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ぐらとぐら  作者: シクル
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第1話「なんと奇妙な出会い」

シクルです。

この作品で短編を含めて通算5作目となります。

今までとは違ったジャンルですが楽しんでいただければと思います。

では、「ぐらとぐら」をよろしくお願い致します。

人生。

人が生きると書いて「人生」。

俺の「人生」は終始平穏無事であると俺はいつから決めつけていたのだろう?

何の変哲もない1人の男の人生。

それで済むハズだったのだが…。

俺の期待も予想も大幅にぶち壊し、アイツは……

神宮羅門じんぐうらもんは俺の前に現れた。





一般的な男子高校生。

とは言ってもやはり人間は多種多様。

「一般的な男子高校生」なんて巨大な枠の中にいる人間はこの世に腐る程いる。

かと言って俺を言い表す適格な表現はやはり「一般的な男子高校生」だった。

神宮羅生じんぐうらしょう

それが俺が親に与えられた名前だ。

気に入ってもないし嫌いでもない。

羅生なんてあまり聞かない名前だが、俺にとってはどうでもいい。

親が言うには考えるのに苦労したとのこと。

それで俺は「どんな意味があるのか?」と、何年も前に親に聞いた。

親の回答は「特に意味はない」とのこと。

いい加減にも程がある。

仮にも大事な1人息子の名前だぞ。

それはさておき。

俺が今通っている白凪高校は殺人事件で有名な高校だ。

なんでも、何年か前に生徒が連続で惨殺される事件があったらしい。

俺が進学する際、親は心配して別の高校を選ばせようとしたが、俺は丁重にお断りした。

俺の学力で行ける高校の中では白凪が一番良かった。

親の薦める高校は難関や男子校ばかり。

「俺はそこそこの学力で共学の高校を所望している!」

と、それなりの剣幕で親に伝えると、渋々OKしてくれた。

白凪に入っても得に問題はなかった。

髪は短めに切ってあるし、体格もそこそこ。

白凪に入る前の自分を一掃するために色々と工夫した。

その結果が今の特徴の消えた俺だ。

あるとすれば右腕の妙な痣くらいだ。

友達の数も少な過ぎず多過ぎず。

まあ妙な奴は何人かいるが、それは置いておこう。

かくして俺は白凪に入り、普通の男子高校生としての地位を獲得した。

中学時代はケンカ三昧で、あまり友達もいなかったが今は違う。

友達と普通に過ごす学校生活は、中学時代のようなスリルはないもののそれなりに楽しい。

そんな日々が続く今日、俺は妙な話を耳にした。

それは食堂で友人と学食を楽しんでいる時だった。

唯一俺の中学時代からの付き合いである岸田光男きしだみつおはうどんをズルズルとすすりながら妙な話をした。

「ぐら、お前って兄弟とかいる?」

その小学校の図書室とかにありそうな絵本のキャラ的なあだ名はやめろと初めて会った時から言っていたハズだぞ岸田。

ちなみに神宮羅生で「ぐう」と「」、ぐうらと続くことからぐら。

いつの間にか定着している妙なあだ名だ。

あまり好きではない。

「何だよ急に。俺は正真正銘の一人っ子だぜ」

「そうだよな。一人っ子政策だもんな」

「それは中国の話だ」

それにお前ん家4人兄弟じゃねえか。

「じゃあ他人の空似かな」

「…?」

「今朝お前そっくりな奴を見たんだよ。まあお前よりちょっと髪が長めで目つきが柔らかくて背が高めだったけどな」

どこがそっくりなんだ。

「まあ何より雰囲気というかなんというか…。あるじゃん?兄弟ならではの似た部分が」

一理ある。

が、俺には兄も弟も姉も妹もいない。

「さっきも言ったが俺には兄弟はいないぞ?」

「ああ。わかってる。じゃあアレだわ、ドッペルゲンガーか何かだろ」

そんな物騒なものがうろつく町なのかココは。

っつかどっちも俺そのものをコピーする訳だからさっきの特徴からして違うだろ。

「ま、他人の空似だろうな」

と、笑いながら言う岸田に同意しつつも自分のどこかで否定しきれない部分があった。



それは夜に起こった。

学校が終わり、近くのアパートで1人暮らしをしている俺は今日の夕食を作っていた。

ちなみに今日はカレー。

カレーは良い。

きちんと保存すれば何日か持つため、しばらくはカレーだけで食事を済ませることが出来る。

親の仕送りとバイトだけでは厳しいこともある。

俺はなるべく日頃から節約することを心がけていた。

「いただきます」

俺は黙々と出来たカレーを食べながら昼間の岸田の話を思い出していた。

どう考えても他人の空似なのだが……

「ん?」

不意に鳴り響く着信メロディ。

電話だ。

俺は慌ててポケットから携帯を取り出した。

「もしもし」

「もしもし、じ…じゃない、私メリーさん。今白凪校の前にいるの」

気持ち悪い裏声である。

恐らく声の主は男だろう。

悪ふざけか?

「ああそうですか。お疲れ様です」

俺はそれだけ言うと通話を切った。

アホらしい。

が、すぐにもう一度着信メロディが鳴り響く。

「もしもし」

「もしもし、私メリーさん。今貴方の家の前にいるの」

移動早いなおい。

「帰って下さい」

そして再び通話を切る。

何なんださっきから……

少し予想はしていたが、またしても着信メロディが鳴り響く。

「もしも…」

俺が言いかけた時だった。

感じる。

背後に気配。

俺の額から嫌な汗が流れる。

「もしもし、私メリーさん」

携帯と、背後、どちらからも同じ声が聞こえる。

「今貴方の後ろいるの」

「な……ッ!?」

恐る恐る振り返る。

「……?」

誰もいない。

余計に恐ろしくなる。

立ち上がろうとした時だった。

ドゴォン!

「こっちでしたーーーーッ!!」

「ええええええッ!?」

豪快な音とともに天井の一部が大破し、1人の人間が宙吊りの状態で現れる。

「ちょっとしたサプライズ!」

「ちょっとじゃねえッ!」

男は得意気に微笑む。

っつか何だコイツ。

「どう?驚いてくれた?」

ブランブランと揺れながら男は楽しそうに俺に問う。

勿論ビックリしましたとも。

「誰だよお前……」

「あ、自己紹介がまだだったね?」

その前にそこから降りてくれ。

そして天井の修理代も払ってくれ。

「僕は神宮羅門じんぐうらもん。正真正銘、神宮羅生の弟です!!」

神宮って苗字一緒……って

え?

え?

「えええええええええええッ!?」

この瞬間から、今この瞬間から俺の平穏無事な生活は音を立てて砕け散った。



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