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<兵器>

 ここに来てから一か月以上が過ぎた。このころになると俺も不思議なことはすべて俺がロボットという機械だからということで納得することにしていた。

 文字がわかるのもあの文字を読み書きしている者たちが作ったロボットだから当たり前だし、今いる場所や自分のいる国の詳細な地図、年月日や正確な時間がわかるのも機械にそういった情報を登録しているからだろうといった具合だ。

 そして今日もいつもと同じ時間に彼女は訪れる。


 「みんなおはよう」


 彼女は一体ずつ足に触れ、声をかけていく。


 「今日も頑張っていくよ」


 俺たち四体に声をかけた後、彼女は自分に言い聞かせるように言っていつもの用意テーブルに向かう。しかし、なかなか思い通りには行っていないようだ。ため息をつき、時たま俺たちを見つめる。



・・・・・



 こんな調子で一か月以上が過ぎたわけだが、その間だけでもほとんどのことが分かった。

 俺は魔装巨兵といわれ、厚い装甲と強力な魔法攻撃を行うことができる一種の兵器なのだ。そしてこれを可能にしているのが永久魔石といわれる石である。磁石のように魔力を発し続け、その石の大きさが大きければ大きいほど使える魔力が増え、強力な魔法攻撃を出すことができる。

 しかし、どんな兵器だって動かなければ意味がない。意味がないのである。

 ずっと彼女が頭を悩ませている理由、それはどうやって俺たち魔装巨兵を動かすかといったことなのだ。そもそもどう言った原理で動かしたいのかはわからないが、俺以外はただの人の形をしたモノなのだ。俺が動けるのは偶然こいつに転生してしまったというだけだ。

 そのため、動こうと思えば動けるし設計された性能だけのことはできるだろう。だが、俺が望んでいるのは現状維持だ。それ以外のことは考えていない。彼女には申し訳ないが、異世界に来て兵器として戦わされるなんてゴメンだ。



・・・・・



 その日、日付が変わるまで彼女は部屋にいた。白衣が真っ黒に見えるほどびっちりとメモが書かれていて、考察や結果を書いているようだ。これを読む限り、数メートルレベルの魔装兵を動かすことには成功しているらしい。いずれも乗り込むタイプで、個人差もあるがなぜか一定の大きさになると魔装兵は動かなくなるとも書かれている。そして、俺が作られたのは巨大な永久魔石が偶然見つかったためで、魔石の大きさから作る魔装巨兵の大きさを決めたというのが俺の大きい理由のようだ。

 確かに石は砕いてしまえばもとには戻せない。それに合わせて大きなものにしようというのは理解できる。作ってしまえばあとは動かし方を考えてしまえばいいのだ。

 しかし、今の俺には俺以外の魔装巨兵が動かない理由がわかる。魔装巨兵になってこういったことの答えがすぐに頭に浮かぶのだ。

 魔装兵器を動かすためには一心同体ならぬ「一魂同体」になる必要がある。つまり乗る人間は魔装兵器に乗って同体になるだけでなく、魂も一緒になる必要があるのだ。

 だが、彼らの魂は俺たちの大きさに対して小さすぎる。もし彼女の隣に普通の日本人が立てば彼女は人形のような大きさなのだろう。それが俺の魂でこいつが動いて、彼女たちでは動かせない理由なのだ。


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