かに怯えてるような」だ。

もしそうなら……

原因がこの五人の内誰かにあるということかもしれない。

「…今日は引き上げますか……」

中山が「ふぅ」と溜息を吐く。

「そうね…。優が少しだけでも顔出してくれただけで大きな進展よね…」

言い聞かせるように呟くと志村は木下家に背を向けた。

「帰りますか……」

中山の言葉を最後に、そのまま全員が帰路に着いた。



翌日。

俺は個人的に木下について調べることにした。

どうにも昨日のことが気にかかるのだ。

前に木下と同じクラスだった生徒なら何か知っているかも知れない。

志村や福井、大野には何も言わず、何人かに聞き込みをしてみた。

木下は大人しめの性格で、嫌われるような奴じゃない。

何人もの人間に木下について尋ねたが誰一人として嫌いだと言うの者はいなかった。

男子に至っては「あの胸がたまらん」などと鼻の下を伸ばしながら話す奴までいる始末。

これと言っていじめられる原因がわからない上にいじめられていたという事実もない……

というわけでもなさそうなことがわかったのは木下とそこそこ仲の良かった乃木彰子のぎしょうこの話を聞いた時だった。

なんでも新学期が始まる少し前の体育の授業の後、木下の制服の背中に「牛乳女うしぢちおんな」と赤いペンキで書かれていたことがあったらしいのだ。

その日、木下と乃木は一番最初に更衣室に入ったため、この事実をしっているのは本人と乃木だけだという。

教師や他の友人には心配させないために「水の入ったバケツにひっかかってぶちまけた」と言い訳をし、その日一日はジャージで過ごしたという。

本来なら乃木と木下だけの秘密らしいのだが木下が学校に復帰するためならと言うことで乃木は話してくれた。

「ここまでの話から木下さんが巨乳だということが判明いたしました」

確かにそうみたいだが……。

「というわけで、我々木下さん守護隊は『おっぱい星人神宮羅生』から木下さんのおっぱいを守るため、日々尽力しようと思います」

とりあえず腹が立つのでこのクソッタレ羅門は土下座して謝るまでボコっておいた。



「後は犯人だな……」

聞き込みにかなりの時間を使い、昼休みも終盤になった。

その頃にはもう教室内にほとんどの生徒が戻って来ていた。

「ペンキの入手ルートから割り出せないかな?」

羅門の癖に良い提案だ。

「ペンキ……ね」

わざわざ校外でペンキを入手していじめに使うとはあまり思えないし、もしそうだと調べにくい。

調べやすいところからいこう。

「兄さん、この学校ってペンキ置いてあるかな?」

「美術室にならあるんじゃないか…?」

………美術室?

確かに美術室ならペンキくらいはある。

美術室を頻繁に出入りするのは美術の教員か美術部の生徒……

これだけでかなり絞れる。

恐らく犯人はあの日木下家に行った五人の内誰かだろう。

「じゃああの五人の中から美術関係の奴を絞り出せば……」

帰宅部の俺と羅門、そして世界史担当の中山は関係ない。

だとすれば……………



「で、なんなのよ。こんな時間に呼び出して」

機嫌悪そうに志村が悪態をつく。

「木下をいじめた奴がわかったんだよ」

「っ!?」

俺のその言葉に志村、福井、大野の三人は少なからず動揺した表情になった。

「少し前に木下がジャージで一日過ごしてた日なかったか?」

「そういえば……」

記憶にはあるようだ。

「あの時、木下の制服にペンキで落書きされてたらしいんだよ」

「え…?」

やはり知らない。

木下が懸命に隠していたせいだろう。

「やっぱりいじめが……」

落胆する志村に追い打ちをかけるかのように俺は言葉を続けた。

「こないだの木下の反応を見る感じじゃ犯人はこの中にいる」

「っ!?」

「志村、お前何部だ?」

「か、空手部だけど……」

「お前は?」

続けて福井に尋ねる。

「………帰宅部」

だろうな。

俺と羅門が帰る時時々見るしな。

「大野、お前は?」

「美術部だけど…」

やっぱりな。

美術部はこの中にいた。

「ペンキなんてものをほいほい持ち出せるのは美術室に頻繁に出入りする美術の教員と美術部くらいだ」

「………っ」

「したがって、犯人は美術部か美術の教員だと思われる」

大野の顔が焦りに歪んでいる。

「だが犯人は俺達と中山先生を含む五人の内誰か……。それに中山先生は世界史担当だ。ということは……」

「つまり」

俺が言い終わらない内に羅門が割って入る。

コイツ、おいしいとこ持ってく気か!?

「犯人はこの中にいる美術部の生徒…ということは…!!」

ビシッと。

羅門が大野奈津江を指差した。

「大野さん。あなたを、犯人です」

大事なとこで噛むな。

そしておいしいとこだけ持って行くな。



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