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旅路

 あれから30分程仮眠を取ったエリックは外を見る。既に明るくなっており、地球の昼と同じくらいの明るさだった。思い出したかの様に周りを見回して自分に起こった事が夢じゃなかった事に落胆する。



「夢じゃなかったのか……」



 頭を掻き、嘆くエリックの元にオーガスタが再びオスホをコップに注いで持っていく。



「エリックさん、これを飲んでください。もうすぐ出発します」



 コップを受け取り、一口飲む。そこに、エアズが駆け寄っていき、エリックの前で座る。まだ、エアズの外見に慣れていないエリックは少し驚く。



「おい、こいつは何なんだ?」



 エリックの問い掛けにオーガスタはエアズに近付き、指で頭を撫でながら答える。



「エアズはタフィルドという動物で私と遺伝子が繋がっているんです。とても誠実でいい子なんですよ」


「遺伝子が繋がってるってどういう事だ?」


「まぁ、その内分かりますよ」



 オーガスタがそう言うと、エアズは家から出ていき、畑のパトロールを開始する。それからエリックは水が出る台所の様な場所に行き、顔を洗おうとする。



「ん? おい、これどうやって水出すんだ」



 その質問にオーガスタは実際にお手本を見せる。



「この部分に手をかざせば水が出ます。止める時にはまた手をかざして下さい」



 やり方を教わったエリックは顔を軽く洗い、出発の準備を整える。オーガスタも同様に準備が整い、2人は外に出る。そこで、エリックはふとオーガスタが背負っている大きな

リュックに目を向ける。



「オーガスタ、そのデカイリュックには何が入っているんだ?」



 オーガスタは右手でリュックを軽く叩きながらエリックの方を見る。



「これには野宿用の道具が入っています。少しだけ遠いので念のためです」


「そうか」



 相槌を打ち歩いていく2人。15分程歩いた所でエリックがある事を疑問に思う。



「そういえば、お前はなんで英語を喋る事が出来るんだ?」



 オーガスタは小さく「ん?」と呟くと、こう返す。



「英語? 私が喋っているのはバリングル語ですよ? そういえば、あなたはバリングル語を喋っていますね。バリングル語を喋る事が出来るのはそう居ないですよ」


「いや、俺は英語を喋ってるぞ? なんだ? 翻訳でもされてんのか?」



 オーガスタは歩きながら少し考え込む。そして、黙る事5分、何かを思い出したかのように顔を上げる。



「そういえば、ニビル人は耳に自動翻訳機を付けていたりしますね、あと特殊な機械を通してバリングル語で話し掛けてきたり」



 すると、エリックは呆れたように両手を広げる。



「いいか? 何度も言うが俺はニビル人なんかじゃねえ、立派な地球人様だ! まぁ話せないよりかはマシだ、ヘンリー王とかいう奴に会えば分かる事だ」


「まぁそうですね」



 2人はその後も歩き続ける。3時間程歩いた所でエリックの提案で休憩を取ることにする。



「エリックさんは私達バリングル人より燃費が悪い様ですね」


「うるせぇよ、足パンパンなんだよ。逆にお前の体はどうなってんだ」



 エリックは倒木に腰掛け、オーガスタは地面にそのまま腰を落とす。その時、エリックは自分の体の異変を感じる。



「そういえば、俺3時間も歩いたのにぜんぜん息が切れてないな」



 オーガスタはその言葉を聞きながらエリックにオスホをが入ったコップを渡す。そして、エリックの言葉である事を思い出す。



「確かにそうですね。ニビル人はこの星に降り立つ時はいつも口と鼻に特殊な小さい機械を付けています。地球人にとってはこの星の空気は良い物なのかも知れませんね」


「へえー、流石は地球人様だな! にしても、ニビル人は相当技術が進んでる様だな」



 エリックは若干ドヤ顔をしながらもニビル人に興味を持つ。その言葉にオーガスタが再び反応する。



「はい。彼らは非常に高い技術を持っていますし、“私達には”とても優しい。あの畑を見守る機械を見ましたか?」


「あー、あのドローンか」


「あれは、ニビル人が開発してくれた物で、ファントムといいます。他にもニビル人は多くの物を私達に提供してくれているのです」



 その話を聞きながらオスホを飲み干すエリック。脳内では地球人より技術が高いのではと考えていた。少しだけ興味が湧いてきていたがまずは、首都のパヴェウに行く事を優先する。

 エリックは空になったコップをオーガスタに渡すと、立ち上がって再び歩き始めた。その後は休憩を挟みながらひたすら歩き続ける。そして、8時間が経過した頃エリックは足に限界が来ており、さらにある事に気付く。



「もう無理だ! 歩けねぇ! ていうか、なんだよこの星は! 太陽がまだ少ししか動いてねぇじゃねぇか!」



 実はエリックがこの星に降り立ってから、13時間程経っているが空で輝いている恒星が少しだけしか動いておらず、地球でいえば午前10時に値する位置にあった。

 疲れ果てたエリックの様子を見かねたオーガスタは声を掛ける。



「もう限界ですか? それならここで野宿するのもありですが、その代わりに夜も歩く事になりますよ」



 この問い掛けにエリックは少しイラッとするが抑える。エリックは頭を掻き、その場に座り込んであくびをする。



「あぁ、そうしよう。この星と地球じゃ昼と夜の時間が違うらしい。その証拠にもう眠い……そういえば、ろくに寝てないんだった……」


「分かりました。準備しますね」



 オーガスタは背負っていたリュックを地面に下ろし、リュックから少し大きな亀の甲羅の様な形をした機械を取り出す。それを地面に置き、ボタンを押してその場から離れる。すると、ボタンを押してから10秒ほどたった頃にその機械が展開されていく。



「おい、これは何だ?」


「これは、テントです」



 それから10分程経つとそこにはオーガスタが3人程入れそうな大きな半円形のテントが展開されていた。そのテントにオーガスタは入っていく。エリックは「なんだこれ」と呟きながらテントの簡易的な扉を押し開け、中に入る。中は何もないが、寝るには十分な広さがあり、床に当たる部分は少しフワフワしている。思っていた物より良く出来ているテントに安心したエリックは座り込む。しかし、バリングル星に来てから何も食べていない事を思い出す。



「あー、オーガスタ。何か俺が食べられる物ないか?」



 それを聞いたオーガスタはリュックを探り、乾燥したパンの様なものを取り出し、エリックに手渡す。



「これは、ニビル人が非常食にしている物です。あなたの口にも合うかと思い、持ってきました」



 エリックは手の平サイズの乾パンの様な物をまじまじと見た後、匂いを嗅ぎ、一口小さめにかじる。



「まぁ、不味くはないけど、ニビル人も意外に質素なんだな」



 そう言うと、エリックはオスホが入ったコップと乾パンの様なものを両手に持ち、バクバクと食べ始め、あっという間に食べ終わると、思ったより満腹感を得られた事に満足する。その後は横になり、目を閉じる。それと同じくオーガスタも仰向けになり、赤く光る目が薄暗い赤になり、活動を休止する。

 それからしばらく時間は経過し、エリックは目を覚ます。



「んー、よく寝たような気がする……」



 腕時計を見るとエリックが目を閉じてから9時間は経過していた。そして、ふと横を見るエリックは横になっているオーガスタを見つける。



「コイツも寝たりすんのか? 目は若干光ってるけどな……」



 小さく呟くとオーガスタの目の光が徐々に強くなり、オーガスタが目を覚ます。



「あー、起きましたかエリックさん。そろそろ出発しましょうか?」



 オーガスタの問い掛けにエリックは「そうだな」と返すと、オーガスタは身体を起こし、テント内に広がっていた荷物をまとめる。エリックはテントから出て外の空気を吸う為に扉を開けて外に出る。



「マジかよ……まだ太陽出てんじゃねぇか……この星は一体何時間昼が続くんだ」



 すると、オーガスタがテントから出て来て、エリックの呟きに反応する。



「もうすぐ暗くなります。少し危険な動物も出て来るかも知れませんが大丈夫でしょう」


「この星も夜行性のヤバイ動物とか居るのか……」



 若干の恐怖を憶えながらも深呼吸をするエリック。その背後ではオーガスタがテントのボタンを押し、テントを縮小させてカバンに収める。そして、出発の準備が整った2人は再び歩き出す。

 そして、歩き出してから3時間。太陽が沈み掛かり、薄暗くなった時にエリックが異変を感じる。



「おい、オーガスタ! あそこの方から何か叫び声みたいなの聞こえないか?」



 エリックはそう言いながら、木々が生えている方角を指で指す。その言葉にオーガスタは耳を澄ませる。するとその時、何者かが茂みから勢いよく飛び出してくる。



「キシャアァァァ!!!」



 そこから出て来たのはクモとサソリが合体したような風貌で体長が2m程ある巨大な体を持っている生き物だった。







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