表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
式神  作者: 櫻井島弥
7/8

五位の夕方

よく、皆で集まった。全員が全員深い間柄だった訳では無い。あまり話したことがないやつもいた。その点神代は、誰とでもよく話していた。


あれは俺にとっても、いや、全員が全員にとって、友達だったのだろうか。柄にもなく思ったことがある。


どちらでもいいか、少なくとも、仲間だったのなら。







「あれ、おい実、これお前じゃないか」

翔祐がスマホで写真を見ながら言う。


「あ、ほんとだ、ぜってぇ神代じゃん。てか、やばくないか」

澤田も僕だと言うので間違いないのだろうが、それよりもそのもの凄い驚き方に僕まで驚いた。


「なんだ、僕にも見せろ」

「ほら」


まて、なんだこれは


「まさに絶句したというところか、実際はこうして口を開いているのだが」


戯言を振りまくのは頭を整理している証拠。無意識にでもそうしてしまう。なんだこれは。


数枚の写真があった。僕の写真はそのうちの1枚だけだ。そしてその全てに共通して映る人物は1人。


「なんで咲良が写ってる」

1枚は村雨が写っている。


ほかのやつは知らないが、どれも咲良と1人の男が楽しそうに話している写真が……まて


「咲良?おい神代本当なのか。いつの間に彼女いたんだよ。てか、何股してんだよこの女」


「まて弦太郎、この娘は」

「どうしたんですか実さん」

ピンポーン・ピンポーン


結構緊迫した空気の中、かなり間抜けな音が鳴る。


「勝手に上がるわよみのる」

この声は咲良か、、まて


「親御さんか」


「ねぇみのる、こいつが助けてって」

「誰も助けなど求めていない、にしても変わらないなこの家も」

「うわっでたっ、尻軽女、不倫相手もいる」

「なに勝手に入ってきてんだ混乱を招くな」


「咲良さん村雨さんお久しぶりです、どうかしたんですか」

「誰が尻軽女よ、てかあんた誰」


・・・・・・うるさい




夕暮れ時、いつもは一切の音がせず、自分以外の声がしない家の中。


平日のこの時間に、母親がキッチンにいたことなんてない。そこに立ちエプロンをつけた彼女が、なんだが愛しく思えた。


今日は久しぶりに、この家が騒がしい。


「さて、とりあえず話をまとめると。こいつは隣に住む幼なじみで、こっちが同じ中学の友達で、僕も村雨も咲良の彼氏じゃない。OK?」

「OK理解」

澤田が理解してくれた。これで本題に入れる。


「それで、あの写真はなんなんだ説明しろ」

「最近、俺や俺の周囲に対する嫌がらせが耐えない。嫌がらせと言っても一種の風評被害だ、ネット上でありもしない話を振りまいているやつがいる。」


「チェーンメールみたいなやつか」

村雨の説明に翔祐が反応した。翔祐は誰に対しても積極的なのだから、当然なのだが。僕は、僕らの中にほかの人間が入っているそのことが、不思議な感覚でたまらなかった。


「チェーンメールなんてとっくに滅びただろうが、やっていることは変わらないだろう」


「それじゃあどうする村雨、3分以内に回さないと不幸が降り注ぐぞ」

「だからチェーンメールじゃないと言っているだろ」

「そうよふざけないでよ、私盗撮されてるんですけど」

軽く冗談言ったら怒られた。



「まぁ安心しろ、流石にモザイクも何も無い写真はまずい。けど、その投稿はもう消された」


「俺らの写真を載せればそうなるだろうな」

「え、なんで、運営?」


まぁなんだ、四城(よつじょう)に暗雲が立ちこめると言ったところか。

「安心しろ、僕がその雲を晴れさせてやる」

「出来ましたよ皆さん」


何故皆、式谷の飯の方が盛り上がるのか。なにより美味しかったから仕方もない。



「じゃあまたな神代」

「困ったら呼んでくれ」



「さて、本題に入るか」

翔祐と澤田には、あまり人に言えないような事情もあると説明して帰ってもらった。


「なんか悪いわね、ごめんねゆらちゃん」

「大丈夫、あいつら良い奴だから」

「神代お前、いや、なんでもない」

村雨がなんか言いたそうに見つめてきては止めた。なんだ、なにか顔についてるのかと気になってしまう。


「そんでどこまでいったっけ。あぁあ、こいつが犯人取り逃がしたとこまでね」

「取り逃がしたわけではない」


「犯人の姿は見たんですか」

「いや、そこまでは見えなかった。だが男だ」


「四城って男女比五分五分くらいだろ」

参ったな。なんの捜査も初めていないけど、はっきりいってこういうのはどうも苦手だな。犯人の足取りがつかみにくい上に情報が少ない。


「済まない神代、これは俺の不注意が招いた問題だ。だが、俺一人では解決するのは困難だ。不本意ながら、手伝って貰わねばならない。頼む。」

うちの連中、みんなプライド高いんだよ。だから、こうお願いされたら力貸さないわけにはいかない。

「言われなくても、仲間だろ。でもまぁ、俺の力だけじゃどうにもならない。ちょっと手伝い増やすか」


村雨はあからさまに嫌そうな顔をしている。勘のいいガキだな。嫌いじゃないわ。


「俺は嫌だぞ」

「あと僕の電話じゃ出てくれないだろうから頼んでくれない」

「ふざけるな」






ふざけるな、なんで俺があいつらに頼み事など……

だが、俺1人の力では解決できないのが事実。こうやって神代に頼んだが、まぁ、こいつの強みは仲間がいることだ。


予想はできたはずだったんだが。なにより

「お前はいいのか、神代」

「何がだよ」


虚勢を張る姿は、きっと俺たちにしかわからない。本当は自分が一番会いたくないはずなのに。


「仕方がない、今からここに長野を呼ぶぞ」





「長野さんってどんな人なんですか」

長野 夕(ながの ゆう)、なんていうか、オタク?キモイやつ」



ピンポーン

「久しぶりに連絡が来たと思えば、いきなり頼みがあるからこいって、俺も忙しいんですけどねぇ」

家に入ってきたかと思えば直ぐに早口で話し出した。

「どうせ暇だろ」

長野は目線を一瞬神代へ向けて再び俺の方を向き直す。

「それに、神代の家に来いなんて言い出すんだから。なんだお前、まだこんな馬鹿信用してんのかよ」


相も変わらず嫌なやつだ。

「お前は俺に勝てないけどな」

「あぁそうだ、2位のお前と5位の俺、雲泥の差だろうなぁ。だが、俺を頼ってきたんだろ。仕方ねぇから力貸してやるよ」


これだから嫌だったんだ、ウザイ。

「あんた達いい加減にしなさい、いつまで喧嘩してるの。てか長野、みのるのこと悪くいうのはやめなさいよ」


「篠崎、お前もいつまでも神代にベッタリかよ。本当仲良いなぁ幼馴染って。あれ、そっちは誰だ?」


「どうも初めまして、実さんのクラスメイトの式谷優來です。」


「あぁ、あぁぁあ。式谷さんねぇ。創世の一番でしょ知ってる知ってる。え、何、神代と仲いいの」


「いいから本題に入ろうよ長野、僕がお前を呼ばせたのは現状報告をするためじゃない」


「なんだよ、創世のクセに」

「お前が勝手に秋銅(あきどう)に行ったんだろ。僕が代わりに行っても良かったんだけど」


「神代くんじゃついていけなくなるよ。自称進学校の授業とは違うんだから」


「安心しろって長野、すぐに僕や式谷、他の皆もお前を抜いてちゃんとあいつを倒すから」


「・・・・・・神代。お前元気になったな」






実さん達の話では、この人が五等星(ごとうせい)の一人。秋銅高校の長野夕さんらしいですが。


「はぁ?なんだお前、犯人取り逃がしたのかよ。おいおい村雨、オープンスクールもういっかい行ってこいよ」


お世辞にもいい人そうに見えません。少なくとも、先程からずっと村雨さんに対して嫌味を言っています。


それに、実さんに一切話しかけません。たまに横目でちらちら見ているようですが、今の所最初に話して以来顔すら合わせていません。


「長野さんって、お友達なんですよね」

咲良さんに小声で聞いてみます。

「そうよ、変でしょ。なんか見慣れちゃったけど、前から誰に対してもあんな感じだから」


実さんと龍海(たつみ)さん、村雨さんも、最初見た限りではどんな関係なのかよく分かりませんでした。はっきり言って普通の人から見たら、仲の良い友達だなんて思わないでしょう。そんな、特殊な人達です。


でも流石に、これも仲良い故なのでしょうか。






「んじゃな村雨。わかったら連絡するから待ってろ」


そう言って神代の家を出た後、正直何を考えているのか自分でもよくわからなかった。


気まずいなんて、俺が感じるんだな。

神代の奴、なんか少し戻ってたよな。


いつの間にか行かなくなったし、わざと見なくなった。でも本当は何時もチラ見してて、だからちゃんと見てた。


卒業した時も、去年偵察ついでに創世の文化祭を覗いた時も、死んだ魚のような目をしてた。


それが今日見たらちょっと元気になってやがった。原因はなんだ。そういえばそうだ、今年度になって伝説の噂をよく耳にするが、やっぱり神代か。


あの女か、えっと、なんだ、そうだ、式谷、式谷優來だ。


神代の奴、何を考えてるんだ。


まぁそれは後々。とりあえず調べてやるか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ