<ドラゴン狩り>
それからしばらくの間、魔装巨兵を動かすという使命を終えたアンヌは自由に興味のままやりたいことに没頭できるようになったようだ。今では永久魔石をほかの魔装巨兵と入れ替えられたり、様々な魔法を様々な威力で出させられたりするなど実験材料にされている。
しかし、俺は兵器である。翌日、俺はそれをまじまじと感じさせられることになる。
「これは・・・」
アンヌのもとに届いたのは将軍からのドラゴンの討伐命令である。
このドラゴンは空を飛び火炎を吐く能力を持った生物でであり、一度村や町を襲えば多くの死者が出る恐るべき生物である。騎士団でもいまだに討ち取ることができない相手であり、そんなドラゴンの討伐を命令されたのだ。ドラゴンの生態は詳しくはわかっていないとのことだが、そのドラゴンが村や町を襲っているというのは紛れもない事実である。
「こんなの、あなたできるの?」
アンヌの問いに俺はうなずく。こういった意思疎通はもはやいつものことになった。俺は「肯定・否定・どちらでもない、わからない」といったことしか伝えられないがアンヌにはこれでも十分満足している。
「そう、じゃあ明日出発する準備を―――」
そういって彼女はいろいろと準備をし始めた。こうなると後は俺次第だ。アンヌが命令を受けるということは性能上、それを相手にすることができるだけの性能を俺は持っているということである。後は俺がどう戦うかだ。
・・・・・
それから数日俺はドラゴンを探したが一向に見つからなかった。空を飛ぶだけあって行動範囲が広く見つけることができないのだ。結局出会うこともなく、出現地域の村や町を巡回している状況だ。
しかし、その時はいきなり訪れた。巡回の途中、奴はは目の前を横切るように空を飛んでいく。ゆっくりと優雅に空を飛ぶ様子を見てアンヌは叫ぶ。
「あれだ!」
奴はこちらには気づいていないように見える。もしかしたら気づいているのかもしれないが、生物でない俺の存在に興味がないのか無警戒で空を飛んでいるようだ。
俺は奴の動きを見つつ後ろへと回り込む。そして奴の尻を見つつ奴の死角に入り込んだ俺は覚悟を決める。
「待って」
奴に魔法攻撃を行なおうとしたまさにその瞬間、アンヌは俺に待ったをかけた。
「騎士団の交戦記録を見たのだけれど、あのドラゴンは周囲の魔力に敏感らしいの。あなたの外殻は魔力を通さないからまだ気づかれていないけど、攻撃をしたその瞬間に気付かれてしまうと思うわ」
それを聞いた俺は今一度考えなおす。氷魔法で槍を作るか、土魔法で作った塊を投げるか考えていたが、話を聞く限りだとそれを作った時点で気づかれるのだろう。
・・・・・
攻撃を放った瞬間、辺りには轟音が響き、まばゆい光が辺りを包んだ。俺は考えた末、あのドラゴンに対して雷を放ったのだ。
電気の速さは光と同じ、魔力に気付くこともできず何が起きたのか理解することはできないだろう。
ドゴーン
そして、奴の体はまるで落ち葉が舞い落ちるかのように地面へと落ちてきた。俺は落下地点に走って向かうが、その間にもドラゴンは体を起こそうとする。しかし再び空に上がられては厄介だ。俺は今一度、一撃を食らわせるために大きく振りかぶる。
グオン!ブオッ!
ドラゴンは背後の魔力に反応して、振り向くと同時に炎の弾を俺に向かって吐き出した。しかし俺の体にドラゴンの熱い炎が当たるが、俺の体は炎に燃やされることはなくすぐに消える。
そして・・・。
バシーン!
ドラゴンは俺が振りかぶってから作り出した大きな植物のツルに頭上から叩きつけられ、ドラゴンは再び地面へと這いつくばり動かなくなる。
さて、問題はここからだ。このドラゴンはどうやったら死ぬのだろうか。もとの世界でも心臓を貫かなければ死なないドラキュラの話や体の一部を失っても再生する生物が実在したので、異世界となるとどうなるかわからない不安があるのだ。
・・・・・
気を失ったドラゴンを俺は翼ごとツルで縛り上げる。やはりトカゲっぽいので尻尾を切ってもまた生えてくるのだろうか。そんなことを考えていると、アンヌが中から声をかけてきた。
「私こういうの苦手だから、私が目をつぶってる間にやっちゃって」
受けている命令は討伐命令なのだ。こいつを倒さない限り討伐したとは言えないのだ。結局俺は土魔法で作り出した杭で心臓と頭を串刺しにした。こうして帝国の人々を苦しめていたドラゴンは討伐されたのだった