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絆の証は契約と共に  作者: 伊達 翼
始まりと用語
1/22

プロローグ

ハーメルン様で投稿しているオリジナルものをこちらでも掲載することにしました。


まだ、そんなに進んでませんが…。

もしよろしければ読んでみてください。

 異世界『フィスティリア』。


 ここは広大な海が広がり、その上に十字状に五つの大陸が存在する世界。

 中央の温暖大陸『フィアラム』、西の平原大陸『ストライム』、東の山岳大陸『ティエーレン』、北の極寒大陸『リテュア』、南の熱帯大陸『アクアマリナー』という五つの大陸。

 それぞれの大陸にはその大陸を統治する国や組織がある。


 フィアラムを統治する『フィアラル王国』。


 ストライムを統治する『部族連合』。


 ティエーレンを統治する『高天ヶ原(たかまがはら)』。


 リテュアを統治する『リデアラント帝国』。


 アクアマリナーを統治する『ネオアトランティス王国』。


 それぞれの国には特色があって互いに協力体制を築いてはいるが、それは表面的なもので水面下ではそれぞれの思惑が交錯していた。



 この世界の各地には人の他に魔獣、霊獣、妖怪、龍種といった人に害を成す存在がおり、人々は日々それらに対抗すべく知恵を出し合っていた。

 そんな中、人々は魔獣達との『契約』を行うことで、それらの持つ力を得ることを知った。

 そうした魔獣達は『契約獣』と名を変えて人々との共存の道を歩む。


 しかし、その契約獣を自軍の戦力として数えようとする国も少なからず存在している。

 そのため、魔獣達と契約した人を積極的に勧誘したりする動きも秘密裏に行われていたりする。

 力ある魔獣達と契約した人と、その契約獣はそれだけで戦力の中核となりうるからである。



 この世界には古代文明というものがあり、その古代文明が遺した『古代遺物(アーティファクト)』も存在し、北の大陸を統治する『リデアラント帝国』ではそれらの研究も積極的に行っていた。



 契約獣から得る力と古代文明の解析で得た技術で、人々の文明は発達していったとも言える。

 それがこの世界・フィスティリアである。



 この物語は、ティエーレンに存在する都の一つから始まる…。


………

……


 高天ヶ原に存在する三つの都の内、大地の都と呼ばれる中央の山脈内にある盆地に築き上げられた『須佐之男(スサノオ)』。


 その都から少し外れにある一軒の民家。


「まったく、困ったものだよ。今更、戻れとは…」


 決して大きくはない民家の居間で男性が困ったように声を漏らしていた。


「あなた…せめてこの子だけでも…」


 そんな男性を心配するように女性が傍らに視線を落とす。


「すぅ……すぅ……」


 居間の中央には足の短いテーブルが置いてあり、その横には布団の中で眠る小さな少年がいた。


「そうだね。この子には、もっと広い世界を見てもらいたい。それに何より、"あの家"に縛ってほしくはないしね」


 男性は女性の言葉に頷いていた。


「ですが…今更、私達に子供はいない、という言い訳も難しいでしょうし…」


「うん、それなんだけどね。僕に一つ考えがあるんだ」


「考え、ですか?」


「あぁ。そのために"彼"を呼んだんだ」


 女性が首を傾げる中、男性が中庭の方に視線を向けると…


「呼ばれて飛び出て、じゃじゃじゃじゃ~ん!(小声)」


 子供が起きないように小声で変な言葉を発してどこからともなく青年が現れる。


「あぁ、"彼"ですか」


 その言動を無視して女性は妙に納得げだった。


「おいおい、華麗にスルーすんなよ。何気に傷付くだろ」


 そんな女性の反応に青年は苦言を呈するが、そこまで気にしていないのはそれなりの付き合いからわかっていた。

 というよりもこんな程度で傷付くほど神経質でもないのがわかっているからだが…。


「それで、"彼"にこの子を?」


「あぁ。連れてってもらうことにするよ。この子も外の世界には興味があると言っていたし、可愛い子には旅をさせろ、とも言うしね」


 男性は悪戯っぽい笑みを浮かべて女性に言う。


「それで"あの人達"が諦めてくれるといいんですけど…」


「まぁ、そこは賭けかな? 僕達が戻れば少なくとも目的の一つは達成するのだし…」


 男性がそこまで言うと…


「でも、この子に会えなくなるのは辛いです…」


 女性は悲しそうに訴えかける。


「それは僕も同じさ。でも、そうしないとあの閉鎖した空気に染まってしまうかもしれない。僕はこの子に自由に生きてほしいからね」


「……えぇ。そうですね」


 男性の言葉に女性も頷き、傍らの子供の髪を優しく撫でる。


「なんだろうな、この疎外感」


 2人で話を進めるものだから青年は縁側に勝手に胡坐を掻いて座って話を聞いていた。


「すまないね。急にこんなことを頼むことになって」


 男性はすまなさそうに青年に告げる。


「いんや、気にすんな。自由を愛する者として、そういうことなら引き受けない訳にもいかないしな」


 青年の方も別に気にした様子はなかった。


「本当ならお前らも自由にしてやりたいところだが…」


「いや、大丈夫だよ。いつか、この子が僕達を"あの家"から解放してくれると信じてるからね」


 青年の言葉に男性はそう返していた。


「子供に背負わせるにはちと荷が重い気もするがな」


「そうだね…」


「ま、それまでにそこそこ鍛えてやるよ。俺が出来る範囲でな」


 そう言うと青年は、布団から抱き上げた子供を女性から預かる。


「頼むよ、親友」


「応。任せとけ、親友」


 預かった子供を左腕で抱え、右拳を男性の右拳とコツンと合わせる。


「その子のこと、よろしくお願いします」


「あぁ。絶対に強くしてやるよ。そして、良い出会いもな…」


 女性の言葉にも強く頷くと…


「じゃあ、またいつかな」


 子供を抱えて青年はその場を後にするのだった。


「…………………」


「心配なのはわかるけどね。さ、僕達も"実家"に戻る準備をしようか」


「はい、あなた」


 そうして男性と女性は荷造りを始めるのだった。


………

……


 その後…。


「むぅ…?」


「よぉ、坊主。起きたか?」


「ふぇ…?」


 子供の眼が覚め、青年は二カッと笑いかけていた。


「ぁ…"ゼロ"おじさん」


「おじさんはよせって毎度言ってるだろ」


 そう言って青年はコツンと少年の額を小突く。


「でも…お父さんとお友達なんだよね?」


 それに動じず、少年はそう聞いていた。


「応さ。あいつとは親友よ」


「だったらおじさんだよ」


「…………解せぬ」


 少年の言葉に青年は唇を歪めて不満そうだった。


「あれ? ここは? それにお父さんとお母さんは…?」


 それからやっと現状を把握したのか、少年は周囲の景色をキョロキョロと見回す。


「そうだな。坊主はずっと外の世界が見たいって言ってたな?」


「うん」


「喜べ。俺が外の世界を見せてやる。なに、ちゃんとあいつらの許可は取ってある」


 青年の言葉に少年は瞳を輝かせる。


「ホント!?」


「あぁ、本当だとも。但し、旅は俺とお前の2人きりだ」


「えぇ~!? お父さんとお母さんは!?」


 それを聞いて少年は不満そうだった。


「留守番だ。なに、男は旅の一つでもしないと一人前にはなれないからな。旅してる間は俺がきっちり面倒見てやるからよ。あんま心配すんな」


「ぶぅ~」


 どうにも納得いかないようで少年は頬を膨らませる。


「ちゃんと手紙も出させてやるよ。それと坊主は契約獣にも興味があるだろ?」


「っ…ある!」


 子供の好奇心は些細なことを流してしまうようだ。


「良い返事だ。きっとお前なら良い契約が出来るだろうさ」


「ホントに?」


「応さ。あいつらや俺の教えをちゃんと守れたらな」


 青年がそう言うと…


「僕、絶対に守るよ!」


 少年は元気よく返事をする。


「よしよし、良い子だな。じゃあ、契約するのも大事だが、体作りもしないとな」


「体作り?」


「そうさ。仮に契約出来たとしてもお前が相棒の足を引っ張っちゃかっこ悪いだろ?」


 そんな光景を想像したのか…


「うぅ…それは嫌だな…」


 少年は嫌そうな顔をする。


「なら、頑張るこったな」


「うん! 僕、頑張るよ!」


 そんな少年の顔を見ながら…


「(今はまだ全てを話すべきじゃない。そうだろ、親友?)」


 青年は親友である少年の両親のことを考えていた。


「(こいつがある程度まで成長したなら話すさ。お前達の、"陥ってしまった状況"ってやつを…)」


 そして、今抱えている少年のことも考える。


「(その時、こいつがどんな風に考えるか…少し心配ではあるがな……ま、そこは俺の教育次第か。やれやれ…)」


 ガラじゃないな、と思いつつ青年は少年を抱えて山道を歩く。


 少年の行く道をある程度までは導くために…。

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