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ぐらとぐら  作者: シクル
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第11話「いじめ、かっこ悪いPart2」

「優ー。優ー。今日も夕飯いらないのー?」

一階から母親の声がする。

だけど私はそれを完全に無視した。

ブーブー

携帯のバイブ音。

未読メッセージ三通。

返信する気なんてさらさらないけど一応開く。

今来たのは詩織ちゃんからのメール。

「心配だから早く学校に来て」

…。

心配してくれてるけど、まだ学校に行く気にはなれない。

とりあえず残りの二件も見てみる。

詩織ちゃんの前は理恵ちゃん。

「早く来い」

理恵ちゃんらしいシンプルなメール。

続けて未読の中で一番古いメールを見る。

「……っ」

私はすぐに携帯を閉じてベッドから投げた。

怖い。

怖いよ。

私はまた、ベッドの中に潜り込んでしまった。



「また休み……か」

俺は空席を見て溜息を吐いた。

もしかしなくてもあの席こそ昨日志村達が話していた木下優の席だろう。

ふと志村の席を見れば案の定彼女はおらず、HRを終えた中山の元へと向かっていた。

また突っ掛かる気だな……。

彼女の後ろには眠そうな福井もくっついていた。

「で、先生。何か思いつきましたか?」

「うん。そのことなんだけどね……」

どうやら中山も一応考えてはいたらしい。

「もう一度みんなで家に行ってみないか?」

「……先生とあたし達で?」

「ああ。僕と志村と福井と大野……」

「なるほど……」

「木下も待ってくれている人達が沢山いると思えば帰ってくるかもしれないだろう?」

気弱な子の家に大人数でおしかけるのは逆効果な気もするが……。

興味があるのでそのまま傍聴する。

「まあやらないよりはマシよね……」

「だからもう少し人数を増やさないかい?」

「これ以上誰を増やすのよ?」

納得いかないといった表情で聞き返す志村。

「うーん……」

中山も誰を呼ぶかまでは考えてなかったらしく、考え込む仕草をする。

「……………アイツ」

ビシッと。

不意に俺の方を福井が指さした。

「………は?」

「……聞き耳立ててる」

お見通しだったようだ。

一斉に三人の視線を同時に浴びてしまった。

「何でわかったんだよ……?」

「………………インスピレーション」

そんな曖昧な……。

「………連れて行くならコイツともう一人」

「どうしてよ?こればっかりはインスピレーションってのはダメよ」

やはり納得いかなさそうな志村。

「……昨日も聞いてた」

「そういえば……」

「………他の奴より事情をわかってる」

確かにそうだ。

元々関係のない人間に一から説明して誘うより少しでも事情を把握している人間を誘う方が楽だし合理的だろう。

「だからって何でこんな奴……!」

こんな奴とはなんだこんな奴とは。

そう言えばさっきから静かだなと思い後ろに座っている羅門を見ると、熱心に知恵の輪を攻略していた。

遊ぶな。

「……ダメ?」

「…まありえりえが言うなら………」

渋々と了承する志村……っておい、勝手に決めんな。

「じゃあ、僕と志村と福井と大野、それから神宮君達で良いね?」

何気に羅門も含まれている。

「仕方無いわね……」

志村、俺共々不本意なまま、木下優の家庭訪問メンバーが決定した。



「ほうほう。それで君達が一緒に来ているのかね?」

軽い口調で大野は俺と羅門をジロジロと眺めていた。

「はぁ……」

やりづらい。

こいつらとは滅多に話さないので非常にやりづらい。

大野とはほぼ初対面。

志村は冷たいし、福井との会話と言えば去年の英語の授業で対話文を読んだ時以来だ。

そして俺の気持ちを知ってか知らずか羅門はいやに上機嫌である。

羅門が言うには「知恵の輪が解けたんだぜ!」とのこと。

なんだその口調は。

「アンタ達、名前は?」

「え?」

志村からの思いもよらない質問に一瞬戸惑った。

「だから名前よ名前。それともあんたの名前『公衆トイレ』……?」

何でそうなるんだ。

志村のよくわからないボケにツッコミを入れるか入れまいか少し考えたがやめた。

「神宮羅生だ。コイツと混同するから羅生でいいよ」

と、俺は親指で羅門を指差した。

「そう…。アンタは?」

続いて志村の質問は羅門に向けられた。

「オッス!オラ羅門!ワクワクすっぞ!」

帰れ。

「じゃなかった……!ワクワクするんだぜ!!」

わざわざ言い換えんな。

「……。あたしは志村詩織」

こっちをチラリとだけ見て自己紹介する志村。

「あ、私は大野奈津江」

大野がペコリと頭を下げる。

「………福井理恵」

続いていつの間にか俺の隣にいた福井がボソリと名前を言う。

気配を感じなかったんだが………。

「…着いたよ」

中山が指さした方向には一般的な一軒家があった。

表札を見ると「木下」と書いてある。

ココが彼女の家か……。

ピンポーン

中山がインターホンを鳴らす。

「はーい」

中から出てきたのは無論木下優ではなく、彼女の母らしい人物だった。

「あら、中山先生」

「こんにちは」

中山はペコリと頭を下げる。

「志村さん達も…」

志村達も頭を下げたので俺もつられて頭を下げる。

「こんにちはなんだぜ!」

お前もう喋るな。

「あの、優は……」

不安そうな顔で志村が問うと、木下母は困ったような顔になった。

「優……やっぱり出て来ないのよ…。窓からだったら話せるかも知れないから、ちょっとあの子に言ってみます」

そう言って木下母は家の中へと戻って行った。



「優、お友達よ。志村さん達が心配して来てくれてるんだから、せめて窓からでも顔出してあげて。あの子達もお母さんも安心するから」

ドアの外からお母さんの声がする。

詩織ちゃんが…。

理恵ちゃんも一緒なのかな…?

私はお母さんには返事をせず、そっとカーテンを開けた。

「優!!」

詩織ちゃんの声がする。

私は懐かしくなって少し泣きそうになった。

私が窓を開けようとしたその時だった。

「っ!?」

アイツだ。

アイツがいる……。

私はすぐにカーテンを閉め、またベッドの中に戻った。



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